比翼の悪魔

チャボ8

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もう一度だけ

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後悔したところでもう遅い、時間は戻らない。進むしか無いのだ。










「野営地の地形はこんな感じになってます。私達がいるテントはここ、そして出られる場所は北と南のみ、他は結界で覆っているので侵入は不可能です」


ガブリエルが地面に簡単な図を描いた。


野営地は円形に結界で覆われており彼等の居るテントは野営地の南西方面の端、他の兵士が集まっている場所からは離れていた。


そのお陰か偶然まだここは襲われていない。


集団を潰すことにご執心なのだろうか、何れにしてもこの幸運を生かし彼等は簡単な作戦会議を行っていた。




そして図を見たリリスが能力を発動させ周囲を探る、初めて見るのかその様子を不思議そうに三人が眺めている。


「これって・・・」


「リリスはクイーンって言う特別な悪魔族だ、周囲の生き物の位置が分かる」


「え、それとっても凄くない?」


知らなかったのか本当に驚いた様子のフレイヤ、そして二人も似たような反応だった。


「ああ、だからこれで現状を探る。そして俺達も気付くのには遅れたが気付いていないのはあちらも同じだろう、そこを背後から襲う」


ルシファーが簡単に作戦を説明した、ガブリエルもそうするべきと考えていたのかそれに頷いている。


「探れたわ、敵は全部で4箇所に分かれてる」


そう言うとリリスが位置を示した。


「ここって・・・くそ・・・救護テントじゃないか・・・」


その内の一箇所は懸念されていた場所だった。


ヴァーリが悪態をついた、余程心配なのがよく分かる。


ガブリエルはそれを宥めリリスに聞いた。


「気持ちは分かります、でも落ち着いて。他は・・・北と南の出入り口・・・それにここは?」


「それが・・・ここから敵が増えているのよ。今でもどんどん来てる。穴でも掘っているのかもしれないわ」


リリスが示した場所は野営地の中央、テントが無い場所だった。


魔獣は疲れを感じない為四六時中穴を掘らせることも出来てしまうのである。




「地面から送り込んで・・・北と南を塞いで・・・そんな、俺達は袋のネズミかよ・・・」


ヴィーザルは戦慄した。


このままでは出入り口を塞がれるだけでなく際限なく増えてくる敵と戦うことになる。


その光景を想像してしまったせいか彼の顔が青ざめていく、今度こそ死ぬかもしれないと考えてしまっているのだろう。


どうやら他の二人も同様だったらしい、挙動が落ち着かなくなってきていた。




(・・・このままじゃ良くないな)


ルシファーはこの様子を見ていて思った、このままではこの三人は助からないと。


先程は色々言ってしまったが彼等二人はこの幼馴染み達に死んで欲しいとは微塵も思っていない、だがこのまま怯えた様子で出て行けば間違いなく死ぬだろう。


なのでかつての両親達や大人達がしてくれたように不安のタネを彼等が刈り取る事にした。





「心配するな、湧いてる所を俺達で潰す。その後は南の出口の奴らを叩く、生き残りがいたら救護テントに行けって言えば良いか?」


迷い無くルシファーは言い放つ。


「その・・・良いのか?それじゃあお前達への負担が」


ヴィーザルが心配そうに言う、敵の発生源なら一番危ない場所と言っても過言では無いからだろう。


先程のことも気にしているのかもしれなかった。


「それが一番確率が高いって思ったから言っただけだ。こういうのは慣れているから心配ないさ、それともお前達で出来るか?」


三人は頭を振った。


「お願いします、それと生き残りは救護テントへ。敵を全滅させるのも大事です、が・・・馬車に動けない怪我人を収容しないと行けないので人手は一人でも必要です」


「分かったわ、任せて。それで・・・後の分担だけど」


リリスが少し言いにくそうに言った。


「敵の数はどんどん増えてるわ。やれる?」


その目は幼馴染み三人に向けられていた。


三人は彼女の言いたいことを嫌でも察する、だが危険を冒してくれる彼等にこれ以上情けない姿は見せられない。


意を決して言い放った。


「ああ、俺達だって訓練してきた。ここでやらないでいつやるんだ」


ヴァーリの言葉にヴィーザルとフレイヤが大きく頷いた。


「テントは先生が、俺達で北の助けに。よし早速」






「ヴァーリ」


向かおうとしたヴァーリ達の動きが止まった、反論など赦さないという明確な意志を感じる声音である。


「逆です、貴方達はテントに行きなさい」


足を止めた三人はゆっくりとガブリエルの方を向いた。


「・・・嫌です」


フレイヤが言い淀む。


「先生、まだ万全じゃ無いですよね。そんな状態で何かあったら・・・」







この野営地は結界のお陰で見えない壁に覆われ小さいながらも砦と化していた、出入り口は北と南のみである。


入り口を狭め大軍の進行を遅らせる狙いがあった。




おまけに結界は貴重品であり堅さは城壁に等しく悪魔族であろうと破壊は現実的では無かった。


今回は多少の例外はあったが崩すくらいなら出入り口からの侵入を選ぶのが殆どだった。


かと言って出て行こうにも結界は時間経過で解除以外の手段は無い、内通者に解除させない為である。




どういう事かと言えばこの戦いは出入り口の取り合いが勝負の鍵になる。


北か南のどちらか片方でも守り切り撤退すればガブリエル達の勝ち、逆に両方を潰されれば既に消耗仕切っているガブリエル達に勝ち目は無い。


敵もそれだけ苛烈に行くのは誰でも分かる話だろう。


ガブリエルもそれは理解していた。


「心配しないで下さい、万全ではないですが簡単に死ぬつもりはありません。すいません、敵は穴以外だとどこが一番多いですか?」


「・・・出入り口ね」


リリスが答えた。


「ありがとう、やはり私が行きます」


「先生!」


教え子達が心配そうな眼差しを送る、ガブリエルはそれに微笑んで返した。


「もう一度言いますが心配しすぎです、私は結構強いんですから」


「そろそろ行きましょう、流石に時間が無いわ」


「だな、もう決まりだ。先に行ってるぞ」


それだけ言うと三人が反論する間もなく彼等はガブリエルとテントの外に出てしまった。











怒号が聞こえる、既に激戦が繰り広げられているのだろう。






真っ先にガブリエルが口を開いた。


小声だ。


「もしもです、モロク達が来る可能性はありますかね」


教え子達に譲らなかった理由の一つがこれであった、ヴァーリ達は粗削りだがそれなりに戦える。


だがモロク達は別だ、経験も実力も何もかもが違う、もしも居れば確実に殺される。


それを懸念して彼女は譲らなかった。


話していれば三人も絶対に譲らなかっただろう。


これ以上話しを長引かせるのは得策では無いと言う判断もあるが同じ事も考えていた為に彼等も喋らなかった。





「・・・気配は分からなかったわ、でも無いとはいいきれない」


「トロメアは俺達が知らない技術を持っている、最初にお前達を助けた時も気配が分からなかった。それにあの怪我なら動くことすら不可能なはず・・・普通ならな」


彼等の顔は険しかった、知らない技術を見せ付けられ殺され掛けた光景が鮮明に浮かぶ。


幸い相手が手を止めてくれて生き残れたがあのまま戦っていたら彼等はここには居なかった。


知らない武器を作れたのだ、どんな怪我でも治す技術が無いと言える証拠があるだろうか。


「・・・もう一つ頼まれてくれませんか?」


「分かってる、片付けたら直ぐに向かう。耐えるのは得意だろ」


「ありがとう、頼もしいです」


ガブリエルが僅かに微笑んだ。


「・・・言っておくが俺達は」


「ええ、分かっています。オリュンポスを出て行くともう決めたんですよね・・・」


その言葉に二人は黙った。


「・・・でも・・・私達を許す必要はありません。もしもで良いです、どれだけ時間が経っても良い。ほんの少しでも気が変わったらエデンまで来てくれませんか?こちらでシトリーの生き残りを可能な限り探しておきます、どうか・・・それくらいはさせて下さい」


