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第三章 黒猫杯
決着
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小さな子供が頑張る姿は、人によるかもしれないけど応援したくなるものだ。
バハムルはスタジアム中の観客を味方につけた。
スタジアムはうちのチームの応援一色となった。
まぁ、わりと始めからそんな感じではあったけど、それが一層強くなったという感じ。
相手チームはそんな中、すっかり開き直ったようで、ラフプレイが悪化した。
これだけの観客の前でドラゴンもいる中、よくここまでヒールに徹することができるもんだなーと、正直驚いている。
むかつくチームなのでボコボコにされてほしいが。
バハムートさんは落ち着いてきたのか、地震と火山の噴火は収まった。
プレイ再開。
うちのチームを見ていると、攻撃の起点はどうやらミッシェルのようだ。
まずはミッシェルにボールを預け、ミッシェルがボールを散らす。
相手チームもそれがわかったのだろう。
ミッシェルを重点的に潰しに行き始めた。
ミッシェルはボールコントロールが上手いのでなかなかボールを失うことはないけど、ガシガシ削られた。
ドワーフは多種族と比べると小型な種族で、さらにミッシェルはドワーフでも小さい方らしい。
ぶっちゃけミッシェルも子供に見える。
前にふとした時に本人にそう言ったらすごく怒られたことがある。
体が小さいと体力も少ない。
今は後半三十分になるところだけど、すでにミッシェルはしんどそうだ。
大丈夫かな……。
そう心配していたらボールがラインを割って選手交代。
どうやらうちのチームが選手交代するようだ。
「え、アスモが出るの?
誰か怪我でもしないと絶対出ないと思ってたけど」
「アスモちゃん、なんだかんだで優しいからねー。
見てられなかったんじゃない?」
「あぁ、そうかも」
『選手の交代をお知らせします。
ミッシェル選手に代わりまして、魔神アスモデウス選手』
選手交代のアナウンスが流れた。
その瞬間、スタジアムがざわついた。
ん?どうしたんだろう?
耳を澄ますと、「本物か?」とか「どうせ偽物だろ」とか聞こえてくる。
なるほど、そういえばアスモって所謂昔の偉人さんみたいなもんだったっけ。
とはいえ五百年ほど前の話。
本物かどうかなんて判断できるわけもなく……。
と思っていたらそうでもなかった。
観客の中にはエルフもちらほらといて、エルフは長寿なので当時を知ってる者が何人かいたようだ。
その長寿のエルフがアスモを見て「うわ、本物だ……」と思わず口にしたようで、どうやら本物らしいということがスタジアム中に一瞬で知れ渡った。
見事な伝言ゲームを見た感じ。
相手チームも、明らかに動揺している。
ドラゴンの目の前で好き放題やってた連中が、なぜアスモの登場にそんなに動揺するんだろう。
不思議に思っていたら領主さんが教えてくれた。
「ドラゴンは多種族と交流をしないから、ガイアの一般人にとってドラゴンは具体的なイメージがしにくい。
ただ、ガイアの主要六種族とは別次元の種族だというのはわかる。
よくわからないけどすごい、そんな認識だな。
しかし魔神アスモデウスのことは五百年前とはいえ、記録に残っている。
卑劣な人間の国に立ち向かい、人間の六人の英雄を一人で退け、人間の卑劣な手によって封印された悲劇の魔神。
それがガイアでのアスモの評価だ。
単純に、ガイア最強っていうシンプルな称号もあるからわかりやすいんだ」
なるほど……、アスモってすごい評価されてたんだなぁ。
家では基本ゴロゴロ寝転がっておしりをボリボリかいているんだけどね。
まぁ、みんなの夢は壊さないようにしよう。
ちなみに主要六種族ってなんだろう思ったので聞いてみたら、人間・魔族・獣人族・エルフ族・ドワーフ族・人魚族の六種と教えてくれた。
なるほど、残りは人魚だったのか。
いるんだなぁ、人魚。
スタジアムには人魚いないのかな。
ざっと見渡してみたけど、それっぽい人はいなかった。
残念。
ピッチに視線を戻すと、相手チーム怯んでいたものの、すぐに持ち直したようだ。
メンタルが強いのか、賞金欲しさの強欲パワーか。
後者だろうなぁ。
ドラゴンや天使、魔神と殺し合うわけじゃないし、ただサッカーというルールの上で競い合うだけ。
そう簡単には諦めないだろう。
アスモはミッシェルのポジションにそのまま入った。
ミッシェルのポジションはわりと攻守の要な気もするんだけど、大丈夫なんだろうか。
それ以前にルールは覚えたのかな。
練習もしてたなんて話は聞いてないし。
と思ってるそばからフランがアスモにパスを出した。
てっきり数合わせで入ってるだけかとも思っていたが、そうではないのかな?
