比翼の悪魔

チャボ8

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二人の戦争・優しさ

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心など知らない、彼奴らを殺せれば良い、彼は彼女にそう言って心の中で泣いていた。










目覚めは良かったとは言えない、昨日見てしまったものが頭にチラついてしまった為に彼等はよく眠れなかった。


対照的に兄妹は健やかな寝息をたてている、昨日のが無ければ微笑ましい光景で片付けられたのにとルシファーとリリスは悲しい気持ちになった。


知らない方が幸せだった事というのはあるものだ。


「・・・そろそろ起こさないとね」


「だな・・・」


もう直ぐ日の出、出発の時間である。


街道はもう少しだ、そこまで行けば道は分かりやすくなる。


気持ちを切り替えるために自分の頬を叩く彼等、兄妹に声を掛け直ぐに出発した。






























一行は歩みを進める、だが兄妹の表情が暗い。


「それにしてもお尻痛いですね・・・」


「うぅ・・・」


尻が痛かったのである。


「慣れないと辛いよな・・・俺達もそうだったよ」


「懐かしいね」


木の上というのは座れる面積があまりないためにお尻が痛くなる、苦笑しつつそういう言葉を掛けるしか無かった。


「ルシファーさんとリリスさんもそういう時期あったんですね・・・まだ先は長いし早く俺達も慣れないとな」


「ごめんなさいね、魔獣がうろついてる場所だと単純だけどあんな感じにするしかないから」


「それか寝ずの番をするしかないな」


「本当に困ったものですね、魔獣って・・・」
テュシアが心底迷惑そうに言う、一同全くの同意だった。


「俺達より上の世代が作って捨てたんだよな、本当に勝手で胸糞悪くなる話だ・・・」
溜息交じりのルシファー、それを見てオッフルが聞いてきた。


「あの、全滅させることって出来ないんですか?」
尤もな疑問だろう。


「残念ながら無理だったらしいわ・・・便利だからって彼方此方でみんなが作りすぎてて禁止にされたら一斉に捨てた。全滅作戦をオリュンポスの軍が始めたときには倒しきれなかったとか・・・」