「・・・勝手にしてくれ」


それだけ言うと彼等は飛び去ってしまった。


「ええ、勝手にします・・・いつかは本音で話してみたいですね」


ガブリエルの独り言は誰にも聞こえることは無かった。
















そしてテントの中、三人は置いて行かれた形になっていた。


「・・・なんかさ・・・あいつら変わったよな」


「だね、ルシファーなんてかっこいいけどちょっと怖かった。小さい頃はあんなに可愛かったのに」


「俺達を気遣って一番危ない橋まで渡ってくれたんだぞ。その言い方はちょっと酷くないか?」


「そうだね。ごめん、無神経だった・・・」


三人の心には時間が経ったと言うことが悪い意味で嫌というほど思い知らされた。


自分達の後ろを付いてきた弟妹同然だった二人が率先して危険に飛び込んでいったのである。


どれだけの時間と苦労が今の彼等を作ったのか想像出来ないほど三人は無知では無かった。


そして自分達も行くと言い出せなかった事に怒りすら覚えていた。




一瞬三人が座り込み黙り込む、だが立ち上がった。



「・・・よし!今するべき事は?」


ヴァーリが力強く言った、二人はそれに倣った。


「救護テントの援護!」


「生き残る事!」


「ああそうだ、俺達だって出来るって事を見せてやろう!」


「ああ!」


「頑張ろう!」


自分達には出来ないんじゃないか、あっさり殺されてしまうんじゃないか、様々な負の感情を呑み込み三人は己を鼓舞、今日まで積み重ねたことを信じ飛び出していった。























一方彼等。



(・・・返事が冷たかったかな)


(かもね)


リリスが飛びながら苦笑する。


(今は兎に角切り抜けよう、悩むのは後だよ)


(あれか、あそこから・・・)




ルシファー・リリスが穴を視認、今でも魔獣が這い出て来ている。


人間もいれば獣もいる。


穴はそこまでは大きくはない、成人男性が通れるくらいの大きさだ。


しかしながら問題はその周囲の光景だった。


様々な生き物の死骸がぶちまけられていた。




(くそが・・・)


エデンの制服が確認できる死体も幾つかあった。


腹が裂かれて臓物が撒き散らされている者、首が無い者様々だった。




しかしながら戦死した者達の周囲にもその倍近い死骸が散らばっていた。


殆ど無尽蔵に湧いてくる敵へ立ち向かったのだろう、倒れた誰もが勇敢な兵士だったに違いない。


そしてリリスは穴の周囲に生き残りの兵士がいないことを言わなかった。





(・・・リリス、さっさとあの穴をやるぞ)


ルシファーが睨みながら怒りを含んだ声で言った。


(貴方は間違っていない)


だが死んだ兵士達の事を見て思っていたであろう事をリリスが言う。


彼女の思った通り先程の光景を見てしまったルシファーは素早く助けに来れば助けられたかもしれないと考えてしまっていた。


リリスは続ける。


(しっかり状況を把握して動こうとした。私達だけじゃない、ヴァーリ達の為にもなった。絶対・・・間違っていないよ)


絞り出すように彼女は言った。




彼等だけ、またはあの場に居たのがガブリエルのみなら直ぐに動いてしまっても良かっただろう。


そうすれば全滅は免れたかもしれなかった。





だが実際は違った、残念ながら戦力として心許ない三人が居たのである。


あのテントも何時までも安全なわけがない、なので適切に状況を把握し一番味方が集まっている安全な場所に向かわせなければ後顧の憂いとなっていたのは明白だった。






(私達は万能じゃないんだから・・・ね)


リリスの言葉にも元気がなかった。


必死に抑えていたが反応が消えていく、つまりは死の瞬間を感じ取ってショックを受けていたのである。


何回遭遇しても彼女はそれに慣れる事が出来なかった、ルシファーが居なかったらおかしくなっていた可能性すらある程だった。




(ああ、そうだな・・・そうだ)


彼も悲しげな声で言った。


自分達は話したこともない他人より幼馴染み達を選んだのだ。


命は平等、それを選ぶなど傲慢と言われても仕方ない事かもしれない。


だがルーラーは、自分達は万能ではないのだから仕方ないと必死に言い聞かせ呑み込んだ。







(片付けたら少しだけ、どこかでゆっくりしような)


(うん・・・賛成)


言葉は不要だった、兎にも角にも目的を果たす。


今はそれだけだ、彼等は魔獣達の穴蔵を黒炎で消し飛ばしにかかった。
































「畜生・・・」


ここは野営地の南門、金髪の青年が一人、その周りには彼と同じ服装の人間の死体が転がっていた。


彼の名はケルビム、南門の守備の要であった。


傷だらけで必死に周囲を睨み続けている。


(くそ・・・ふざけたことしやがって、来るなら来やがれよ・・・)


周りには誰も居ないように思える。


だが実際は見えなかったのだ。


魔獣達に襲われたので仲間達と返り討ちにしたまでは良かった、だがその混乱に乗じられ見えない何かに南門の守備部隊は襲われた。


そして今に至っていた。


相手は物音も立てず兎に角焦らし真綿で首を絞めるが如くケルビムを攻め続けていたのである。










(焦ってるな、だがこれで良い。猛獣と馬鹿正直に戦ってやる必要はないからな)


そしてこちらは姿を隠しているトロメアの兵士達、取り囲むように配置につき次の攻撃機会を伺っていた。




ケルビムという男はガブリエルの配下ではかなりの勇名を持っている者だった。


その実力は一人で十人の悪魔族に勝つほどである、普通の兵士ならば一人の悪魔族に五人近くで向かわなければ勝負にならないことが殆どだった。


だがケルビムは勝ってしまうのだ、万全に警戒するのも無理ないだろう。


要所を任されるのも納得であった。




(だが慢心も出来ない)


今姿を消している魔法、魔力の外套は見えなくするだけで存在を消すことは出来ない。


気配、息遣い、少しでも抑えることを怠れば瞬く間に居場所を悟られる危険がある。


そして相手、ケルビムは先に述べた通りかなり強い、下手に仕掛ければ今現在の見えないというアドバンテージを覆され負けることも考えられる。


その為の作戦であった。







「出て来やがれ!この卑怯者共が!正々堂々戦え!」


ケルビムが鬼のような形相で咆哮する、常人なら竦んでしまう程の凄みがある。


だが返事をする者は誰も居ない、静寂しかなかった。






(くそ、くそ、くそ、くそ、くそが・・・)


