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第三章 黒猫杯
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俺は、あーちゃんこと魔神アスモデウスを家に連れて帰った。
今玄関の前にいる。
もし、「元の場所に戻してきなさい!」なんて言われたらどうしよう、とか考えてしまう。
いやまぁ、そんなことはないだろうというのはわかる。
みんな良い人だし、大丈夫なはず。
でも、「ただし普通の場合に限る」なんだよなぁ……。
俺たちの普通っていうのも、世間的にはぶっとんでるんだろうけど、そんな俺たちでも魔神というのは普通なんかじゃない。
魔神という点だけが不安だ。
家で暮らしてもいいってなっても、怖がられたりしたらあーちゃんはきっと傷つくんだろうなって思う。
傷つくようなことになったら連れてきた意味がない。
あー、やめだやめ!
考えてもしょうがない!
「よし、行くか!」
俺はあーちゃんを連れて家に入った。
奥から話し声が聞こえる。
リビングで談笑しているようだ。
「あーちゃん、こっちだよ」
こくんと頷いておとなしくついてくるあーちゃん。
俺はドキドキしながらみんなに声をかけた。
「た、ただいまー」
「おかえ……あら、お客さん?」
「綺麗な人だね~。
どうしたの?
ナンパしてきたの~?」
「んなわけないっしょ!
コホン。
他のみんなは?
まだ戻ってきてない?」
「うん、薫子とバハムルくんは畑でパレオは研究室でアルフレートくんたちは工房ね。
お昼ご飯食べたばっかりだからしばらく戻ってこないんじゃない?」
「そっか、そうだよね。
とりあえずここにいる人に先に紹介しちゃうか。
えーっとですね、さっきセーフティエリアの森で会いました。
あーちゃんです。
ほら、あーちゃん、自己紹介して」
「……あーちゃんは、あーちゃんっていうの」
そしてペコリ。
「あー、というわけで、あーちゃんです。
で、なんだけど……。
冷静な対応をお願い致します」
「なんだし?
かしこまって」
「こちらのあーちゃんは、えーっと……、一ヶ月くらい前にうちでも話題に上がったことがあるダンジョンにお住まいの……。
……魔神アスモデウスさんです!」
「そ。
あーちゃんは、魔神。
アスモデウス」
「「「「……」」」」
やばい、なんだこの沈黙。
だめだ、とりあえず何か言わなきゃ!
「えーっとね、あーちゃんは目が覚めたらダンジョンにいたらしくて、自分が魔神ってこと以外何もわからないみたいで、少し前までずっとダンジョンの中にいたらしいんだけど、お腹が減って最近外に出るようになったみたいで、口の周りをベタベタにしながら桃を食べてて可愛らしいなって思って、ずっとダンジョンで一人だなんて俺だったらつらすぎるなって思って――」
「はいはいおーけージズー。
落ち着いて、ストップストップ」
「あ、はい」
ダメって言われるのが怖くてつい一気に捲し立ててしまった。
子供みたいだ、恥ずかしい。
「え……、魔神?
魔神って伝承にある、あの魔神……!?」
アレッサンドラがテンパってらっしゃる。
「要するに、アスモデウスさんをここに住まわせたいってことだよね?」
「う、うん」
「それなら薫子呼んできてからじゃないと。
家主ってことになってるし、女神だし」
「それはそうなんだけど、なんていうか。
ここの実質的なボスって、ぶっちゃけ澪じゃん?
クリスとレオなんか、澪に絶対服従って感じだし?」
俺の言葉にみんな頷いている。
「ええー!?
みんな私のことそんな風に思ってたわけ?
なんでよ!」
「怖いとかそういうんじゃないよ?
しっかりしてるし、みんなの胃袋を掴んでるから、ねえ?」
またしてもみんな頷く。
「やめてよ!
なにそれ、なんかオカン的ポジションじゃん!