「便利・・・」
その言葉にテュシアの表情が曇る。


「・・・残念ながら事実だ。恐怖心も抱かない、情に流されない、反抗しない、駒としてなら最適なんだよ」


「本当だったら普通に生きていたのに・・・酷すぎます・・・」


「同意だ。昔、俺達が生まれるより前は倫理観、人として外れたら良くないっていう考えを軽んじている人が多かったんだよ・・・」


「今は・・・どうなんでしょうか?少しは良くなったんでしょうか・・・」


「ごめんなさいね、そこまでは分からないわ。でも何時かは、魔獣なんて物が作られないような世界にしたいわね・・・」
リリスが遠い目で言った、兄妹もそれに頷いた。




夢物語かもしれない、だが何時かは夢で無くなって欲しい事だった。








「・・・あ、もう直ぐ街道か」
ルシファーが気付く。


話し込んでいたら目的地は目の前になっていた。


暗い話題になってしまい表情が沈んでいた兄妹だが少し表情が明るくなった。


「良かった、やっと戻れた・・・」


「無我夢中だったからこんなに距離があったなんて知らなかったです」


「これで少しは歩きやすくなるね」


「そうだな」


兄妹は安堵した表情をしている、整備されていない森を長時間歩くのは辛かったのだろう。










と、少し前のルシファーとリリスなら思っていただろう。


だが今の彼等は膨らんだ疑念が外に出そうになってしまっていた、そしてそれを自覚してしまっているために表情には出していないが自己嫌悪に陥っていた。


「急ぎましょう!ルシファーさん!リリスさん!」
そんな彼等の心中を全く知らないテュシアが彼等に言った。


「ああ、分かってるよ」


「全く、すっかり元気ね」


「こら、あまりはしゃいでお二人に迷惑掛けるなよ」
オッフルが妹を叱る、だが彼もどこか浮かれているような様子に見えた。









そして彼等はまた暫く進み続けた。






魔獣などの目立った障害もなく、トロメアの襲撃も無い、実に順調だった。






その間も好きな食べ物、馴れ初めなど他愛ない話に花を咲かせていた。


特にテュシアはルシファーとリリスの馴れ初めには興味津々だった。


やはり年頃の女の子、色恋に興味があるのだろう。


「すごい羨ましいです、私も何時か素敵な人と幸せになりたいです!」


テュシアは言っている、オッフルはそんな彼女に苦笑する。


ルシファーとリリスは内心の黒い感情を抑えながら二人を微笑ましいと言った表情を作って居た。






















だがまた暫く経過、そして彼等は思ってしまった。


先は長い、このままずっとこの気持ちを抑えつけるのかと、彼等は考えた。


もしもまた襲われればこの間みたいに全力で守れるのか自信が無かった。


どさくさに紛れてこの兄妹を見殺しにしてしまうなんていう考えも浮かび始めていた。


実際敵は強かったがこの兄妹がいなかったらもう少し手早く片付いていたのは事実だ。









元々彼等は戦いが嫌いだった、魔獣を殺すのすら嫌いだった程だ。


だがこの逃避行を初めて文字通り血塗れになるまで戦わされた。


そうでなければ殺されていたからだ、逃がせばまた仲間を連れてくる、そう考えると文字通り襲ってきた連中は命乞いをされても皆殺しにした。


そして殺した連中の恐怖に怯えた表情、怨嗟の声、返り血の温もり、ルシファーもリリスも全て頭に焼き付いていた。


独りじゃなかったからか奇跡的に表面化はしていなかった、だがそれらは確実に彼等の心に大きすぎる影を残していた。


それがあの見てしまったもののせいで爆発し掛かっていた。


敵ならば殺さなくてはならない、一緒に居てはいけない、まさに破裂寸前の状態だと言える。




だが彼等はまだ染まりきっていなかった、なので意を決して言う事にした。


それが最善だと信じて。












「・・・」


「・・・」


「あの・・・どうしました?」


「もしかしてお疲れですか?」


ルシファーとリリスが急に足を止めた、兄妹は困惑し気遣う声を掛けてきた。


だが彼等には酷く耳障りに聞こえてしまった。


「あ・・・あの・・・」
テュシアが二人の様子に怯えた様子を見せる。


「・・・」


「・・・」


「ごめんなさい、俺達何か気に障ることしちゃいましたか?・・・だったら謝ります・・・ので・・・」


「オッフル、テュシア、ごめん。先に言っておくよ」
ルシファーが敵が現れたかのような冷たい声音で言ってきた。


「今から私達酷い質問をするわ」
リリスも同様だ。


「最初に会ったとき言ったことをもう一度言おう。俺達は襲われでもしない限り戦わない、だから正直に答えてくれ」
ルシファーは淡々と告げる、必死に感情を押し殺している。


言外に敵だとしても襲ってこなければ戦うことはしないと伝えていた。


だが兄妹は戸惑うばかりで再び聞いてきた。


「あ・・・あの、本当にどうしたんですか?」


「・・・これは何?」
リリスが兄妹に包みを見せた。


「え・・・それって携帯食料で・・・」


「問題はこの絵だ」
淡々と尋問をする彼等。


「絵?ってこれが?」
テュシアは分かっていない、だが彼女の隣にいる彼は顔色がみるみる青ざめていく。


「お兄ちゃん?」


「・・・これはトロメアの紋章だ」


「どうして貴方達が持っているの?」
彼等が冷たく問いただす。



携帯食料の包みにはトロメアの紋章が描かれていた。


これは特殊なインクで書かれており特定の物質、毒物などで色が変わる仕掛けになっている。


色が変われば毒が仕込まれている、という識別に使われるものだった。




「そ・・・それは・・・」
オッフルの言葉が尻すぼみになっていく。


「これがあるのはトロメアだけなのよ」


「逃げてきたって言ってたな・・・」


「ほ、本当ですよ・・・それは・・・誘拐した人のアジトにあったのも持ってきただけです・・・た・・・たまたま描いてあっただけかも知れませんよ!」
テュシアも雲行きが怪しくなってきたのを察し助け船を出す。