苛立ちが募っていく、余計な考えがケルビムの頭を過り始める。


(物音が一切しない・・・諦めたのか?嫌そんなはずはない・・・でも・・・)


目の前の敵に全神経を集中させていたのだが次第に思考に別の物が混ざり始めていた。


兎にも角にも目の前の敵を倒すと意気込んでいたが集中力が途切れ始めていたのである。


先程の大声も自分に気合いを入れる為でもあった。






(・・・頃合いだな)


そしてトロメアの兵士達狩人はゆっくりと首を刎ねる為に歩を詰めていく。


如何に優れた戦士だろうが手傷を負わされ集中力が途切れれば十分な力は発揮できない、彼等はこれを待っていた。


魔力の外套は使用の難易度が高く他の魔法との併用が出来ないデメリットがあるが剣で首を刎ねれば問題ない。


彼等は剣術も優れていた、手負い相手なら尚更負ける気がなかった。






気は抜くな、目配せで合図を送り各々が頷く。




意識を集中、確実に殺す。


5方向から少しづつ迫っていく。




(ようやくトドメだ)




完全に気配も遮断し一息の所まで辿り着く、後は踏み込み切り刻むのみ。




ケルビムに死が迫っていた。




(くたばれ!)




一気に三人が斬り掛かった。




「ちっ・・・させるか!」


音に気付きケルビムが剣を構えた。




響く金属音、姿は見えないが三人分の重さがしっかりとケルビムの身体に負荷を掛ける。


そして背後からも駆け寄る音がした。




(ちっ・・・だめだ・・・両手が・・・)


音に気づき迎撃をしようとした、だが無理だった。


彼の両手は剣を抑えるのに死力を尽くしていた。


前方から迫る剣の圧が凄まじく少しでも気を緩めれば防ぎきれない、ましてや片手を離すなどもってのほかだ。




ケルビムという男は強いが所詮は人間としての範疇、悪魔族みたいに身体を変異させることも出来ず神であるヴァーリ達みたいに強大な魔力で戦況を打開することも出来ない。


ケルビムは死を覚悟した。


(状況から見て恐らく相手は北も攻めている・・・ここが陥落すれば俺達は完全に退路を断たれて袋のネズミだ・・・みんなすまない・・・)



沈痛な面持ちで彼は目を閉じた。








だがケルビムの背中が切り裂かれそうになった瞬間何かが飛来した。


そして生温かいものが彼に掛かった。


痛みはなかった、明らかに自分の血ではない。




(・・・まだ死んでない・・・のか?)


恐る恐る彼が目を開ける。


「お・・・お前は、いや・・・お前達は・・・」




目の前に居たのは部隊を襲った化物を一撃で撃退した黒翼の悪魔族、ルシファー・リリスだった。

















足下にはケルビムを背中から切り裂こうとした悪魔族の兵士が転がっていた、頭の半分が抉られており間違いなく即死だろう。


ケルビムは恐る恐る口を開いた。


「悪魔族が・・・悪魔族が何をしに来た・・・」


悪魔族への怒りではなく困惑と言った物言いだった。


「生き残りはお前だけだな」


「ああ、そうだ」


彼等は淡々と伝えた。


「時間が無い、一度しか言わないからよく聴け。人手が足りないから救護テントに行け、生き残りと負傷者を集めて一気に離脱する」


「おいまて、いきなりなんなんだ、お前達は味方なのか?」


「時間が無いって言っただろう、一刻も争うんだ。さっさと行け」


これ以上は何も話さない、そう言わんばかりの態度を取り彼等は敵に向かって行ってしまった。




いきなりのことで追い掛けるという発想すら湧かずケルビムはその背を見ることしか出来なかった。


(・・・ああ、分かった。行ってやる・・・くそ・・・)


だが彼はしなければ行けないことが分からない愚か者では無い、すぐさま救護テントに向かった。


















仲間達、敵と思われる何か、獣、等様々な死肉が散らばっている中彼は必死に駆けていた。



(まさか悪魔族に助けられちまうなんてな・・・)


複雑な胸中だった。


仇を自分で討てなかった不甲斐なさ、死を覚悟したのに生きていた悪運、裏切られて以降ずっと敵だと思って憎んでた悪魔族達に助けられたというなんとも言えない気持ち、様々な気持ちが渦巻きとてもじゃないが素直に感謝を述べる気持ちにはなれなかった。


(・・・助けないで殺せば良かった・・・って思ってた奴らに助けられたのか・・・)


ガブリエルが彼等を保護することを言った時、ケルビムは反対していた。




彼もそうだがオリュンポスの兵士の多くは悪魔族に裏切られ何人もの同胞を失ったのである。


終戦、そして和平から長い時間が経ち共に生きていく頼もしい仲間だとようやく考え始められる事が出来るようになってからの出来事だった。


突然の裏切りで多くの仲間が死んだのはどう足掻いても変わらない事実、だがたった今助けられたのも事実だった。






(ああもう、何が何だか分からねえけど・・・やってやる・・・助けてくれたのは事実だ、今は信じてやる・・・)


気持ちを必死に整理しながら戦いのダメージを負った身体を奮い立たせケルビムは走った。


(・・・無事に帰れたら礼くらいは言わせてくれ)














(行ったか?)


(ええ、大丈夫よ)


(そうか、良かった・・・)




残っていた敵に襲い掛かりながら彼等は安堵していた。


自分達がどう思われているか分からない程彼等は鈍感では無い。


悪感情を抱いている相手にいきなり指示をされるなど普通なら反発してもおかしくないだろう。


なので彼等は突き放すように一方的に言った。


まだ口答えするつもりなら最悪魔力弾で頬を掠めるレベルの威嚇射撃でもする覚悟だった。




尤もトロメアの精鋭相手にそのような隙は命取りになるので本当に最後の手段だったが。


何にしても後は彼の運と実力に賭けるのみであった。








この三人が生き残ったのは全くの偶然だったと言える。


偶然立っている位置が突撃してくる彼等を視認できる位置だった為に三人は生き残れた。


だが三人にとって死が具現化したと言って良いような彼等は生き残った命の蝋燭を吹き消すが如き猛攻で攻め立てていた。







(・・・くそが、化け物かよ)


一瞬でも気を抜けば死ぬ薄氷の上を三人は渡っていた。


相手の方が人数が多い物の反撃の隙など与えず右手の剣で斬り掛かりながら隙あらば魔力弾で追い立てるルシファー・リリス。


三人は孤立する事が死と同義なのを理解しているのか付かず離れずの位置をキープし兎に角避け続けていた。


だが視線を向けていないのに的確に撃ち抜こうとする射撃、かと思えば一瞬で距離を詰めてくるスピード、確実に斬り捨てるという殺意を感じられる斬撃、対峙していて恐怖しか感じなかった。


