異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第三章 黒猫杯

第一回黒猫杯、閉会

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 黒猫杯はトーナメント戦だ。
 地球のワールドカップのように、グループステージ等といったものはない。
 今回はガイアでサッカーを広めるために、シンプルな形式にしてわかりやすくしたのだ。
 最初からトーナメントなので、ブロックによってはチームの強さにばらつきがでてくるということもある。
 事実、うちのチームは本戦の初戦でラフプレイに苦戦したものの、その後のニ試合は対戦相手に恵まれた感じだった。
 うちのチームの反対側の山に強いチームが多く、アキナさんとコロさんのチームはこちら側の山だ。
 二人のチームはどちらも勝ち進み、準決勝でぶつかった。
 俺の予想では、アキナさんのチームが勝つ。
 というより、本戦で初めてアキナさんのチームの試合を観たけど、正直すごいなと思った。
 もちろんうちのチームを全力で応援するけどね。
 やはりというかなんというか、準決勝はアキナさんのチームが勝った。
 アキナさんのチームは、全員が商人ギルドの職員だ。
 俺のイメージでは事務のお姉さん。
 もしくはエリーゼさんのようなキャリアウーマンみたいなイメージ。
 しかし実際は、チームのメンバーはみんな元Aランクの冒険者だった。
 アキナさん以外。
 アキナさんは今まで試合に出ていない。
 でも、メンバーにいろいろと指示を出している。
 監督のようなことをしているんだろう。
 Aランクの冒険者というのがどれほどのものなのかはわからないけど、Sが最上位のランクでその次がAなので、ガイアのトップレベルってことなんだろう。
 なんでそんな人たちが商人ギルドの職員やってるんだろう?
 謎だ。
 そんなすごいメンバーが、アイコンタクトだけで意思疎通し、すごい連携やフォローをしてくる。
 反則だ。
 コロさんたちも元Aランクの冒険者が中心のチームだけど、連携や作戦等で大きく差がついた。
 結果、健闘むなしくコロさんのチームは敗れ、アキナさんのチームが決勝へと進み、うちのチームと優勝をかけて戦うことになった。
 そして領主さんは、賭けに負けてへそくりを全額失った。
 死んだ目をして帰っていったけど、大丈夫だろうか。

