異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第四章 海産物を求めて

住人が一人増えるようです

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 フランの前世が日本人だったとわかって数日。
 フランは今までのようにゴロゴロできなくなっていた。
 澪や雫と一緒に家のあれこれをやるようになったのだ。
 いや、やらされていると言ったほうが正しいかな。
「日本人だったんならわかるでしょ?
 これからはいろいろ手伝ってもらうからね!」
 と、澪は言った。
「いや……、ちょっと待てし。
 前世の記憶があるっつっても、何もかも覚えてるわけじゃないし。
 それにガイアで天使として十七年生きてきたってのもあるから、そんな純日本人のような扱いされると困るし。
 いや、ほんとマジで!」
「はいはい!
 じゃあ少しずつ思い出していこう!」
「ひーっ!」
 こうして、我が家でゴロゴロするだけのニートが一人減った。
 できればもう一人のニートもなんとかしたいところだけど、その方法を思いつけない。
 今はただ様子を見つつ、チャンスを見逃さないようにするだけだ。
 まぁ、アスモは約五百年間封印されてたわけだから、強く言いにくいんだけどね。

 俺は薫子さんとバハムルと一緒に畑で土いじりをした後、一人でセーフティエリアを出た。
 ミスリルで作ったかなり大きめのリアカーを引っ張りながら。
 森にはいろんな鉱石があるが、リアカーを作るならミスリルが一番かなと思って、アルフレートにミスリルでリアカーを作ってもらった。
 このリアカーには狩りで獲った獲物を乗せるので、頑丈さが求められる。
 森にある鉱石は、ミスリルやらオリハルコンやら、はたまたアダマンタイトやらヒヒイロカネなんかがあるが、どれを使っても当然頑丈なものができる。
 ミスリルが一番と思った理由は色だ。
 ミスリルは銀色をしている。
 ちなみにオリハルコンは金色でアダマンタイトはダイヤモンドみたいな感じ、ヒヒイロカネは赤だ。
 ミスリル以外はどれもリアカーっぽくない色だと思う。
 金属の価値としては、この中ではミスリルが一番低いらしいしちょうどいいんじゃないかな。
 しかし、アルフレートにミスリルでリアカーを作ってもらうよう言った時、「こいつマジか?」みたいな顔をされた。
 いや、わかるよ?
 俺もそこまで馬鹿じゃない。
 言いたいことはよーくわかる。
 ミスリルでリアカーを作るなんて信じらんねー!ってことだよね?
 でも理由はわからないけど、龍の巣の森には鉄とか銅とかそういう普通の鉱石がほとんどない。
 この森限定で言えば、鉄や銅なんかは激レアなのだ。
 ミスリル製のリアカーには俺用にロープが括り付けてあり、俺はロープを咥えて引っ張れるようになっている。
 ただ……。
「あー、もう!
 いつものことだけど、森でリアカーは曳きにくい!」
 誰に言うわけでもなく、ただ叫ぶ。
 狩りのたびにこれはかなり面倒なんだよなぁ。
 リアカーが通れるぐらいの幅の簡易的な道でも作った方が良さそうだなぁ。
 家から四方向に四本の道があれば、けっこう便利になるんじゃないかな。
 あ、あとバハムートさん家までの道もあるといいなぁ。
 まぁ、それはともかく。
 リアカー持参で狩りに来てるわけだ。
 お目当ては牛肉。
 レッドブルあたりがすぐに見つかってくれれば良いんだけど、贅沢は言わない。
 牛型であればなんでもいいです。
 森の中を牛を探して歩き回る中、俺は気づけば魚のことを考えていた。
 やっぱり海の幸、食べたいなぁ……。
 マグロ食べたい、ブリ食べたい、鯛食べたい、平目食べたい。
 魚だけじゃなく、エビ食べたい、カニ食べたい、ホタテ食べたい、イカ食べたい、タコ食べたい……。
 カツオがあれば鰹節も作れるかもしれないし、昆布があれば昆布だしにもなる。
 うーん……。
 やっぱり海の幸は必須だよ!
 しかしな~……、海遠いな~……。
 おっと、黒い牛発見。
「よいしょっと」
 ボカッ!
 俺は猫パンチで黒い牛を気絶させると、リアカーに放り投げた。
 ミスリル製なので、大きな獲物を投げ入れても壊れるどころか歪みもしない。
 あとニ~三匹確保しておきたいので、まだ森の中を探す。
 俺たちは世界樹の家から引っ越す気は一切ない。
 だから絶対的な問題は距離ということになる。
 飛行機や船、車や電車などがないので、輸送手段は人の足か馬になる。
 その場合ひとつの例として、ニーゲン王国の沿岸部にある王都から世界樹までは少なく見積もっても二ヶ月はかかる。
 それ以前に、ガイアの民で龍の巣を突っ切って世界樹まで辿り着ける者が基本的にいない。
 なので、海産物を取り寄せるにしても龍の巣の最寄りの街や村に取りに行かなくてはならない。
 まぁ、これくらいは全然いいんだけど。
 仮にそうした場合、取引先は往復四ヶ月かけて海産物を運ぶことになる。
 四ヶ月もかけて海産物の売上のみだと大損もいいとこだろう。
 こちらもそれなりの額を支払わなければ成立しない。
 お金に関しては龍の巣の素材を売れば問題ないと言えばないが、無駄遣いは良くない。