うわー、ショックだなー」
「いいじゃ~ん。
それだけみんなに信頼されてるってことでもあるんだしね~」
「いや、でも……、私日本でまだ二十二歳だったんだけどなぁ……」
「えーっと、それで……、あーちゃんの件いかがでしょう?」
「そうだねー……。
アスモデウスさん。
ジズーはこう言ってるけど、あなたはここに住みたいって思ってるの?」
「うん。
ジズー、良い人。
友達、なりたい。
一人はいや、寂しい」
「うっ!」
お、澪の保護欲に突き刺さったかな?
「アスモデウスさん。
いや、あーちゃん!
あなたの家は今日からここです!
ようこそ我が家へ!」
「堕ちるのはやすぎだし!」
よく考えたら、澪って猫大好き人間だったっけ。
そんな人があーちゃんみたいな子、放っておけるわけないか。
「ちょっと待っててね!
みんな呼んでくるから!」
そう言うとダッシュで外に出ていった。
「ごめんね~あーちゃん。
たまにあんな感じになるのよ~。
ビックリしたかもしれないけど、良い人だから大丈夫だよ~。
あ、ここ座って~」
こくんと頷いて椅子に座るあーちゃん。
歓迎されたのがわかったのか、なんとなく嬉しそうだ。
その後、戻ってきた薫子さんとバハムル、パレオ、アルフレート、ミッシェルに紹介した。
薫子さんとバハムルはめっちゃ普通に歓迎してたが、パレオとアルフレートとミッシェルは驚きすぎて顎がはずれそうになってた。
まぁ、このリアクションもすっごくましな方なんだろうなぁ。
何はともあれ、よかった!
とりあえずなんとかなった!
「ちょっと早いけど、おやつにしようか。
せっかくだし、あーちゃん歓迎会的な感じでここでみんなで食べよう。
ちょっと多めに作っといたけどちょうどよかったね」
「今日はちょっと凝ってマンゴープリンにしたよ~」
「マンゴープリン!?」
「なにそれうまそうだし!」
「あら、いつもとちょっと色は違うわね」
澪と雫がみんなにマンゴープリンを配っていく。
あーちゃんは、目の前に置かれたマンゴープリンをじっと見てる。
当然見るのも初めてだろうし、どんな味なのか想像もできないよね。
「これ、なーに?」
「マンゴープリンっていうんだよ。
美味しいよー?
さ、食べてみてよ」
澪に促され、こくんと頷きぱくっと一口。
ついついみんな注目してしまう。
「どうかな~?」
「びっくり。
これ、おいしい。
幸せの味」
そう言って、一口一口ゆっくり味わって食べる。
うん、かなり気に入ったみたいだ。
「こういうプリンもあるんすね!」
「甲乙つけがたいっす!」
「プリンと果物が合わさるとこのようになるのですね」
「おいしいのだー!」
ドラゴン四人はちゃっかり二個目を確保して食べている。
安定の食いしん坊っぷりだ。
そんなドラゴンたちを見てるあーちゃん。
もしかしておかわり欲しいのかな?
「あーちゃん、もう一個食べる?」
「あーちゃんの分、食べたからもうない」
「オレのプリン食べていいよ。
俺がおにぎり食べたばっかりでお腹一杯だから」
「いいの?」
「うん、いいよ。
はいどうぞ」
「これおいしくて大好き。
ありがとう」
「どういたしまして」
そしてまたゆっくりと味わって食べる。
美味しそうに食べてるのを見るのが好きって人がいるけど、正直今までその気持よくわかんなかったけど、あーちゃんのおかげで良く理解できた。
いくらでも食べ物をあげたくなる。
気をつけて食べさせすぎないようにしないと、あーちゃん太っちゃうな。
太っても食べる姿は癒やされるんだろうけど……、っていかんいかん。
こういう考えが、太らせてしまう原因だ。
太った魔神なんて格好つかないし、あーちゃんを太らせないように気をつけよう。
食べ終わったあーちゃんに今度は澪がプリンをあげている。
やばい、気をつけなきゃいけないのは俺だけではないようだ。
今玄関の前にいる。
もし、「元の場所に戻してきなさい!」なんて言われたらどうしよう、とか考えてしまう。
いやまぁ、そんなことはないだろうというのはわかる。
みんな良い人だし、大丈夫なはず。
でも、「ただし普通の場合に限る」なんだよなぁ……。
俺たちの普通っていうのも、世間的にはぶっとんでるんだろうけど、そんな俺たちでも魔神というのは普通なんかじゃない。
魔神という点だけが不安だ。
家で暮らしてもいいってなっても、怖がられたりしたらあーちゃんはきっと傷つくんだろうなって思う。
傷つくようなことになったら連れてきた意味がない。
あー、やめだやめ!