(だめだ・・・まだ反撃なんて考えたら殺される・・・)


(勘づかせるな・・・気付かれたら今度こそ終わる)



だが三人は諦めていなかった。














(くそ、すばしっこい)


繰り出す攻撃が悉く躱されていた彼等、顔には一切出していないが少し焦りが募っていた。


(全力で逃げに徹してる感じだね。何か企んでそう・・・気をつけないと)


それは彼も分かっていることだった、だが生かしておいたら何をしてくるか分からないのがトロメアである。


ここで見逃すわけにも行かないのだ。


見かねたリリスが一つ提案した。


(ルシファー、埒があかないわ。少しやり方を変えましょう)


(・・・ああ、流石に限界だ)






ほんの一瞬だった。


方針転換を彼等が決めた瞬間一瞬だけ彼等の攻撃が止んだのだ。




その隙を哀れな獲物と成り果てていた狩人達は見逃さなかった。


「今だああああ!」


リーダーらしき男が叫んだ。


彼等も何か企んでいる事は考えていた。


だが既に術中に陥っていた事に今漸く気付いたのである。


(まずい!)


(やっちゃった・・・これは・・・)


全力の急加速を試みようとする彼等、だが遅かった。




「ぐあっ・・・」


鉛のような物が全身にのしかかる感覚に襲われ彼等は地に叩き付けられた。


離脱するより早く彼等は重力の檻に囚われたのである。






相手の逃げ方はまさに巧みだったと言うしかなかった。


攻撃を避ける事に全力を注ぎながらも相手は立ち位置を取り囲むように少しづつ変えていたのである。


対象を取り囲む立ち位置、これは結界魔法を発動する準備に他ならなかった。


完全にルシファー・リリスが優勢だったのは間違いなかった、だが確実に倒すと意気込み気付かなかったのは彼等の落ち度だっただろう。






「・・・死ぬかと思ったぜ」


彼等を檻に閉じ込めたトロメアの兵士達は冷や汗に塗れながら肩で息をしていた。


全力で魔力を注ぎ確実に負荷を与え続けていた。


「こんなことで・・・くそ、が・・・」


倒れ伏したルシファー・リリスは腕を上げることすら出来なかった。



「いざという時の切り札さ・・・本当は五人で使うこと前提なんだ。でも三人生き残ればまだ使える、お前達も十分恐ろしかったが運は俺達に味方したな」


「残念ながら俺達の魔力じゃこのまま殺すことは出来ないがお前達が完全にへばるまで拘束くらいなら出来る、観念しろよ」


(ルシファー・・・動けそう?)


(だめだ・・・此奴らの言う通りらしい・・・これはかなり強力だ)


彼等が動かせるのは一瞬だけ腕を上げるほどである。




結界魔法は複数方向から魔力を注ぎ檻を作り出す魔法だ。


当然人数が増えればそれだけ強力になる。



(これは・・・普通の結界じゃ無いな、たった三人でここまでの力を出せるわけがない)


(また知らない技術ね・・・全くどうなってるのよ・・・)


彼等の知っている結界だったら道具を使わない場合使用には最低でも十人は必要だった。


だが今居るのはたったの三人、それでほぼ抵抗を封じられるほどの効力、またしても未知の技術と言える。




「もう終わりだ。散々暴れ回って仲間達を殺しただけじゃなくオリュンポスに肩入れまでしやがって、楽に死ねると思うなよ・・・」


相手も余程無理をしているのか三人は汗を浮かべながらも憎悪に満ちた顔をしていた。


もしもこのまま意識を失えば死ぬより恐ろしい事になるのは明白だった。


何とかしなければならない。



(・・・こうなったら・・・)


色々考えた末一つの策を彼は思い付いていた。


と言うかそれしか思い付かなかった。


(ルシファー、思い付いたの?)


自力で結界の範囲外への離脱は現実的では無い、敵の視界もあるが身体が地面に圧し付けられる力が強すぎて芋虫のように這う事すら不可能に近かった。


(ああ、一つだけ・・・まだ諦めるには速いぞ)




ルシファー・リリスは腕の位置を調整し始めた。


(くそ・・・重たすぎる・・・)


ただ腕を動かしただけ、ただそれだけで冷や汗が止まらない程の負荷が掛かった。


だがゆっくり確実に、少しづつ、気付かれないように彼等は腕の位置を調整した。







(大丈夫だ・・・これで完璧だな、行くぞ)


(ええ、行きましょう!)


単純な話しではあった、結界を構成しているのは複数方向から送り込まれている魔力だ。


なら結界を無効化するにはその魔力を欠けさせれば良い。


(これが閉じ込めるタイプなら作られるのが壁だからこの手は使えない、だがこれは多分違う・・・違ってもらわないと困る・・・)


これが壁を作っているタイプ、外から内を閉じ込める結界であるなら彼等の悪足掻きに等しいこの一手は無に帰す。


その為に彼は直ぐ踏み切れなかった。


しかしながら迷う暇はもう無いのだ。




覚悟を決めた彼等は魔力弾を相手の足に目掛けて撃ちだした。







魔力弾、基本中の基本の魔法。


彼等がこれを多用する理由は極めて簡単だった、使い易いからである。


どんな状況だろうと失敗し暴発させる心配が無い魔法、扱いやすさは兵器には重要であった。


それは今のような状況でも同じだ、激痛に思考が濁らされている中でも照準さえ合わせられれば失敗無く撃ち出す事が出来る。




だが悲しいかな、撃ち出せても当たるとは限らないのである。




彼等は絶句した、足を目掛けて撃った弾丸が逸れていったのだ。


相手の足が避けた訳では無かった、自分から避けたようにすら見えた。




「嘘だろ・・・そんな・・・」


思わず声が出てしまったルシファー・リリス、相手は嘲笑するかのように告げた。


「対策していないとでも思ったか?ここは俺達の作った領域だ、そんなもん通すわけないだろ」


「発想としては正しいな、誰かが欠ければ結界は意地出来なくなる。だが無駄だ」


「俺達はお前達を決して侮らない、だからこそこのままお前達の意識が無くなるまで拘束し続けてやる。どれだけ攻撃を読もうがどれだけ速く動けようが動けなければ何にも怖くない、お前達は終わりだよ」


間違いなく本気だった、勝ちに驕った余計なことは絶対しないという意思を感じさせられる言葉。


恐らく相当な手練れなのだろう。








だが相手は一つ致命的なミスをしていた。


今の会話で彼等は打開策を見つけてしまったのである。


(リリス、行けるな?)


(ええ・・・任せて、今度は確実にやるわ)


チャンスは一度だけ、これで失敗すれば恐らくもう打開は不可能だろう。


リリスは集中した。










彼等は再び魔力弾を撃った。




三人は一瞬訝しんだ、だが魔力弾は前方に立っていた兵士の脇を通り抜けていった。


結界の防護策は完璧であった。




(何だ・・・何を)


目の前の相手は愚かでは無い、無策に無駄だと言われたことを繰り返すと思えなかった。






だが手遅れだった。


「あっ・・・がっ・・・え・・・」


次の瞬間身体の内側から焼き払われるような痛みが彼を襲った。





その光景に残りの二人は戦慄した。


兵士の背中に何かが沢山刺さっていたのだ。


(背中・・・だと?馬鹿な他に仲間が?)


