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五章:おかしの国のハイ・ジャック(後編)

第13話 10月27日(1)

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( ˘ω˘ )



「おお、なんということでしょう」

 兵士が呟いた。メニーの足に合ったガラスの靴を見て、目を丸くした。

「君だったんだね」

 リオンが跪いて、メニーの手を取った。

「君こそ僕の運命の人だ。さあ、一緒に行こう」

 メニーが微笑んで頷いた。ママが呆然としている。アメリも足を押さえて呆然とした。あたしは、どんな顔をしているか分からない。
 ただ、その瞬間、世界が絶望に崩れた気がした。

 何もかもが壊れた気がした。

 リオン様が愛おしそうにメニーを見つめている。メニーがリオン様から視線をずらした。あたしを見た。メニーが立ち上がった。リオン様の手をほどいた。

「テリー」

 メニーがあたしに駆け寄った。

「テリーも一緒に行こう」

 メニーがあたしの手を握った。

「テリー、私と一緒に」

 あたしはその手を払った。

「……テリー?」

 あたしはメニーの背中を押した。

「テリー?」

 振り向こうとするメニーを押さえて、背中を押した。

「テリー」
「行って」
「テリー」
「行って!」
「テリー」
「あんたの顔なんか見たくない!」

 あたしは叫んだ。

「早く行って!」

 メニーが振り向く。

「テリー」
「行きなさい!」

 あたしはメニーの背中を押した。

「振り向かずに、行って!!」

 あたしはメニーの背中を突き飛ばした。リオン様がメニーを抱きとめた。

「行って!」

 あたしは叫んだ。

「早く行きなさい!!」
「……無理だ。今は行こう」
「あ」

 リオン様がメニーに何かを耳打ちして、手を握る。このいかれた屋敷からメニーを連れていく。

「待って」

 メニーがあたしに手を伸ばす。

「テリー」

 メニーがあたしに手を伸ばす。

「待って、テリーが」

 メニーが光の中に引きずられる。

「テリーが残ってる」

 扉が閉められていく。

「テリー」

 メニーの目があたしを見つめる。あたしはメニーを見つめる。

「テリー」

 扉が閉まった。
 屋敷が闇に包まれる。

 その瞬間、ママの悲鳴が聞こえた。アメリの悲鳴が聞こえた。人々の怒号が聞こえた。

「ベックス家はプリンセスを虐めた最低な一族だ!」
「ベックス家の血は汚れている!」
「ベックス家を許すな!」

 一人残されたあたしは手首を縛られる。ママとアメリは既に死んだ。人々はあたしに石を投げる。

「テリー!!」
「悪魔の女め!!」
「ざまあみろ!!」
「地獄に落ちろ!!」
「最低な人間め!!」

 あたしは進む。ギロチンに向かって歩いていく。

「テリー・ベックスの罪を忘れるな!」
「テリー・ベックスの罪を忘れるな!」
「テリー・ベックスの罪を忘れるな!」
「テリー・ベックスの罪を忘れるな!」
「テリー・ベックスの罪を忘れるな!」

 人々は口々に叫ぶ。人々は口々にあたしを嫌う。

「これで全て終わる」

 リオン様は呟く。

「悪は滅びるのだ」

 リオン様はあたしを死ぬ瞬間を眺める。
 メニー様はあたしが死ぬ瞬間を見つめる。

 あたしは死ぬ。
 ギロチンで、首を落とされる。
 罪人のあたしは殺される。
 あたしという悪は滅びる。
 太鼓が鳴る。

 ドコドコドコドコドコドコドコドコドコ。

 ああ、そろそろお別れだ。

 あたしはギロチンに固定される。
 首が固定される。メニーとリオン様がよく見える。空は透き通る青空。

 ドコドコドコドコドコドコドコドコドコ。

 太鼓が鳴る。刃が落ちる。しゅっと音が聞こえた。
 あたしの首が呆気なく落とされた。

 首がころころ転がる。


(*'ω'*)


 あたしは目を開けた。
 すると首と体がついていて、あたしは生きていた。
 あたしは椅子に固定されていた。
 リオン様は呟く。

「悪は滅びるのだ」

 人々が一斉にあたしに石を投げた。あたしの体に痛みが貫いた。血が飛び散り、悲鳴をあげる。しかし石は投げられる。どんなに悲鳴をあげても投げられる。あたしの体が凹んだ。血だらけになった。


