異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第三章 黒猫杯

ある日、森の中、魔神さんに、出会った

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 黒猫杯の開催宣言から一週間経った。
 みんな、毎日サッカーの練習をがんばっている。
 今日もケモッセオのグラウンドに練習に行くけど、練習に行く前に狩りをして、練習ついでに商人ギルドでお金を稼ごうと思った。
 まぁ、良い獲物がいれば、だが。
 みんなそれぞれ、畑仕事や家事、魔法研究、鍛冶仕事と仕事がある。
 フランはゴロゴロしてるだけだし、アレッサンドラは王女だからと何もしないが。
 俺も仕事がないから、なるべく狩りをするようにしてる。
 今日もフランとアレッサンドラのサボリコンビを誘って狩りに行こうとしたけど、フランは寝ててアレッサンドラは拒否。
 仕方ないので一人で狩りに出かけた。
 せっかくだから、ダンジョンの入り口で見張りの人に挨拶して行こうと思い、ダンジョンの方へと歩く。
 道中のセーフティエリアで、ちょっと桃でも食べていこうかな。
 そう思って桃の木を探して周りを見渡すと、女性が一人で桃を食べているのを見つけた。
 白いワンピースのような服に麦わら帽子をかぶっている。
 口の周りをベタベタにしながら桃を食べてる……、だけどこの人誰だろう?
 バハムートさんの城では見たことないと思うし……。
 あ、もしかして天使だろうか。
 一応挨拶しといたほうがいいかな?
 俺は女性の元へと歩いていった。
「こんにちわー。
 天使の方ですか?」
 挨拶をすると、少し間を置いてから女性がこっちを見た。
「……?
 あーちゃんのこと?」
「えーっと。
 あなたはあーちゃんっていうんですか?」
「そ。
 あーちゃんは、あーちゃんっていうの」
「そうですか。
 あーちゃんは天使ですか?
 俺、数ヶ月前からこの辺りに住んでるジズーって言うんですけど、あーちゃんのこと初めて見たもので」
「あーちゃんは天使、ちがうよ?」
「あれ、そうなんですか?
 じゃあドラゴン?」
「ドラゴンも、ちがう」
 あっれー?
 龍の巣って竜族か天使族しかいないって聞いてたんだけどなぁ。
 あ、もしかして知能が高くて人化の魔法が使えるモンスターっていうこともあるのかな。
「俺は猫っていうモンスターなんですけど、あーちゃんもモンスターですか?」
「モンスターも、ちがうよ」
 あっれぇー?
 もうわかんない、お手上げだ。
 竜族でも天使族でもモンスターでもないなら……、見た目は人間だからただの人間なのかな?
 だとしたらなんでこんな所に人間が?
 普通に危ないんじゃないかな?
「あーちゃんは人間ですか?
 誰かに連れてこられたとか?」
「だいじょぶ、自分できたよ?
 あーちゃんは一ヶ月くらい前に、ここのおうちにきた」
「おうち?
 あれ、この辺に家ってあったっけ……?」
 ていうか、龍の巣で家なんて、うち以外知らないし見たことない。
 バハムートさんちは城だし……。
「あーちゃんち、あっち」
 そう言って滝の方を指差す。
 んん!?
 あっちって確か……、えぇぇ!?
 まさかまさか、もしかしちゃう!?
「あーちゃんち、滝の方にある洞窟だよ」
「あーちゃんってもしかして……、魔神さん?」
「そ。
 あーちゃんは魔神」
 わーお、魔神さん普通に外に出てた……。
 見張りがいるはずなんだけどなぁ……。
「えっと、あーちゃんのちゃんとしたお名前聞いてもいいですか?」
「いいよ。
 あーちゃんの名前は、アスモデウス」
 おおぅ、俺でも知ってる名前だわー。
 やっばー、めっちゃ強そー……。
「洞窟の入り口にドラゴンの人がいたと思うんですけど、お話しませんでした?」
「??
 入り口、通ってないからわからない。
 歩くの、めんどーだから転移で外に出てる」
「転移!!」
 さらっと規格外なことをおっしゃる!
 だけどなんか……、精神年齢低い感じ?
 もしくはすっごいピュアとか?