 決勝戦当日。
 ケモッセオはかつてないほどの賑わいを見せていた。
 手探りで始めたサッカー大会だったけど、街の人にも楽しんでもらえたみたいだ。
 大会は成功したと言っていいだろうと思う。
 あとはみんなが優勝できれば最高の結末だ。
 今日も薫子さんと、一般の観客席で観戦する。
「みんなが勝てますように……、みんなが勝てますように……」
 薫子さんが祈っていた。
 領主さんは来ないかなと思っていたけど今日もやってきた。
 ただ、顔にビンタのあとがクッキリ残ってるんだけど……。
 なにか言葉をかけたほうがいいかなと思ったが、なんて言えばいいかわかんなかったのでスルーすることにした。
 しばらくして選手たちが入場してきた。
 フランとアキナさんが握手をして、うちのチームのボールでキックオフ。
 ボールをミッシェルにあずける。
 今日もいつものようにミッシェルが司令塔のようだ。
 アルフレートとミッシェルとフランの三人でパス交換をしながら少しずつボールを運んでいく。
 そしてレオに向かって長いパス。
 レオがボールを持った瞬間、三人に囲まれた。
 レオはドリブルが上手いけど、ボールを受けて前を向く前に囲まれてはそう簡単には抜けない。
 そして、パスも出せない。
 少し粘ったけど、結局ボールを奪われた。
 アキナさんのチームはボールを奪うとすぐにパス。
 全員がアイコンタクトをとりながらほぼダイレクトでパスをつないでいく。
 簡単にバイタルエリア(危険なエリアのこと。日本では主にペナルティエリアの前あたりのエリアそう呼ぶことが多い)にまでボールを運ばれるが、最後の最後でフランがパスカットをしたりボールを奪ったりシュートをブロックしたりと鉄壁っぷりを見せる。
 キーパーの雫もフランが届かないシュートをきっちりと弾いていく。
 普段ほんわかした雰囲気の雫が横っ飛びとかしてる姿に少し驚いた。
 失礼な感想だけど、あんなに機敏な動きできたんだなって思ってしまった。
 すいません。
 アキナさんのチームはカウンター狙いのようだ。
 前線の選手にパスが入ったら三~四人で囲んでプレッシャーをかけてボールを奪う。
 もちろん他が数的不利になるが、そこをアイコンタクトでカバーしあう。
 ボールを奪ったら素早くパスでボールを運ぶ。
 フランの活躍で無失点に抑えてるが、フランがいなかったら何点とられるかわからない。
 そのままお互い点は入らず前半終了。
 しかし内容としては、効果的な攻撃ができず、相手の攻撃をギリギリのところで防いでる状態。
 ドラゴンはパワーやスピード等フィジカル面では圧倒的に有利だけど、それを人数と連携で上手く抑えられている。
 ならば強いフィジカルを活かしたパワープレイなんていいかもしれないと一瞬思ったが、クロスやロングボールを迂闊に出すと空中でカットされる。
 地球ではクロスやロングボールを蹴ると空中でカットされることなんてない、当たり前だが。
 しかしここはガイア。
 十メートルくらいジャンプできる人が普通にいるのだ。
 うーん、どうしたらいいんだろう。
 考えていたらもうすぐ後半が始まるようだ。
 みんなの方を見ると、なにやら澪がみんなに話している。
 何か作戦を思いついたんだろうか。
 勝負は最後まで何が起こるかわからない。
 劣勢ではあるけれど、諦めないでがんばってほしい。
 俺は応援しかできないけど……。
 みんながんばれええええ!
 後半、相手ボールでキックオフ。
 アキナさんのチームのパスサッカーに慣れてきたのか、パスコースを消してテンポを殺したりパスカットをしたりということが増えてきた。
 うん、いい感じ!
 ボールを奪った後、ミッシェルがレオにボールを出す。
 すぐに囲まれるが、レオは強引にクロスを上げた。
 しかし、俺の予想通り空中でカットされた。
 その後もクロスやロングフィードなんかはことごとく空中でカットされた。
 前半同様、後半もお互い点が入らないまま時間が過ぎていった。
 しかし残り五分あたりで試合が動いた。
 相手チームがうまくパスを回してペナルティエリアでボールを持った。
 すぐさま強烈なシュートを放つ。
 アレッサンドラがブロックしようと足を伸ばしたが、少しだけ当たった。
 勢いはほぼそのままにコースだけが少し変わってしまった。
 とっさにフランが横っ飛び。
 懸命に足を伸ばすが届かない。
 決まったか?と思ったが、雫がギリギリボールを弾いた。
 しかし、弾いたボールが横っ飛びでまだ空中にいたフランの背中に当たり、ゴールの中へと入っていった。
 オウンゴール!
 ええええ、マジかー!
 なんてついてない……。
 しかもこんな時間に……。
 時間的に最後の攻撃になるかもしれない。
 雫とフランとドラゴンの四人が何やら話している。
 最後になるかもしれない攻撃をどう攻めるのか話してるのかな。
 うちのチームのキックオフ。
 フランが前に大きく蹴り出す。
 当然相手はカットしようとジャンプ。
 しかしそれより速くクリスがボールに向かってジャンプ。
 クリスが相手より先にボール触る。
 クリスはそのままダイレクトでボールを蹴る。
 すると今度はレオがジャンプ。
 またしても相手より先にボールに触る。
 そしてまたダイレクトで蹴る。
 マジか、空中でダイレクトでつなぐとかできるのか……。
 身体能力でドラゴンに勝てるわけがなく、相手チームは空中戦で負けてしまう。
 フラン→クリス→レオ→ロナと空中でつなぎ、ロナがそのまま空中でシュートを打った。
 とてもいいコースだったが、相手選手がなんとかブロック。
 しかし想定内だったのか、バハムルがこぼれ球に真っ先に反応してジャンプ、そしてシュート。
 相手キーパーは意表をつかれたが、諦めずになんとか手を伸ばす。
 しかしボールに届かなかった。
 入った!
 そう思った。
 しかしボールはゴールポストに当たり、ゴールに入ることなく前に弾かれた。
 そしてそこで長い笛が鳴った。

 試合が終わった後、そのまま閉会式をした。
 まずは表彰。
 四位は「ダークプリンセス」。
 全員が中二病な魔族のチームだ。
 三位は「代表者コロ・セオ」。
 コロさんのチームだ。
 二位は「ブラックキャットFC」。
 うちのチームだ。
 それぞれに賞金とメダルを渡す。
 その都度、観客席から温かい拍手が送られた。
 そして優勝は「アキナ様に祝福を」。
 こんなチーム名だからなのか、観客からは「アキナ様おめでとう!」という声が相次いだ。
 アキナさんは恥ずかしそうにしている。
 賞金とメダル、そして黒猫杯を渡す。
 アキナさんが照れながらも黒猫杯を両手で掲げた。
 スタジアムは盛大な拍手に包まれた。
 最後、主催者として俺の挨拶で締めくくる。
「無事、第一回黒猫杯を成功で終わることができました。
 ご協力頂いた方々、そしてケモッセオの街に感謝致します。
 本当にありがとうございました」
 拍手が降り注いだ。
 観客のみなさんもサッカーを楽しめたようだ。
 ガイアにサッカーを。
 最初の一歩としては十分な成果だと思う。
 いつかガイアでワールドカップが行われるその日まで、気長に頑張ろう。
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