(*'ω'*)


 あたしは目を開けた。
 するとあたしは無傷で生きていた。
 壁に固定されていた。
 リオン様は呟く。

「悪は滅びるのだ」

 人々があたしに包丁を突き刺した。あたしの内臓達に刃が突き刺さる。それを抜けば血が溢れる。また刺す。血が飛び散る。悲鳴をあげる。人々が笑った。また刺す。血が飛び散る。あたしの体が血だらけになる。穴から血が出て、赤に染まり、あたしは脱力した。


(*'ω'*)


 あたしは目を開けた。
 刺された穴はなく、あたしは生きていた。
 女性の顔の棺桶に固定されていた。
 リオン様は呟く。

「悪は滅びるのだ」

 棺桶が蓋をされる。棺桶に刺さっていた針が、あたしの体を突き刺す。あたしは悲鳴をあげる。ぶつぶつと突き刺される。目にも、頭にも、胸にも、お腹にも、足にも、ぶつぶつ刺さる。棺桶が血の湖になる。


(*'ω'*)


 あたしは目を開けた。刺された。
 あたしは目を開けた。石が当たる。
 あたしは目を開けた。首が切られた。
 あたしは目を開けた。ばらばらに引き裂かれた。


(*'ω'*)


 あたしは死に続ける。あたしは殺され続ける。あたしは傷つけられ続ける。あたしが絶望に染まれば染まるほど、あたしが恐怖に染まれば染まるほど、あたしが悲鳴をあげればあげるほど、リオン様が笑った。リオン様が喜んだ。
 あたしの体が跳ねる。刺さる。あたしの体が跳ねる。抜かれる。あたしの体が跳ねる。ぐちゃぐちゃにされる。あたしが恐怖する。叫ぶ。悲鳴をあげる。リオン様を怖がる。怯える。リオン様は喜ぶ。それを喜ぶ。恐怖するあたしの顔が見たいというように喜ぶ。あたしは死刑になる。太鼓が鳴る。太鼓が鳴る。太鼓が鳴る。

 ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコ。





「ストップ」



 時が止まった。



「ニコラ、しっかりしろ」

 レオが血だらけで倒れるあたしを見下ろした。

「それでも僕の妹か?」

 レオがあたしの手を握った。

「まだ隠れんぼは終わってない」

 レオの手があたしの血で染まる。

「ほら、探して」

 レオはあたしを見つめる。

「ジャックはどこにいるんだ?」

 レオはあたしを見つめる。

「君はもう分かってる」

 あたしはレオを見つめる。

「ニコラ」

 レオが微笑んだ。

「今夜も夢で会おう」

 レオがあたしの手を離した瞬間、あたしの首が切り裂かれた。ころんと、地面に転がる。頭がころころ転がった。

 レオが頭を拾い、胸に、優しく抱きしめた。

 赤と黒の世界に、あたしの頭を抱きしめたレオが、一人、座り込んでいた。









( ˘ω˘ )

(*'ω'*)





 鳥の鳴き声が聞こえた。あたしは目を開けた。部屋は薄暗い。水の音が聞こえる。今日も雨らしい。
 メニーが目の前にいる。メニーが安らかに眠っている。あたしはもう一度瞼を下ろした。

(……なんかだるい)

 人の話す声が聞こえる。

(ん?)

 人の声が聞こえる。

(幻聴?)

 あたしはもう一度瞼を上げた。メニーの体が動いた。

「……ん」

 メニーが眉をひそめて唸った。瞼が上がった。綺麗な青い目が見える。今日もきらきら光っている。美しく、純粋に、綺麗に、光っている。青い瞳。青い宝石のように、美しく光る、メニーの瞳。
 メニーがあたしを見た。目が大きく見開かれた。

(ああ、起きた)

 おはよう、と言う前に、メニーが息を大きく吸って、


 悲鳴をあげた。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

(え?)

「お姉ちゃん! どうしたの!?」

(え?)