 魔神って聞いて悪いイメージしてたけど、敵対しなければ大丈夫なのかな?
「ジズーは、何しにきた?」
「俺も桃を食べに来ました。
 おにぎりを持たせてくれたけど、今は果物の気分だったんで」
「おにぎり?
 なに?」
「あ、そっか。
 えーっと、これです。
 これがおにぎり。
 食べてみます?」
 すごく興味津々な感じでおにぎりに視線がロックオンしてるから、そう言わざるを得ない。
 いやまぁ、全然いいんだけどね。
 ちなみに具は鮭だ。
「そのままぱくっと食べちゃって大丈夫です」
 あーちゃんはこくんと頷いて、おにぎりをまずは一口。
 表情は全然変化しないけど、すぐに食べるスピードが上がった。
 お気に召したようだ。
「これ、おにぎり、おいしい。
 ジズーが作った?」
「これは俺の友達が作ってくれたんです。
 あと一個ありますけど、食べますか?」
「いいの?」
「いいですよ」
「ありがとう」
 お、ちょっと嬉しそうな顔になった。
 完全な無表情ってわけじゃないんだね。
 普通に会話できるし、無茶言うわけじゃないし、ちゃんとお礼言えるし、普通に良い子じゃない?
 まぁ、怒らせたり敵対したりすると超危険なんだろうけど。
「あーちゃんのおうちってあーちゃんが作ったんですか?」
「ジズー。
 もっと普通に、しゃべって。
 堅苦しい言葉、苦手」
「そっか。
 じゃあ普通にしゃべるね」
 あーちゃんはこくんと頷く。
「あーちゃんのおうち、あーちゃんが起きたらあった」
「そっか、気がついたらおうちにいたんだね。
 じゃあ、どこから来たとかわからないの?」
「うん、わからない。
 あーちゃんは、あーちゃんがあーちゃんってことしかわからない」
「ずっと一人でいたの?」
 こくんと頷く。
 うーん、なんていうか……。
 すごく家に連れて帰りたくなってきた!
 こんな精神年齢子供みたいな子が洞窟で一人だなんて……!
 ほっとけないでしょ?
 ねえ、みなさん!
「あーちゃん、ずっとおうちにいたけど、お腹すいたの。
 何日か前、お外に出てみたら食べ物みつけた。
 おいしかった」
 もうだめだ、連れて帰る!
 もし問題が発生したらその時考える!
「ねえ、あーちゃん。
 あーちゃんはおうちに帰らないといけないの?
 他の場所に行っちゃだめなの?」
「帰らなきゃいけない、のは違う。
 でも、他に帰るおうち、ない」
「そっか。
 それじゃあさ、あーちゃん。
 俺の家に来ない?
 家には俺の友達がたくさんいるよ。
 美味しいご飯作ってくれたり、一緒に遊んだり。
 あーちゃんも友達になれると思うんだ」
「ジズーのおうち?
 いいの?」
「うん。
 俺だけじゃ決められないけど、みんながいいよって言ったら、あーちゃんも一緒に暮らそうよ」
「うん、行きたい。
 ひとりぼっち、つまらない。
 嬉しい」
「それじゃ行こうか。
 こっち――うおっと!」
 案内しようと思ったらあーちゃんに抱き上げられた。
「歩くの、疲れる。
 こっち?」
「あ、うん。
 そっちだけど、歩かないならどうするの?」
「転移する。
 でも、転移、ちょっとずつしか進めない。
 ジズーのおうち、遠い?」
「ううん、そんなに遠くないよ。
 じゃあちょっとずつ転移してくれる?」
 あーちゃんはこくんと頷くと、俺を抱えたまま転移した。
「うおおお、一瞬で景色が変わるのすげー……」
 数十メートルの距離の転移を何度も繰り返すと、世界樹の傍に着いた。
「あーちゃん、ここからは歩きだよ。
 急に現れるとみんなビックリしちゃうからね」
「わかった」
 さーて、みんなはなんて言うだろうか。
 めっちゃ不安だけど、こんなあーちゃんを放っておけない!
 なんとかしてみんなを説得して、あーちゃんを迎え入れたい!
 俺の戦いはこれからだ!
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