考えてもしょうがない!
「よし、行くか!」
俺はあーちゃんを連れて家に入った。
奥から話し声が聞こえる。
リビングで談笑しているようだ。
「あーちゃん、こっちだよ」
こくんと頷いておとなしくついてくるあーちゃん。
俺はドキドキしながらみんなに声をかけた。
「た、ただいまー」
「おかえ……あら、お客さん?」
「綺麗な人だね~。
どうしたの?
ナンパしてきたの~?」
「んなわけないっしょ!
コホン。
他のみんなは?
まだ戻ってきてない?」
「うん、薫子とバハムルくんは畑でパレオは研究室でアルフレートくんたちは工房ね。
お昼ご飯食べたばっかりだからしばらく戻ってこないんじゃない?」
「そっか、そうだよね。
とりあえずここにいる人に先に紹介しちゃうか。
えーっとですね、さっきセーフティエリアの森で会いました。
あーちゃんです。
ほら、あーちゃん、自己紹介して」
「……あーちゃんは、あーちゃんっていうの」
そしてペコリ。
「あー、というわけで、あーちゃんです。
で、なんだけど……。
冷静な対応をお願い致します」
「なんだし?
かしこまって」
「こちらのあーちゃんは、えーっと……、一ヶ月くらい前にうちでも話題に上がったことがあるダンジョンにお住まいの……。
……魔神アスモデウスさんです!」
「そ。
あーちゃんは、魔神。
アスモデウス」
「「「「……」」」」
やばい、なんだこの沈黙。
だめだ、とりあえず何か言わなきゃ!
「えーっとね、あーちゃんは目が覚めたらダンジョンにいたらしくて、自分が魔神ってこと以外何もわからないみたいで、少し前までずっとダンジョンの中にいたらしいんだけど、お腹が減って最近外に出るようになったみたいで、口の周りをベタベタにしながら桃を食べてて可愛らしいなって思って、ずっとダンジョンで一人だなんて俺だったらつらすぎるなって思って――」
「はいはいおーけージズー。
落ち着いて、ストップストップ」
「あ、はい」
ダメって言われるのが怖くてつい一気に捲し立ててしまった。
子供みたいだ、恥ずかしい。
「え……、魔神?
魔神って伝承にある、あの魔神……!?」
アレッサンドラがテンパってらっしゃる。
「要するに、アスモデウスさんをここに住まわせたいってことだよね?」
「う、うん」
「それなら薫子呼んできてからじゃないと。
家主ってことになってるし、女神だし」
「それはそうなんだけど、なんていうか。
ここの実質的なボスって、ぶっちゃけ澪じゃん?
クリスとレオなんか、澪に絶対服従って感じだし?」
俺の言葉にみんな頷いている。
「ええー!?
みんな私のことそんな風に思ってたわけ?
なんでよ!」
「怖いとかそういうんじゃないよ?
しっかりしてるし、みんなの胃袋を掴んでるから、ねえ?」
またしてもみんな頷く。
「やめてよ!
なにそれ、なんかオカン的ポジションじゃん!