 資源だって有限なはずだし。
 それでなくても、サッカー大会で馬鹿みたいにお金を使っちゃったから、当分の間は自重しなきゃだめだ。
 あくまで現実的な範囲で……っと、黒い牛発見。
 だけどサイズ的に仔牛かな。
 スルーする。
 うーん、思いつかないなぁ。
 そもそも俺、あんまり頭良くないんだよな(頭悪いとは言わない)。
 小学校の高学年の頃にはすでに入院生活だったし。
 入院中はネット三昧だったから知識は偏ってて微妙だし。
 はぁ……、鉄火丼食べたいな……。
 まぁ、俺がちょっと考えたぐらいで妙案が思い浮かぶようなら、すでにガイアの人が思いついて実践してるよなぁ。
 現状では無理ってことなんだろうか。
 うーん。
 そんな感じで考えながら狩りをしたので、気がつけば夜になっていた。
 やっべ、一応無事でこれから帰るって伝えなきゃ……。
 あっれー、携帯(通信の魔法具のことを俺たちはそう呼んでいる)忘れた!
 やばいやばい、急いで帰らなきゃ!
 というわけで帰った。
 そして今家の前にいる。
 ちょっと怖くて玄関のドアを開けられない。
 なんていうか、子供の頃門限を破った時みたいな感じだ。
 まぁ、いつまでもこうしてても意味はない。
 入ろう。
「た、ただいま~……」
 誰にも聞こえないように小声で言いながら家に入っていった。
 家の中に入ると、なんだか少し慌ただしい気配を感じた。
 嫌な予感がするけど逃げるわけにもいかない。
 覚悟を決めて素直に怒られようと、リビングに入ろうとしたその時。
「あ!いたっす!
 みんな!ジズーさんいたっすよ!」
 ちょうど家に入ってきたレオが俺を見て叫んだ。
 ドタバタドタバタ!
 何人かが走る足音が聞こえた。
 俺は冷や汗が止まらない。
「ジズー!こんな遅くまでどこ行ってたし!」
 フランが半泣きでかけよってきた。
「ご、ごめん……。
 考え事しながら狩りしてたら気づいたら夜でした……」
「日が暮れるのも気づかないような状態で森を歩き回るなんて危ないっしょ!
 怪我は!?怪我はないし!?」
「う、うん。
 大丈夫です……」
「はぁ……、よかったしー……」
「……」
 フランは猫が大好きだったようで、先日前世の記憶持ちだとバレてからというもの、猫好きを全く隠さなくなった。
 おかげで以前までと違って、フランは俺に対して過保護MAXになった。
「あ、ジズーちゃん無事だったのね~。
 携帯置いていってるから心配したよ~」
「こういう時に限って薫子もいないからね。
 余計に何かあったのかって思っちゃったりしたよ」
 澪と雫、他のメンバーも合流してきた。
 薫子さんはガイアの管理のお仕事で今日は朝からいなかった。
「ジズー。
 暗くなる前におうちに帰らなきゃダメ。
 みんな、心配する」
 あーちゃんにも注意された。
 なんか、心にくるものがあるな。
「みんな心配かけてごめんね。
 以後気をつけます」
 考え事の内容が海の幸食いてーだから尚の事申し訳ない……。
 本当に申し訳なく思っております。
 だからフラン、そろそろ離してもらいたいんだけどなぁ……。
「あの、フラン?
 いつまでも抱き抱えられてるのは、なんというかその……」
「心配かけた罰だし。
 今日は大人しく抱っこされるし」
「はい……」
 最近、フランの猫愛が重いです……。
「ジズーさんも無事に戻ってきたことですし、ちょっと私たちからみなさんにご報告があります」
 ミッシェルが何やら改まった感じで言った。
 横にはアルフレートがそっと寄り添った。
 え、なに。
 もしかしてお世話になりました的な流れだったりする?
 ええぇぇ!?どうしよう!
「実はあの……、数日前にもしかしてって思うことがあって、それで調べてみて今日わかったんですけど……。
 私、赤ちゃんができたみたいなんです」
 あ、よかった。
 出ていくって話じゃないのね。
 って、んん!?
 あかちゃん?アカチャン?あか……赤ちゃん!?
「「「「赤ちゃんっ!?」」」」
 全員がハモった。
「はい、嬉しいことに妊娠したみたいなんです。
 それで、これからご迷惑お掛けすることがでてくると思いますが、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
 ミッシェルとアルフレートが頭を下げた。
 いやいやいや!
 なんで頭下げるの!
 良いことじゃん!すっごい良いことじゃん!!
「そんな頭下げたりしないで!
 おめでとう二人とも!
 何ができるかわかんないけど、俺にできることはなんでも協力するから!」
「そうだよ~!
 おめでと~!
 嬉しいニュースだね~!」
「おめでとうミッシェル、アルフレート。
 私もこれから全力でサポートするね」
「赤ちゃんなのだ!?
 すごいのだ!
 楽しみなのだ!」
「うん、赤ちゃん楽しみ」
 みんな大喜び。
 後から薫子さんも帰ってきて、薫子さんもびっくりした後大喜び。
 みんなテンション上がっちゃって、その日は遅くまでみんなで騒いだのだった。
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