アスモがパスを受けるその瞬間、相手選手がまたラグビーのようなタックルを後ろからしてきた。
激突。
鈍い音がした。
そして、相手選手が顔を押さえてうずくまった。
血がドバドバ出ている。
一方アスモはびくともしなかった。
そして笛が鳴る。
相手選手のファウルとなった。
「すごい血が出てるね、アスモちゃん大丈夫かな」
薫子さんは心配しているけど、俺は見た。
相手選手がアスモにタックルするその直前の一瞬、アスモは肘を出した。
低い姿勢でタックルをしにいってたから、肘に向かってモロに顔から突っ込んだ。
結果血の海。
「おー、大丈夫か?
まさか後ろからあんな相手を潰すような勢いで突っ込んできてるとは思わなくてよー。
運がなかったなー。
まぁ、これからも不運は続くんだけどな」
アスモが見下ろしながらあざ笑う。
さすが魔神、ヒールっぷりなら負けてない!
そして、残り時間はあと僅か。
なんだかんだでまだ両チーム無得点だ。
理由はシンプル、この試合は相手チームのラフプレイ連発により試合が止まりまくっているからだ。
そして、俺はしまったなと思った。
今回の大会のルールに、アディショナルタイムのことを書くのを忘れていた。
どれだけ試合が止まろうと、九十分で試合終了になってしまう。
……次回から導入しよう……。
一点さえ取れば時間的にほぼ勝ちになるから、相手もやる気はまだある。
しかし、アスモのエルボーで相手は腰がひけた。
びびって相手のほうが接触を避けるようになった。
とはいえ例外はある。
バハムルだ。
バハムルにだけは激しく当たってくる。
バハムートさんの顔がすごいことになっている。
ペナルティエリアの中までバハムルがドリブルしてきたところに、相手選手が突っ込んだ。
この選手の後ろにはキーパーしかいない。
バハムルは足でボールを横にずらし、自らもターンした。
マルセイユルーレット!
バハムルは見事相手を抜き去り、相手キーパーが慌てて前に出てきた。
それを見て、バハムルはボールをふわっと上げた。
ループシュートだ。
キーパーは地球ではありえないような反応でボールを弾こうと手を伸ばしたが、前に出て重心が前にあったのがいけなかった。
キーパーの手に触れることなく、ボールはゴールに入っていった。
「よっしゃー!!」
バハムルが叫んだ。
『ゴオオオオオオオオオル!!』
実況もシャウトし、スタジアムが歓声に包まれた。
「「「坊っちゃん!」」」
クリス、レオ、ロナの三人がバハムルに駆け寄る。
「ナイスっす!
すげーっす!」
「やったのだー!」
と、ここで長い笛がなった。
試合終了だ。
「やったああああ!
勝ったよジズー!!」
「っしゃああああああ!
すごいぞバハムルうううう!」
俺たちは大はしゃぎ。
そしてスタジアムの上空では、バハムルの活躍と勝利を喜んでいるのか、たくさんのドラゴンが飛び回っていた。
バハムルはスタジアム中の観客を味方につけた。
スタジアムはうちのチームの応援一色となった。
まぁ、わりと始めからそんな感じではあったけど、それが一層強くなったという感じ。
相手チームはそんな中、すっかり開き直ったようで、ラフプレイが悪化した。
これだけの観客の前でドラゴンもいる中、よくここまでヒールに徹することができるもんだなーと、正直驚いている。
むかつくチームなのでボコボコにされてほしいが。
バハムートさんは落ち着いてきたのか、地震と火山の噴火は収まった。
プレイ再開。
うちのチームを見ていると、攻撃の起点はどうやらミッシェルのようだ。
まずはミッシェルにボールを預け、ミッシェルがボールを散らす。
相手チームもそれがわかったのだろう。
ミッシェルを重点的に潰しに行き始めた。
ミッシェルはボールコントロールが上手いのでなかなかボールを失うことはないけど、ガシガシ削られた。
ドワーフは多種族と比べると小型な種族で、さらにミッシェルはドワーフでも小さい方らしい。
ぶっちゃけミッシェルも子供に見える。
前にふとした時に本人にそう言ったらすごく怒られたことがある。
体が小さいと体力も少ない。
今は後半三十分になるところだけど、すでにミッシェルはしんどそうだ。
大丈夫かな……。
そう心配していたらボールがラインを割って選手交代。
どうやらうちのチームが選手交代するようだ。
「え、アスモが出るの?
誰か怪我でもしないと絶対出ないと思ってたけど」
「アスモちゃん、なんだかんだで優しいからねー。
見てられなかったんじゃない?」
「あぁ、そうかも」
『選手の交代をお知らせします。
ミッシェル選手に代わりまして、魔神アスモデウス選手』
選手交代のアナウンスが流れた。
その瞬間、スタジアムがざわついた。
ん?どうしたんだろう?