うわー、ショックだなー」
「いいじゃ~ん。
それだけみんなに信頼されてるってことでもあるんだしね~」
「いや、でも……、私日本でまだ二十二歳だったんだけどなぁ……」
「えーっと、それで……、あーちゃんの件いかがでしょう?」
「そうだねー……。
アスモデウスさん。
ジズーはこう言ってるけど、あなたはここに住みたいって思ってるの?」
「うん。
ジズー、良い人。
友達、なりたい。
一人はいや、寂しい」
「うっ!」
お、澪の保護欲に突き刺さったかな?
「アスモデウスさん。
いや、あーちゃん!
あなたの家は今日からここです!
ようこそ我が家へ!」
「堕ちるのはやすぎだし!」
よく考えたら、澪って猫大好き人間だったっけ。
そんな人があーちゃんみたいな子、放っておけるわけないか。
「ちょっと待っててね!
みんな呼んでくるから!」
そう言うとダッシュで外に出ていった。
「ごめんね~あーちゃん。
たまにあんな感じになるのよ~。
ビックリしたかもしれないけど、良い人だから大丈夫だよ~。
あ、ここ座って~」
こくんと頷いて椅子に座るあーちゃん。
歓迎されたのがわかったのか、なんとなく嬉しそうだ。
その後、戻ってきた薫子さんとバハムル、パレオ、アルフレート、ミッシェルに紹介した。
薫子さんとバハムルはめっちゃ普通に歓迎してたが、パレオとアルフレートとミッシェルは驚きすぎて顎がはずれそうになってた。
まぁ、このリアクションもすっごくましな方なんだろうなぁ。
何はともあれ、よかった!
とりあえずなんとかなった!
「ちょっと早いけど、おやつにしようか。
せっかくだし、あーちゃん歓迎会的な感じでここでみんなで食べよう。
ちょっと多めに作っといたけどちょうどよかったね」
「今日はちょっと凝ってマンゴープリンにしたよ~」
「マンゴープリン!?」
「なにそれうまそうだし!」
「あら、いつもとちょっと色は違うわね」
澪と雫がみんなにマンゴープリンを配っていく。
あーちゃんは、目の前に置かれたマンゴープリンをじっと見てる。
当然見るのも初めてだろうし、どんな味なのか想像もできないよね。
「これ、なーに?」
「マンゴープリンっていうんだよ。
美味しいよー?
さ、食べてみてよ」
澪に促され、こくんと頷きぱくっと一口。
ついついみんな注目してしまう。
「どうかな~?」
「びっくり。
これ、おいしい。
幸せの味」
そう言って、一口一口ゆっくり味わって食べる。
うん、かなり気に入ったみたいだ。
「こういうプリンもあるんすね!」
「甲乙つけがたいっす!」
「プリンと果物が合わさるとこのようになるのですね」
「おいしいのだー!」
ドラゴン四人はちゃっかり二個目を確保して食べている。
安定の食いしん坊っぷりだ。
そんなドラゴンたちを見てるあーちゃん。
もしかしておかわり欲しいのかな?
「あーちゃん、もう一個食べる?」
「あーちゃんの分、食べたからもうない」
「オレのプリン食べていいよ。
俺がおにぎり食べたばっかりでお腹一杯だから」
「いいの?」
「うん、いいよ。
はいどうぞ」
「これおいしくて大好き。
ありがとう」
「どういたしまして」
そしてまたゆっくりと味わって食べる。
美味しそうに食べてるのを見るのが好きって人がいるけど、正直今までその気持よくわかんなかったけど、あーちゃんのおかげで良く理解できた。
いくらでも食べ物をあげたくなる。
気をつけて食べさせすぎないようにしないと、あーちゃん太っちゃうな。
太っても食べる姿は癒やされるんだろうけど……、っていかんいかん。
こういう考えが、太らせてしまう原因だ。
太った魔神なんて格好つかないし、あーちゃんを太らせないように気をつけよう。
食べ終わったあーちゃんに今度は澪がプリンをあげている。
やばい、気をつけなきゃいけないのは俺だけではないようだ。
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