残った二人が必死に辺りを探す、だが全く誰かが居たような気配は無かった。


そしていきなり現れた不意打ちは心臓にも到達していた、その兵士の意識が永遠に失われるのに数秒掛からなかった。






それは同時に目の前の彼等猛獣が解き放たれることを意味していた。










侮りは無かった。


だが三人は唯一の対抗策である結界を過信しすぎた。




確かに一度捕らえればその力、重力の圧は凄まじくルーラーであろうと満足に動けなくなる。


そして悪足掻きで飛び道具を撃たれてもその軌道は全て使用者を逸れて飛んでいき無意味と化す、中からの脱出はほぼ不可能と言って良い程の完成度だった。



しかしながら完璧なわけが無かった、結界は当たり前だが中にしか効果が無い。


外からなら常に集中していなければならない使用者の背中を簡単に刺せる。


なので使うならば孤立した獲物への追い打ちだろう。


孤立無援だった彼等に使った判断は間違っていない。






もう一つ想定外だったのはただの魔力弾を炸裂させ散弾とするやり方を彼等が編み出していたことだった。


確かに何かが来ることを警戒はしていた。


だがそれが魔力弾、よりによって基礎中の基礎である最も弱い魔法を変化させてくるなどトロメアの兵士達には考えがつかなかった。


兵士達の知っているルーラーは殆どがオリジナルの魔法を使っていた為固定観念があったのだろう、こんな基礎的な物を変えてくるなどと。

















それは一瞬だった、解き放たれた瞬間彼等は判断の遅れた左側の兵士を両断していた。


「っ・・・!」


殺意に満ちた眼が残った独りに向けられる。


(くそ・・・くそが・・・死ねるか!)




彼等が動き出したのと同時にこの兵士は奥の手を使った。




距離は目と鼻の先と言っても良い、能力を使うしか無かった。




男は躊躇いなく火炎を口から放った。









悪魔族は身体の一部を魔族の物に変異させることが出来る。


ルシファー・リリスなら背中から翼を、彼等が戦ってきた相手のウェパル達なら体表と血液、アイム達なら腕を翼に変えられる。



だがあまり違いが現れない者も居る。


その場合は何が違うのか、身体の内側が変異している事が多い。


例を挙げるなら内臓の変異で猛毒に対する強い耐性を得ることが出来たり強力な火炎を吐き出せるようになる。


これらは能力を使っているかのかを判別しづらい特徴がある、一見普通の人間に見せかけて不意討ち等のやり方をする者が多い。




本当は斬り結んだ時の奥の手として残していた、でも使いどころは今しか無い。


これがこの兵士個人の用意できる最大の攻撃だからだ。


距離は目と鼻の先、そして火炎の熱は人間程度なら直撃すれば一瞬で炭になる。




あまりにも近すぎる為自傷行為と言っても良いのだがこの化け物を殺せる可能性に彼は賭けた。



(もらった!)













そして頭部が真っ二つにされた男が地面に倒れ込んでいた。


それはトロメアの兵士だった。


彼が火炎を吐くより速く彼等は光輪を投げていたのである。


変化が出ていなかった時点で能力の目星は付いていた、ならば使うタイミング、予備動作、それらを読んで投げ込むのは彼等には容易かった。




真っ二つになった頭から火炎が漏れ出し死体に火を付けていた。


























「終わった・・・」


そして周囲に敵が居ない事を確認し彼等は膝を着いた。


全身の痛みが酷い、勝つことは出来たが薄氷の勝利だったと言える。


(きつかったね・・・)


(ああ・・・でも休む暇は・・・無いな)


肩で息をしながらも立ち上がる彼等、まだ終わってはいない。




(状況は?)


(・・・反対側の反応は一つ・・・じゃない、やっぱり来てたね・・・)


(嘘だろ、あの怪我で・・・)


(兎に角急ごう、共闘出来ればまだ勝機はあるよ)


(ああ、だな)

















「これで大体片付いたか・・・」


ここは救護テント、ヴァーチェは地面に座り込み疲労が隠せない様子だった。


衣服は魔獣達の返り血で染まりきっている。


魔獣撃破の指揮を取りながら獅子奮迅の活躍をしていたのだ、無理もないだろう。





「ありがとうございます・・・ヴァーチェ将軍が来てくれなかったら俺達・・・」


生き残っている兵士達は皆満身創痍だった、その状態で怪我人を庇いながら戦っていたのである。


混乱の中必至に皆は戦った。


そしてもうだめだと諦めそうになった時ヴァーチェの助けで態勢を立て直せた。



生き残れたことに喜ぶ兵士達、だがまだ終わってはいないのは誰もが察していた。


ガブリエルは?他の場所に配置されていた味方は?敵の総数は?このテントに居た者達には分からないことしか無いのである。



この場の皆が縋るような目でヴァーチェを見ている、次の指示を期待する眼差しだった。


彼は呼吸を整え直し口を開いた。


「・・・自力で歩けない怪我人を可能な限り残ってる馬車に乗せるんだ。私は周りに魔獣達が居ない今状況を確認し生き残りを探してくる。その後は生き残りと合流、ここを離脱するぞ」


これしかない、敵が侵入している以上長居は自殺行為だと判断しての指示だった。


それでも兵士達は不安を隠せなかった。


「そんな・・・今将軍が離れたら・・・次敵が来たらもう・・・」


気持ちは痛いほど分かる話だった。




この兵士達も皆厳しい訓練を積んできた者達ばかりだ、だがどれだけ訓練された兵士でも人の子。




恐ろしい者に襲われ傷付き疲弊しては弱音も出てしまうだろう、だがヴァーチェは心を鬼にして言い放った。


「敵が侵入した以上間違いなく入り口のどちらかは落ちている、生き残る為にはガブリエル様と合流し敵陣を突破するしか無い。このままでは死を待つだけになる」


残念だが事実だった、腹を決めるしか無い。





しかしながらそんな時に一兵卒が口を開いた。


「あの・・・将軍、一つ聞かせてくれませんか?何故ガブリエル様と一緒じゃないのでしょうか?」


この言葉に場がざわめきだした。





ヴァーチェの役目大きく分けて二つ、ガブリエルの補佐と護衛だ。


この場の皆もよく知っていた。


彼女の側を離れるときは余程の事態だという事、例を挙げるなら先遣隊だった魔獣使い達の救援にガブリエルが向ったとき等ヴァーチェが指揮を預かることはあった。


そういう場合はガブリエル自らが皆の前でヴァーチェに任命していた。


ただの疑問、普段のヴァーチェなら直ぐに答えた。


だが何故か答えは直ぐに返ってこなかった、周りの皆が訝しんだ。




「それは・・・」


そして漸く答えようとしたその時だった。





「おーーーーい!」


聞き覚えのある声が返答を遮った。


「この声は!」


ヴァーチェと動ける者達がテントの外を覗いた。


「あいつら、生きていたのか!」








「ああ、良かった・・・あいつらの言う通りだ。俺達間に合ったんだな・・・生きてたんだ・・・」


ヴィーザルが泣きながら先輩達との再会を喜んだ。



「ああ、お前達もよく無事だった。でもよくここが分かったな、それに魔獣達がまだ居ただろうに」


ヴァーチェが言う、フレイヤが疑問に答えた。


「えっと・・・私達が生き残れたのも、ここにみんなが集まってるのも分かったのは彼等。ルシファーとリリスのお陰なんです・・・」


「何が起きてるのか分からなかったんですけど二人がみんなが集まっている場所を教えてくれて、作戦も考えてくれたんです。魔獣達の発生源と北と南の入り口を二人と先生が何とかする、俺達は生き残りと合流して即座に離脱できるように準備するって」