 メニーが慌てて起き上がる。メニーの寝巻の一部に、赤いペンキのようなものがついていた。

「メニー……?」
「動かないで! お姉ちゃん!!」

 メニーが顔を青くさせて、あたしを跨る。急いでベッドから抜ける。驚いて飛び起きたドロシーがあたしを呆然と見ている。

「え?」
「わ、私! タオル持ってくるから、お姉ちゃん! 絶対に動かないで!」
「え?」

 メニーが走り出す。ドロシーが目を丸くさせてあたしを見ている。メニーが忙しなく扉を開ける。扉を開けると、その先に赤い目の少女が立っていた。

「ひゃっ」

 メニーが驚きの声をあげた瞬間、少女も声をあげた。

「テリーに何かあったの!!!? テリー!!! もうだいじょ……」

 あたしを見て、リトルルビィがはっと息を吸って、悲鳴をあげた。

「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!」
「え」

 リトルルビィが白目を剥いて倒れた。

「え」
「リトルルビィ!!」

 メニーが意識が無くなったリトルルビィを抱き抱えた。

「ああ、どうしよう! リトルルビィが!! ルビィが!!」
「ちょっと大丈夫?」

 あたしが起き上がると、メニーがあたしを睨み、思いきり怒鳴った。

「動かないで!!!!!!」
「え」
「動いたら怒るから!!!!!」
「え」
「うううう……!」

 メニーの瞳がうるりと光った。

「ふえええええええええええん!!」

 堪え切れなくなったメニーがリトルルビィに顔を埋めて、泣きだした。あたしは戸惑うばかり。

「え、どうし……え?」
「ええええええええええええん!! ふええええええええええん!!」
「……メニー?」
「どうしたの? ……なんでメニーがいるの?」

 美しい金髪の女が、ひょいと、あたしの部屋を覗いてきた。

「あ」

 ソフィア。

「……」

 ソフィアが黙る。あたしを見て黙る。伸びたリトルルビィを跨り、部屋に入り、あたしに近づく。ベッドの前に跪き、あたしの顔を覗いた。

「……テリー、ジャックに何されたの?」
「何って」

 あたしは頭を押さえる。べちゃり、という感覚に、そこでようやく違和感に気付いた。

「え」

 手を見る。血だらけ。

「え」

 体を見る。血だらけ。

「え」

 足を見る。血だらけ。

「え」

 ベッドを見る。血だらけ。

「……」

 メニーの寝巻を見る。血のペンキじゃない。血だ。

 あたしの血だ。

「……何これ」
「くすす。生理にしては大出血だね」
「ちょっと、メニーはともかく、なんで吸血鬼が血を見て気絶するのよ。おかしいんじゃないの?」
「テリー、あの子達はまだ12歳だよ。部屋に入ったら君が血だらけで寝ているなんて、結構トラウマじゃない?」
「ふえええええん! ぐすっ! えええええええん!!」
「ほらほら、メニーも泣かないの」

 ソフィアが立ち上がり、メニーの元へ行き、頭を撫でる。

「誰か」

 ソフィアがリトルルビィを跨り、廊下に声をあげる。

「濡れたタオルを。テリーが大変だ」

 軽い口調で言うと、階段を上ってくる音が聞こえる。すぐに声が発せられた。

「どうした」
「くすす。見ます? まるでホラー小説のワンシーンです」
「何? テリーがどうしたの?」

 キッドが部屋を覗いた。血だらけのあたしを見た。

「うわっ」

 キッドが、びぐっ、と顔を引き攣らせて、一歩引いた。

「これは酷い。テリー、シャワー入っておいで。お前、それは駄目だよ。母さんの参加する舞台もここまで汚い演出はしない。体を血だらけにするならもっと綺麗に見せるべきだ。お前のは汚らしくて生々しい」
「……本当に失礼な奴ね……。起きたらこうなってたのよ……」

 唸るように言って、ベッドから抜ける。歩き出して、リトルルビィを跨る。部屋から出ると、キッドがバスタオルを頭から被せてきた。

「おいで」
「一人で歩ける」
「いいから」

 バスタオルをかぶせたまま、キッドがあたしの肩を抱えて一緒に歩き出す。耳元にキッドが口を近づけさせた。

「おはよう。痛いところはない?」
「痛いところだらけよ。5日間連続で悪夢を見るし、あんたは街から街へオンパレードだし、じいじはあんたに付き添って帰ってこないし、悪夢を見ると分かってるのに夜は一人ぼっち。あたしの繊細な心はぼろぼろに傷ついたわ。首も心も痛くて仕方ない」
「くくっ。寂しかった?」
「リオン」
「ん?」
「リオンよ」

