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初めてのデート 4

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 ルル様が口走った言葉に耳を疑った……!
 ガイ様は『てへぺろ』がお嫌いなのに、私がしていたと知ったら嫌われてしまうかもしれないもの! 咄嗟にルル様との距離をぐっと詰めると、自分の人差し指をルル様の唇にとんっと置いたの。

「……てへぺろは内緒にして下さいね?」

 お願いの意味を込めて、首を少し傾けながら小さな声で囁くと、ルル様がこくこくと首を小刻みに縦に振ってくれたの……ああ、良かったわ! 人差し指をそっと離したの。

「あの、アリーシア妖精さ……っ?」

 あれあれ……? 確かルル様は正気に戻られたのよね……? どうして私の事を妖精と呼ぼうとしているのか分からず、混乱した私は慌ててもう一度自分の人差し指をルル様の唇に押し付けた。「あの、私の事は名前で呼んで頂けるかしら……?」と戸惑いながらも伝えると、大きな瞳をこれ以上ないくらいに大きく見開き頷いたので、今度こそ大丈夫そうね……と指を離したの。

「アリー様と呼ばせて頂きますっ……! アリー様が私の作ったイヤリングを着けて下さって感激です!」

 ルル様は大きな瞳を輝かせて笑うので、私もそっとイヤリングに触れ「とても素敵で気に入っています」と伝えたの。ルル様は水色の髪と金色の瞳に変わっていたけれど、華やかな愛らしさはそのままで頬を桃色に染め、ふわりと花が綻ぶ様に笑う姿は同性でも見惚れてしまった。

 頭を優しく撫でる温かな感触に気付き、視線を向けるとガイ様が穏やかな声で「知り合いか?」と聞かれたの。「同じクラスのルル様です」と答えると、ガイ様の視線がルル様に向けられた。

「……っ……!」

 私もルル様に視線を向けると、ルル様がガイ様を見つめて固まっていた…………!

 私は眩暈がしたみたいに足元が揺れた。心臓に棘が刺さったみたいにちくちくする。ルル様がガイ様を見つめるのは仕方ないと思うの……誰が見ても素敵なガイ様に見惚れるなと言う方が無茶だもの。それにガイ様は私の婚約者だし、今はガイ様に好きだと言って頂いているし……大丈夫だと頭で分かっていても、後ろのガイ様の表情を見る勇気が湧かない……愛らしいルル様に見つめられて嫌だと思う男性も居ないとも思ってしまう。
 私が深呼吸を繰り返し始めると、心配そうな声で「大丈夫か?」と言い、大きな手が優しく背中をさする。温かな手のひらから伝わる熱に体が熱くなる。

「あの、ルル様……取っちゃ駄目です……!」

「……アリー様……?」

「ガイ様は凄く凄く素敵で見惚れるのも仕方ないのですけれど、ガイ様はアリーの大好きな方で、アリーの恋人で、アリーの婚約者なので、取っちゃ駄目です! もしルル様がガイ様を好きになっても絶対に絶対に譲りません……!」

 息継ぎも忘れて一気に言い終えた。
 完全な沈黙が私とルル様に訪れた……やってしまったわ…………!
 ルル様はガイ様を見ただけなのに、嫉妬をぶつけてしまった。自分の身勝手さに呆れてしまう。

「ルル様、ごめんなさい……ルル様が可愛らしくて、ガイ様を取られてしまうと思ってしまって……」

 先ほどの勢いは完全に萎み、ルル様に謝ると首を横に振り「い、いえ……」と言い始めた処にガイ様の声が重なった。

「ああ……もう……ゔうっ……!」

 呻き声みたいな声に思わず振り向くと、ガイ様が地面にしゃがみ込み顔面と胸元を押さえ、呻き声を上げていた。

「ガ、ガイ様! 大丈夫ですか? お身体の具合が悪いのですかっ?」

「し、死にそうだ……」

 ど、どうしよう……? ガイ様が死んでしまったら……と想像するだけで、自分の血の気が一気に引くのが分かった。青褪めた顔でガイ様の背中をさすりながら回復薬ポーションの販売されている場所や治癒者ヒーラーや我が家まで運んだ方が早いかを必死に脳内で考えて行く……

「あー、これは、そういう死ぬじゃなくて、君が可愛くて悶えているだけから大丈夫だと思うよ?」

 屋台のお兄さん、いや、ルル様のお兄様が笑いながら言うのだけれど、なにそれ? そんな冗談は今は笑えない! きっと睨むように見上げると、「いやいや、冗談じゃないからね?」と益々揶揄うように笑われてしまった。

「あんな可愛い焼きもちを焼かれて、悶えない男はいないと思うよ? あとね、妹の弁解をさせて貰うと、見惚れていた訳じゃなくて、睨まれて固まった……が正しいかな。ね、ルルア?」

 ルル様の本当のお名前はルルア様と言うのかと頭の片隅で思いながらルルア様に視線を向けると、「そっそうです……! アリー様の焼きもち、可愛すぎて……眼福でした! ご馳走さまでした!」

「そうだよな! 美少女がぷるぷる震えながら焼きもち焼きつつ告白する姿はさ、一生懸命がひしひしと伝わってきて尊いの極みだったよな……!」

 一体これは何が始まったのだろう……?
 私を話題にしてたちまち意気投合したルルア様とルルア様のお兄様の止まらないやり取りに、私は目が点になってしまう。

「……お前達は見るな! アリーが減る……!」

 耳まで真っ赤に染まったガイ様の声が聞こえたのは、すぐ後だったわ——
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