「・・・リリス、頼む」


「ええ」
リリスが小瓶を取り出した、中には液体が入っている。


「あの、それは?」


「そこらの毒草から取った毒液よ」


「このインクは特殊でな、毒に触れると変色する。中の物がおかしくなってないか見分けるためにだ」


「それが・・・何なんですか・・・」


「このインクはトロメアの人しか作り方を知らない貴重品なのよ。だから他所で製造は先ず出来ないの、だからこれの色が変わっちゃうとたまたま描いてあっただけ・・・って言うのはとても苦しくなるわね」


「そ・・・そうすると、どうなるんですか・・・」
オッフルが青ざめた顔で必死に言い返す。


「ここでお別れだ」


「っ・・・」


「そ・・・そんな」
容赦ない宣告に兄妹は打ちひしがれたような表情をする。


「・・・トロメアが素人の脱走を見逃すはず無いんだよ」
ルシファーが氷のような眼差しで兄妹に告げる。


「そ・・・そんな、横暴です、決めつけです!それだけで全部嘘だって決めるなんて・・・守ってくれるって言ってたのに・・・」
テュシアも必死に言い返した。


「そうね、私達もそう思うわ・・・とっても乱暴な決め方だなって。でもね、私達も死にたくないの。嘘ついたかもしれない人達を守れないわ」
リリスは悲しそうに言う。


「最低だ・・・やっぱり悪魔族なんて最低だ・・・畜生が・・・」


「・・・何とでも言え、リリス。頼む」
オッフルの罵倒など気にする素振りすら無い彼等。









そしてリリスが液体を垂らした、紋章の色は黒く変わった。










「・・・」


「・・・」
力無く紋章を見つめる兄妹、リリスは冷酷に事実を告げた。


「協力はここまで、ごめんなさいね」


「俺達を・・・どうする気ですか」


「何もしないなら何もしない、さようならだ」


彼等はそれだけ言うと立ち尽くす兄妹に背を向け歩き出した。









































だが突然二人の笑い声が聞こえた。


慌てて二人が振り返る。


「あーあー、バレちゃったか・・・」


「お兄ちゃんごめんね、ドジ踏んじゃったよ」


いきなりの別人みたいな笑い方に光景にルシファーとリリスは困惑している。


「もう仕方ないさ、本当はもう少し後の予定だったんだけどね」


「そうだねー。もうやるしか無いもんね」


尚も兄妹は笑っている、ルシファーとリリスは呆気に取られて言葉を掛けられない。


そして二人が懐から石を取り出した、宝石のように綺麗な石だ。


だが彼等はそれに見覚えがあった。


「ルシファーさん、リリスさん。短い間でしたがお二人と居るのは悪くなかったです」


「本当はもう少し開けた場所で使えって言われてたんですけどね、私がドジしちゃったからここで使います。お腹空きすぎてくすねて来た食べ物でバレちゃうとかちょっとおかしすぎますよね」


兄妹は尚も笑っている。


「止めろ、それを使うな。使ったならお前達を生かしてはおけない」


「お願い・・・私達に酷いことさせないで・・・」


捨てきれなかった情から彼等は必死に説得した、だが兄妹は笑って一蹴した。




「無理ですよ」


「これしか無いんです、私達には。だからさようなら」


兄妹は石を砕いた。















光の中から現れたのは六人の悪魔族、その内の一人は見覚えがある顔だった。


「お前・・・あの時の・・・」


「ほう、覚えててくれたのか」


返事をしたのはアイム、グリフォンの力を持つキングだ。


彼は既にイブリスと一体化し能力を発動させている。


「貴方達がその二人を唆したの?」
リリスが怒りに震える声で問いただす。


「ああ、そうだ。お前達に取り入れば親や身内を助けてやるって言った」


「剣一本で放ってお前達が通りそうなルートを彷徨かせる、そうすれば途中には魔獣とかにも襲われて必死さが出るだろ?そこで運良く合流できればお人好しのお前達は見捨てられない、と言った計画だ」
相手は無関心に淡々と言い放つ。