聞き捨てならない単語が聞こえた、ヴァーチェは思わず聞き返す。


「待ってくれ、発生源?一体何がどうなってるんだ?」


「えっと・・・地面に穴が掘られてたらしくて、そこから魔獣がいっぱい送り込まれてたんです。それで北と南の門にも敵が居て蓋をされてて・・・らしくて、でも魔獣の数は思ったより居なかったので俺達でも突破できたんです。多分あいつらがやってくれたんですよ」


「お前達・・・あの悪魔族達の言葉を信じたのか?」


ヴァーチェが信じられないと言った顔で言った。


「ええ、信じました。でも信じた結果あの二人は約束を守ってくれたし俺達も生き延びれました」


ヴァーリが堂々と言い放った、この場にこの三人揃っていることが紛うことなき事実だった。


「なので今すぐにでも逃げられる準備をして待機していましょう、合図が来たら直ぐに動かないと」



だがヴァーチェは首を縦に振らず考え込む様子を見せる。


暫くして口を開いた。


「・・・そうか、分かった。ガブリエル様の居場所は分かるか?」


「はい、北を取り戻してくるって。でも本当は先生は消耗してたから俺達が行きたかったんですけど・・・多分カなりの戦力で攻めてるだろうから危険だって言われちゃって・・・」


ヴァーリが言う、彼はまだ敬愛する師の心配をしていた。


左右の友人も同様なのがよく分かる。







「お前達に頼みたい事がある、ガブリエル様の助けに行ってもらえないか?」


ヴァーチェからの言葉、本当は喜んでと言いたかった。


だがヴァーリは本音を抑え込んだ。


「ヴァーチェさん、それは・・・俺達はここで怪我人の護衛の手伝いをして門の敵が掃討出来るのを待てと指示を受けました。先生の、使徒であるガブリエルの命令でもあるんです、これでは作戦が違ってしまいます」


彼等の作戦にガブリエルも同調していた、つまりはガブリエルの命令と同義、そう判断しての発言だった。


統率や規則が無ければ獣と変わらない。


これはガブリエルの教えでもあった、そして三人もこの考えを大事にしていた。


ガブリエルの教え子でもあったヴァーチェやこの場の殆どの者も分かっていた。




だがこの場の三人を除く者達は皆賛成しなかった。


「言いたいことは分かるがガブリエル様も万全ではなかった、あの悪魔族達との戦いのダメージが残っている。万が一という事もある、もしもの事があったら私達も今度こそ終わりだ。頼む・・・」


ヴァーチェが頭を下げた、滅多に無い事ではある。


そして他の生き残っている者達も期待の眼差しを三人に向けていた。


「頭を上げて下さい・・・俺達が行かなくても絶対あいつらが行ってくれます、あの二人なら俺達より全然強い。だから俺達はここで」


詳しい事を聞いてはおらず推測が混ざってはいた、それでも彼等なら行くとヴァーリは確信していた。


本当なら彼等は無関係、知らぬ存ぜぬでこの場を去っても良かったのだ。


でもしなかった、ここで助けに行かない事は絶対に無いと三人は確信していた。




だがヴァーリの言葉を遮り一人の兵士が口を挟んだ。


「そいつらを信じて良いのか?」


「え?信じてって・・・」


「そのままの意味だ、行かなかったらどうする?ガブリエル様を見捨てたことになるんだぞ」


場がざわめきだした、そして三人は思い出した。





悪魔族は根本的に信用されていないのだ。









































「片付いたか」


嘯くモロク達、足下には北の防衛にあたってた兵士達の死体が転がっていた。


万一に備え戦い方を想定していたのだろう、立ち向かった兵士達は一箇所に固まる戦法でモロク達と対峙した。


力の差を数で補う為である。


だがそれだけではルーラーに敵わず全員が骸を野に晒すことになった。







「さて・・・奴らは?」


(南の方、それで穴が潰された、中に送った魔獣達も結構やられたみたい。それから・・・)


「そうか・・・ここで決着を付けるとしよう」


逃げるような事はしない、そんな確信があった。


「あいつらのこともあるが・・・ガブリエル、お前もここで終わらせてやる」




彼女には殺気を隠す気が無かった。


振り返れば憤怒の表情のガブリエルが無数の魔力弾を放っていた。


「モロク!アミー!ここで死ね!」


彼女は怒りを隠そうともしなかった。


(また間に合わなかった、また・・・また・・・)


苦い思い出が頭に蘇る、ずっと心に突き刺さっていた嫌な思い出である。







身体強化を使い全力で駆け抜けていた、それでも見えてきたのは一つだけの人影。


考え得る限り一番最悪な事が実現したのは間違いなかった。


そこに居たのが他の者であればまだここまで怒りを露わにすることも無かったかもしれない。


だが居たのは彼等、モロクとアミー。


その昔強敵から友になるが生涯を掛けて必ず殺すと誓った怨敵だった。









着弾した魔力弾が爆風を起こし煙が辺りを包む。


だが全て防がれ掠り傷にもならずモロク達は変わらない様子で佇んでいた。


「一足遅かったようだな」


「・・・そうね」


彼女の声は怒りで震えていた、そして静かに剣を抜き構えた。


「ここで死んでもらうわ、今日こそは・・・!」


今ではあまり見せることが無くなった敵意を剥き出しにした表情をガブリエルはしていた。


どんな手を使ってでもここで討つ、その決意にモロク達はほんの僅か竦みかけた。







あの日のことが両者の頭に過る。


出会いは最初の大戦だった、まだ未熟だったガブリエルはモロク達と戦い殺されそうになるが他の神の助けで生き延びれた。


次に出会った時は戦争が終わった後だった。


最初は驚いたが話してみれば意気投合、共に戦うこともあり良き戦友となった。




だがあの日が来た。


ガブリエルは才能を開花させ使徒の地位に就きモロク達と共に戦っていた。


突然だった、背後を護っていたモロク達の部隊が裏切ったのである。


手塩に掛けて育てた部下達が大勢目の前で殺された。


力の限り戦ったが敗戦が濃厚になり彼女は逃げるしか無くなった。


彼女は慟哭し憎悪し恨んだ。



今尚続くこの戦いの開戦の日として歴史に記録される事になった日である。







「ああ、お前も相当強くなったんだろう。でも死ぬのはお前だ」


モロク達もかつての友の圧に内心驚きながら構えた。


竦みかけたのは覚悟の違いか、いずれにしても彼等も退く気は無い。


どちらかが死ぬまで戦うしか無いのだ。






世界が止まったかのように製寂する。


お互い瞬きすらせず相手を視界に収め続ける。






先に動いたのはモロク達だった。


理由は一つしか無かった。


(分かってるな?あいつらと合流されれば厄介だ、一気に行くぞ)


(ああ任せろ!)