耳を澄ますと、「本物か?」とか「どうせ偽物だろ」とか聞こえてくる。
なるほど、そういえばアスモって所謂昔の偉人さんみたいなもんだったっけ。
とはいえ五百年ほど前の話。
本物かどうかなんて判断できるわけもなく……。
と思っていたらそうでもなかった。
観客の中にはエルフもちらほらといて、エルフは長寿なので当時を知ってる者が何人かいたようだ。
その長寿のエルフがアスモを見て「うわ、本物だ……」と思わず口にしたようで、どうやら本物らしいということがスタジアム中に一瞬で知れ渡った。
見事な伝言ゲームを見た感じ。
相手チームも、明らかに動揺している。
ドラゴンの目の前で好き放題やってた連中が、なぜアスモの登場にそんなに動揺するんだろう。
不思議に思っていたら領主さんが教えてくれた。
「ドラゴンは多種族と交流をしないから、ガイアの一般人にとってドラゴンは具体的なイメージがしにくい。
ただ、ガイアの主要六種族とは別次元の種族だというのはわかる。
よくわからないけどすごい、そんな認識だな。
しかし魔神アスモデウスのことは五百年前とはいえ、記録に残っている。
卑劣な人間の国に立ち向かい、人間の六人の英雄を一人で退け、人間の卑劣な手によって封印された悲劇の魔神。
それがガイアでのアスモの評価だ。
単純に、ガイア最強っていうシンプルな称号もあるからわかりやすいんだ」
なるほど……、アスモってすごい評価されてたんだなぁ。
家では基本ゴロゴロ寝転がっておしりをボリボリかいているんだけどね。
まぁ、みんなの夢は壊さないようにしよう。
ちなみに主要六種族ってなんだろう思ったので聞いてみたら、人間・魔族・獣人族・エルフ族・ドワーフ族・人魚族の六種と教えてくれた。
なるほど、残りは人魚だったのか。
いるんだなぁ、人魚。
スタジアムには人魚いないのかな。
ざっと見渡してみたけど、それっぽい人はいなかった。
残念。
ピッチに視線を戻すと、相手チーム怯んでいたものの、すぐに持ち直したようだ。
メンタルが強いのか、賞金欲しさの強欲パワーか。
後者だろうなぁ。
ドラゴンや天使、魔神と殺し合うわけじゃないし、ただサッカーというルールの上で競い合うだけ。
そう簡単には諦めないだろう。
アスモはミッシェルのポジションにそのまま入った。
ミッシェルのポジションはわりと攻守の要な気もするんだけど、大丈夫なんだろうか。
それ以前にルールは覚えたのかな。
練習もしてたなんて話は聞いてないし。
と思ってるそばからフランがアスモにパスを出した。
てっきり数合わせで入ってるだけかとも思っていたが、そうではないのかな?
アスモがパスを受けるその瞬間、相手選手がまたラグビーのようなタックルを後ろからしてきた。
激突。
鈍い音がした。
そして、相手選手が顔を押さえてうずくまった。
血がドバドバ出ている。
一方アスモはびくともしなかった。
そして笛が鳴る。
相手選手のファウルとなった。
「すごい血が出てるね、アスモちゃん大丈夫かな」
薫子さんは心配しているけど、俺は見た。
相手選手がアスモにタックルするその直前の一瞬、アスモは肘を出した。
低い姿勢でタックルをしにいってたから、肘に向かってモロに顔から突っ込んだ。
結果血の海。
「おー、大丈夫か?
まさか後ろからあんな相手を潰すような勢いで突っ込んできてるとは思わなくてよー。
運がなかったなー。
まぁ、これからも不運は続くんだけどな」
アスモが見下ろしながらあざ笑う。
さすが魔神、ヒールっぷりなら負けてない!
そして、残り時間はあと僅か。
なんだかんだでまだ両チーム無得点だ。
理由はシンプル、この試合は相手チームのラフプレイ連発により試合が止まりまくっているからだ。
そして、俺はしまったなと思った。
今回の大会のルールに、アディショナルタイムのことを書くのを忘れていた。
どれだけ試合が止まろうと、九十分で試合終了になってしまう。
……次回から導入しよう……。
一点さえ取れば時間的にほぼ勝ちになるから、相手もやる気はまだある。
しかし、アスモのエルボーで相手は腰がひけた。
びびって相手のほうが接触を避けるようになった。
とはいえ例外はある。
バハムルだ。
バハムルにだけは激しく当たってくる。
バハムートさんの顔がすごいことになっている。
ペナルティエリアの中までバハムルがドリブルしてきたところに、相手選手が突っ込んだ。
この選手の後ろにはキーパーしかいない。
バハムルは足でボールを横にずらし、自らもターンした。
マルセイユルーレット!
バハムルは見事相手を抜き去り、相手キーパーが慌てて前に出てきた。
それを見て、バハムルはボールをふわっと上げた。
ループシュートだ。
キーパーは地球ではありえないような反応でボールを弾こうと手を伸ばしたが、前に出て重心が前にあったのがいけなかった。
キーパーの手に触れることなく、ボールはゴールに入っていった。
「よっしゃー!!」
バハムルが叫んだ。
『ゴオオオオオオオオオル!!』
実況もシャウトし、スタジアムが歓声に包まれた。
「「「坊っちゃん!」」」
クリス、レオ、ロナの三人がバハムルに駆け寄る。
「ナイスっす!
すげーっす!」
「やったのだー!」
と、ここで長い笛がなった。
試合終了だ。
「やったああああ!
勝ったよジズー!!」
「っしゃああああああ!
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