「殺されても代わりは居るってか・・・人の命を何だと思ってるんだよ・・・」


「まあ、そういう反応するって事はお前達はやっぱり優しいやつなんだろう・・・もしかしたら、こんな状況じゃなかったら仲良く出来たかもしれないな」
この言葉はとても物悲しかった、だが今の彼等には挑発にしかとれなかった。


「お前・・・」


「・・・やろう、ルシファー」
リリスも怒りに震えているのが分かる、だがテュシアが割って入った。


「あの!ちょっと違うけど役目、果たしましたよね?お父さん達助けてくれますよね?」
アイムに縋るような眼差しを向けるテュシア、アイムは優しく微笑んだ。




「いや、まだだ」




「え?」


「そんな・・・話が違う、この人達に取り入って石を砕けば助けるって」
オッフルが臆せず抗議した、だが取り合わずアイムは告げた。


「すまなかったな、もう少しだけ役割があるんだよ。でも心配しないでくれ、俺達が捕まえている身内にも直ぐ会わせてやるから」


「そ・・・そうなんだ」


「その役割って、俺達は何をすれ」




























次の瞬間兄妹の頭に風穴が開いていた。


「これで完成だ」
アイムは無関心に言った。


彼等には何が起きているのか分からず立ち尽くすしか出来なかった、それだけ淡々と彼等を裏切ろうとしてた兄妹は命を奪われたのである。


「ねぇ・・・何してるの・・・」


「何してるんだよ・・・答えろ・・・答えろよ!」
リリスが声も出ない程の衝撃を受けている中ルシファーが声を張り上げる、見るものを竦み上がらせる眼光だがアイムは気にしている様子は無い。


「・・・見ての通りだよ、ほらっ!」
そのまま何を思ったのかアイムは冷たくなり始めた兄妹の遺体を彼等目掛けて投げ飛ばした。


「くそ、何考えてる!」
そのままにしておけなかった彼等は直ぐさま遺体を受け止めた、もう抜け殻になってしまった遺体の重さが彼等の心を抉る。


「・・・お前達って、本当に優しいんだな。そいつらは裏切ろうとしてたんだぞ?」


「優しいとかじゃないだろ・・・目の前でこんなことされて黙ってられるかよ・・・」
悲しみと怒りと混ざり合った声でルシファーが声を絞り出す。


「そんなに・・・そんなに私達が憎いなら正々堂々と来なさいよ・・・狙うなら私達だけにしなさいよ、卑怯者め・・・」
リリスも打ちひしがれた声でアイムを罵る。


「いや、優しいよ。俺なら裏切ろうとしたやつが目の前で死んだらざまあみろって思っちゃうからな」
アイムは穏やかな口調だ、だがはっきり言って薄気味悪いとしか言い様がない。


「でもな」










「ここは戦場なんだよ」
アイムが指を鳴らした。















すると兄妹の遺体は凄まじい大爆発を起こした。







ルシファー・リリスには何が起きているのか分からなかった、突然の悪寒がしたために能力発動とバリア展開を行い死亡は免れた。


だが至近距離で爆発を浴びたために吹き飛ばされ地面に倒れ伏してしまった、そして動揺から何が起きているのか理解出来ず身体が動かせなかった。


「何・・・が・・・」
手の平に生暖かい何かが触れている。


(!)


(いや!)


必死に彼等は振り払った、手に付いていたのは頭部の欠片だった。


無論兄妹のどちらかのである。


「おい・・・何をした・・・何をしたんだ・・・」
ルシファー・リリスが必死に声を絞り出す、動揺のあまり声が震えきっている。


「そうだな、知らないままってのは辛いだろう・・・自分達も苦しいのに見捨てておけなかった無垢な優しさに敬意を表して教えてやるよ」


「あの二人は死んだら魔力が暴発し爆発を起こす爆弾に改造したんだ」


「・・・は?」
彼等はそんな呆けた返事しか出来なかった、この男が何を言っているのか、本気で理解出来なかったのだ。


恐らく平常時の賢明な彼等でも分からなかっただろう。


「それで、お前達に取り入らせた本当の理由だ。追い詰められている姿を見ればお前達は見捨てておけない、助ければ情が移る、情が移れば死体だろうとぞんざいには扱えない、そこを今みたいに吹き飛ばすわけだ」