アミーの忠告に頷き距離を詰めながらモロク達は肉薄した。




離れては居るがここにはルシファーとリリスも居る。


(まだ北で交戦しているのは分かっている、だが・・・恐らくここに来るのもそう遅くはならないだろう。時間は無い)


(油断はしない。全力で潰す!)


飛来する魔力弾を躱しながらモロク達は確実に詰めていく。


勢いを増しガブリエルを一撃で葬らんと拳に力を込めるモロク達。


ガブリエルは後ろに全力で後退しながら魔力弾を撃ち続けてる。


一見ただの悪足掻き、だがその一発はどれもルシファー・リリスと戦った時以上の物だった。


魔力弾のメリットである制御のしやすさを生かした戦い方、そして今撃ち出している魔力弾は城塞やドラゴン等の大型の魔族に向けるような大砲並の破壊力を秘めていた。


当然だが使う魔力の量も馬鹿にならない、だがこれくらいしなければ牽制にすらならないのをガブリエルは嫌というほど理解しているのだ。




(ちっ・・・こいつ・・・)



モロク達にも冷や汗が流れていた、込められている魔力弾の威力に対してである。


ルシファー・リリス達の時同様モロク達は予知の技量を頼りに避けながら突き進んでいた。


技量に自信があるのもそうだが尤も致命的な理由があった、彼等ご自慢である必殺の拳はバリアと併用が出来ないのだ。


短期決戦を狙うには拳に魔力を圧縮した状態で到達しなければならない、だがバリアに魔力を割いてしまえば短期決戦は難しくなる。


しかしバリアを使わないで避け続けるのは彼等に多大なプレッシャーが掛かっていた。






(この感じ、掠っただけでも無事じゃ済まないだろうね・・・自分が倒れるか私達が倒れるかの我慢比べってか)


(上等だ。このまま行く、日和れば死ぬのは俺達だ)


(ああ、当たり前だよ)


だが彼等の覚悟も決まり切っていた、目の前から迫ってくる死の嵐に怯むような心情では無かった。


もう後退の文字は無いのだ。




自分達が広げた戦火、そこから生まれた化け物のソロモン、それを倒す為、贖罪の為にこれで最後と誓って手を汚した。


刃向かう者を悉く殺した、老若男女問わず魂を抜き取った、手駒の為に魔獣にもした。


助けてくれ、彼だけは、彼女だけは、この子だけは、それらの声を全部踏み躙った。


贖罪の為と心を押し殺し続けようやく終わりが見えた。


罪を償える、これで全部が終われる、もう怨嗟の声を聞かなくて済む、そう思うと安堵すら感じた。


だが別の道を提示してくれた者達が現れた、恐怖に支配され後戻りが出来なくなっていた自分達に新しい選択肢を提示してくれたのだ。




嬉しかった、汚れきった自分達だがまだ何か出来るかもしれないと希望を抱けた。




でもヤツが現れた、ヤツは誘惑してきた、唯一の心残りを。




それに屈した愚かな二人にはもう退く資格は無いと腹を括っていた。




もう進むしか無いのだ。







(4!)


後数歩、だがまたしても魔力弾が掠りそうになる。


近付けばそれだけ被弾の可能性は大きく上がってしまう。


(3!)


はやる気持ちを抑えるモロク達。


(2!)


ガブリエルはよく耐えた方だった、全力で退避しながら一切威力を落とさず暴発もさせず正確に撃ち続けたのだ。


普通ならばどこかで綻びが生じるような精密な動作をやりきった、モロク達は敵ながら感嘆していた。


(1!)


だがそれも終わりである。


(モロク!)


アミーの合図、完全に射程圏内。


モロク達は全力を込めた、あとは拳を振り抜き目の前のかつての友を粉砕するだけだ。




ガブリエルの次の弾はもう完全に間に合わない、放たれるまでのタイムラグは全てモロク達は把握していた。




剣を抜くガブリエル。




だがそんな物は無意味、最早どのような剣や盾だろうが彼等の拳は確実に打ち砕く。




その確かな殺意を抱き拳を































振り抜かなかった。


寸前で思い止まった彼等は全力で距離を取ったのだ。




(だめだ、あのまま振っていたら確実にこちらが死んでいた・・・ヤツの雰囲気はそんな予感を感じさせられる物だ・・・)


(ああ、同感だ。気のせいじゃない・・・全く、生きてしまったな・・・)


本当に彼等に退くつもりは無かった、だがこればかりは経験の差だろう。


本能的に身体が反応してしまったのだ、多くの戦いで染みついた経験が勝手に身体を動かし防衛させてしまったと言っても良い。


だが結局時間を消費してしまった彼等、合流前に勝つという目標が更に遠のいたと言っても良い完全な悪手だった。


どうするべきかと二人は必死に思考をし始めた。






そしてそんな時だ、ガブリエルが口を開いた。






「おや・・・何をビビっているんですか?」


「・・・何?」


あまりにも安い挑発、モロク達は思わず返答をしてしまった。


「あのままご自慢の拳を振り切っていれば今頃私は肉片になって散らばっていたでしょうに、何を怖がっているんですか?私はたかだがこの剣を抜いただけ、それだけでなんでせっかくの機会を棒に振ってしまったんですかね?」


右手に剣を持ったまま腕を広げて煽る声音のガブリエル、さあ来いとでも言わんばかりの体勢だ。


あからさますぎる態度、だがモロク達は腹を立てるような事は無かった。


それどころかこちらに攻撃させようとしていることを確信した。


「・・・小癪な事をするようになったな。今度は挑発か・・・そんなことで我々がお前の思い通りに動くと思っているのか?」


「さあどうでしょうかね、その通りだとしても貴方達に選択肢はないですよ」


嘲笑するかのような声音だった。


「・・・舐めるなよ」


モロク達の言葉に力が籠もった。




残念ながらガブリエルの言葉は事実だった。


背中を見せれば容赦なく撃たれる、攻めあぐねれば合流される、ならば相手の隠し持っている罠へ向けて進むしか無いのだ。


手段ならまだある、しかしながらそれを使うべきかとモロク達は先程まで悩んでいた。


無駄に手の内を明かすことは彼等は好まなかった、そういった行為が命取りになった者を多く見てきたからだ。


だがもう迷う必要は無い、反応が三つ迫ってきていた。


彼等の覚悟は決まった。




(・・・三つだと?)


(まて、どうした?)


(おかしいんだ・・・数が合わない、あいつらじゃない・・・これは・・・)








(ああ・・・先程ので来てくれてればまだ良かったんですがね・・・流石に鋭いか)


対するガブリエルは目付きが変わったことを察しており内心では失敗を一番悔しがっていた。


このときの為に、あの圧倒的一撃を確実に潰す為だけに独りで考案し習得した反射魔法。




魔法はまだ生まれたばかりの技術、誰にも習えない中孤独に彼女は必死に努力をした。


使徒や神にはよくあることだった、魔法は切り札だ。


切り札を晒すことは死に近付く、どこから情報が漏れるかは分からない為修練も何もかも全てを秘密にし来るべき時に備えるのだ。





せめて一撃は一矢報いたかった等という気持ちを捨てきれず魔力の大量使用で疲労困憊な身体に鞭打って構えた。


だがそんな時だ、また相手が声を掛けてきた。



「なあ、一つだけ教えてくれないか?」


「・・・今更何をですか?」


「お前の頼みの綱、あいつらは二人組で間違いないな」


「・・・だからなんですか?」


「今反応がこっちに近付いている、恐らくあと1分程度で着くだろう」


(おかしい・・・だったら何故冷静に?)


ここまで聞けばガブリエルが勝ちに思える、どれだけモロク達が本気を出そうがあと1分程度なら彼女でも耐えることは出来る。


だがモロク達は一切取り乱してない、諦めたとも思えない。


そして次の言葉で彼女の余裕は崩れ去った。





「一番近い反応の数はな、三つらしいんだ」


「・・・っ!」


その言葉、そしてガブリエルの反応を確認したと同時にモロク達は反応のする方向へ走り出した。


あと1分程度、ならばこちらから走って向えば更に速く着く。


ガブリエルも必死に追いすがった。


(魔力弾では・・・だめだ、もう威力を保てない・・・魔力を使いすぎた・・・)


必死に張っていた虚勢が全て無駄になった、作戦の全てが崩れた。


この状況で来た三人などあの三人しか彼女には思い当たらなかった。




そして不幸なことに彼等が南の敵を殲滅するのはこの数分後だった。






























「見つけたぞ!悪魔・・・族・・・」


必死で駆け続け漸く佇むモロク達を見つけたヴァーリ達、だがその光景に三人は言葉を失った。


「先・・・生」


「そんな・・・」


三人が見た光景は倒れ伏せたガブリエルだった。


剣が折れズタボロにされた師、モロク達に踏み付けられ苦しみの呻き声を上げていた。


そしてモロク達は心底呆れた、失望したような様子で三人を一瞥した。


「・・・やはりあの時のお前達か・・・何故ここに来た。敬愛する師匠を助けようとでもしたのか?それは勇気でも何でも無い。蛮勇、自殺と言うべき行為だぞ・・・」


「・・・うるせえ・・・うるせえよ角男!その足をど」


モロク達の言葉に激昂しようとしたヴィーザルが見えない何かに突き飛ばされた。


「まあ良いか・・・どうでも良い事だ」


更に踏み付ける力を強めるモロク達。


「お・・・俺達が相手だ・・・先生から離れろ・・・」


「よくも先生を・・・」


自分を奮い立たせ立ち向かおうとするヴァーリとフレイヤ、声の震えが一切隠せていなかった。


しかしモロク達は告げた。


「・・・愚かだ、愚かとしか言いようが無い。もう前みたいに見逃してやる気持ちも完全に失せた・・・」


「舐めるなよ、俺達だって・・・」


「ああ・・・そうだな・・・教えてやる。何があったのか、お前達の作戦が何なのかは分からない。でもなお前達が来なければこの女、お前達の先生はこんな無様な姿を晒してはいなかっただろうな」


モロク達の言葉は目の前の愚者達への怒りに震えていた。


「で・・・でも先生は、万全じゃ無かった。だから・・・少しでも助けようと・・・」


フレイヤが必死に言葉を絞り出して反論をした。


「いいか?よく胸に手を当てて思い出せ、お前達は何を命じられた。ここに来ることを言われたのか?」


三人は何も言い返せなかった。


「だろうな、お前達程度の雑魚が来たところで死体が増えるだけだ。この女はそれをよく理解していた、その上で役目を与えたはずだ。それを何を思ったかお前達は守らなかった、お前達が師を殺したんだよ」


「そんな・・・そんなこと・・・」


「この女は決して自分から動かなかった、戦い方を研究しきった結果だろう。でも援軍が三人だと伝えた途端血相を変えて斬り掛かってきた。分かるか?お前達の元に行かせまいと必死に足止めをしたんだ、馬鹿で愚かで無能な教え子の為に全てを捨てたんだ・・・」


話を聞いていた三人の顔から血の気が引いていく。


自分達が断っていればと後悔と絶望が胸に渦巻いてきた。


「私の心の底から一番嫌いなものを教えてやる、お前達みたいな無能な味方だ。お前達だけじゃない、別の場所に集まっている連中も同類だろう・・・自分達の愚かな決断に後悔しながら死なせてやる・・・」


その声には確かな怒りと憎悪が渦巻いていた。


この愚か者達が信じていればこうはならなかった。


モロク達にとってガブリエルは敵だ、だがそれでもこんな呆気ない結末は望んではいなかった。


(良いんだな)


(ああ、もう良い。良いんだ)










モロク達はガブリエルの頭を掴んで起こした。


腕が力無く垂れている、抵抗することすら彼女には不可能だった。


「いいか、これがお前達の愚かな決断の末路だ」


モロク達の言葉、三人に嫌な予感がした。


だがモロク達の殺気に一歩も踏み出せなかった。


「動くなよ、動いたやつから先に殺してやる」




「黙ってみておけ、尤も多分お前達は知っているかもしれないが・・・な・・・!」




力んだモロク達、膨大な魔力をガブリエルの脳目掛けて流し込んだ。




三人はこの光景を見たことがあった。




最初は怒りだった、トロメアへの怒りだ。




悪逆の限りを尽くしていたトロメアに勝つ為なら、この連中も悪逆を尽くした、同じ人間ではない、悪魔族と言う化け物だ。




そう思い魔獣を禁止したオリュンポスが魔獣を製造するのを三人は知っていて止めなかった。




だがその化け物人間が本気で苦しみ悶え叫ぶ様を三人は見てしまうことがあった。




心の奥深くにしまっていた記憶だった。





それが今師によって開かれてしまった。













「あああああアアアあああああああいやあああアアああああああああああ、ヤメテおねがいヤメテおねがいやめてやメておねがいいたいイタいいたいワレル割れるアタマが割れる壊れるイタいいたいイタいいたいイタいおねがいやめてやメておねがいいたいタスケテタスケてやめてたすけてキエタクナイケサナイデヤメテおねがいヤメテおねがいやめてやめてたすけてキエタクナイケサナイデヤメテおねがいヤメテおねがいやめて」


この世の物とは思えない叫び、これが自分達の師匠から発せられている事実。


夢ならどれだけ良かったか。


三人は何も出来なかった、ただ膝をつき涙を流すことしかできなかった。


美しく強く賢く時に厳しく優しかった師匠が消えていく姿を見ていることしか出来なかった。










でも去った時間にもう一度は無いのだ、時間は戻らない、零れた水は盆には帰らない。


どれだけ間違えようが進むしか無いのだ。
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