「・・・何言ってるんだよ・・・お前・・・」


「さっきお前のクイーンが言ってたよな、憎いなら正々堂々と来いって。最初は憎かったよ、でも仲間達が死んでいくのを知らされているうちに誰かがどんな汚い事をしても終わらせないといけないって思ったんだ。そう思うと不思議と出来ちゃったんだよ」
アイムは優しく微笑む、そして石をばら撒いた。


「おい・・・まさか・・・」
ルシファー・リリスが悲痛な声を上げる。


老若男女数名がルシファー・リリスを取り囲んだ、全員魔獣である。


「まさかだよ、言っただろ?すぐ家族に会わせてやるって。約束通りだよ」


「・・・ないのかよ・・・」


「なに?」


「痛まないのかよ・・・お前の心は・・・こんなことをして痛まないのかよ、あいつに・・・ガープに恥ずかしくないのかよ!」
彼等は心の底から声を絞り出し必死に訴えかけた。


もう遅いのは分かっている、だが言わずには言られなかった。






「・・・悪いな、もう俺達の手はとっくに汚れているんだ。今更知ったことじゃないんだよ」




アイムは飛び去り大爆発がルシファー・リリスを飲み込んだ。


















「・・・どうですか」
上空に飛び立ちながら部下が聞く、五人とも戦闘態勢、能力はアイムと同じ飛行系だ。


「いや・・・まだだ、次のプランだ。陣形を組め」
アイムが言った、彼は予め上手くいったとしても弱らせるのみだろうと想定していた。


そして気配は消えていなかった。


部下達がアイムの言葉に頷いた。


だがイブリスが警鐘を鳴らした。
(待って・・・何かやばい・・・何これ・・・)


黒い靄が周囲を飲み込み始めていた。

















爆炎から現れたのは切り札を解放した彼等、六対の翼を背に生やしたルシファー・リリスだった。


彼等はアイム達を見上げている、飛ぼうともしない。


だがアイム達も身体が縛り付けられたように行動を起こせなくなっていた。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・」
部下達は声すら出せず震え上がっている、何とかしたい・・・がアイム達も行動が出来なかった。


「なん・・・なんだ・・・こんな・・・」


(うごか・・・ない・・・集中できない・・・)
イブリスまで何も行動が起こせないでいた、魔法での反撃すら不可能だった。





今回のアイム達はしっかりとしたプランを立てていた。


部下の五人と陣形を組み高速飛行で一撃離脱で攻撃を繰り返す、その際に部下達が防御に徹し一番破壊力のあるアイム達が全力を相手に打ち込むという物。


部下達は全力での高速飛行に追従できるエリート達だった、ルーラーとは魔力量で差があるのに追従できるのはそう簡単に出来る事では無い。


実際この作戦が実行できればルシファーとリリスも危なかったかもしれなかった。


だが現実は無情である。






そして原因はルシファー・リリスの黒い靄だった。


これは彼等が意識して出している物ではない、だがどう言う訳か切り札を使えば溢れ出し意志の弱い者、心に隙がある者が見れば恐怖のあまり動けなくなる。












そして彼等は尚も上空のアイム達を見上げている。


相変わらず上空に居るのに括り付けられたように動けない。


アイム達からすれば真っ暗な大穴、底無しの暗闇が覗き込んでいるようにすら見えた。




そして彼等が両手を向け詠唱を始めた。



「黒は終わり」




逃げなくては、行動を起こさなくては、アイム達は必死にもがこうとする。




「終わりは死」




必死にもがいた、だが糸が切れたように身体が一切の言うことを聞かない。




「死は安らぎ」



死の宣告が告げられていく、絶望に心が染まっていく。




「安らかに眠れ」



無感情な宣告と共にあっけなく放たれた。


目の前の物全てを消滅させる黒い奔流、まるで彼等の悲しみのようだった。


痛みすら感じる間もなく目の前の敵だったものは眼前からから消え去った。
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