 あたしはキッドを見た。キッドがあたしを見た。目が合う。

「リオンよ」

 キッドの足が止まる。あたしの足が止まる。キッドが黙る。あたしは黙る。キッドがあたしを見つめる。あたしはキッドを見つめる。キッドが瞬きした。あたしが瞬きした。キッドが息を吸った。あたしは息を吐いた。キッドが盛大に息を吐いた。

「……お婆様からのお告げかな?」
「あいつ、どこにいるの」
「どこだろうね?」
「どこの病院?」

 キッドがにやけた。

「……お前、どうやって調べた?」
「あたしを誰だと思ってるの。テリー・ベックス様よ」
「はっはっはっはっ! こいつはすごい!」

 あたしの肩をぽんぽんと叩く。

「シャワーから上がったら、作戦会議といこうか」
「あたしも参加するの?」
「当然だよ。いつも通りお前も同行」
「……またあたしを餌にするつもり?」
「さあ?」

 くくっ。

「中毒者の行動次第かな?」

 階段を下りると、一階のリビングでぎゅうぎゅうにキッドの部下の兵士達が詰め込まれて集まっていた。あたしの姿を見て一斉に悲鳴をあげる。

「ぎゃあああああああああ!!」
「テリー様! 一体何が!」
「ひいいいいいいい!!」
「駄目! 俺、ホラー駄目なんだ!!」
「テリー様が通られるぞ! 道を開けろ!!」

 兵士達が血だらけのあたしから一斉に離れた。

(それでも兵士か!! てめえら!!)

「テリーや」

 顔を上げるとじいじが立っていた。あたしに歩み寄り、血だらけのあたしの頬に触れた。

「大丈夫かい?」
「ええ」
「シャワーに入っておいで。着替えは用意しておこう」
「お願いしていい?」
「ああ」
「ありがとう」
「行っておいで」

 じいじが優しくあたしを促す。あたしの肩からキッドの手が離れた。あたしの頬からじいじの手が離れた。兵士達が顔を青ざめて体を震わせている。階段からは、廊下で泣きわめくメニーをあやすソフィアの声が聞こえてくる。

(……一気にうるさくなった)

 だけど、

(……別に悪い気はしない)

 あたしは脱衣室の扉を閉めた。



(*'ω'*)



 シャワーから上がってあたしは席に着く。兵士たちは立っている。ソフィアも立っている。リトルルビィはソファーで伸びている。ビリーはリトルルビィに団扇を仰いでいる。メニーもドロシーを抱えてあたしの隣の席に座った。
 ホワイトボードをキッドが叩く。

「これより! 決定版! ジャックを倒す作戦を説明する!」

 メニーがドロシーの手を使って拍手をした。キッドが腕を組む。

「皆も知っての通り、ここ数日、ジャックというお化けが国民を困らせている。しかし、その犯人を俺の愛しのテリーが見つけてくれた。というわけで、ただいまより、現場に乗り込む」

 乗り込んだら、

「多分あいつは夢を見せてくるだろう。悪夢だ。実態はジャックじゃない。ジャックはきっと夢の中にいる。だから、夢の中で俺達に襲い掛かるだろう」

 皆にやってもらいたいことは一つ。

「何があっても、それは夢だと忘れないように」

 悪夢は所詮怖い夢。現実じゃない。

「つまり、夢で殺されても死ぬことはない」

 思う存分、ジャックと戦うといい。

「ジャックが怖い者は発想の転換をしてほしい。怖い夢を見せてきたらそれを面白く発想転換するんだ」

 例えば、

「俺が魔王になって皆に襲い掛かる夢を見せられたら、どうする? ソフィア」
「では、私は神になりましょう。魔王ならば、神には勝てない」
「そうそう。そういうこと」

 怖いものには怖いもので返すんだ。

「いいか。夢だ。全部夢だ。刺されたって何されたって、痛くないのが夢だ。いいか。これから乗り込むぞ。ソフィアの時だって幻覚の戦いだったんだ。覚悟はいいな」

 兵士達が頷いた。

「よし、決まったところで」

 キッドがテーブルに手を置き、メニーに微笑んだ。

「メニーも一緒に来てくれる?」
「え」

 メニーがドロシーを強く抱きしめた。あたしはメニーの前に腕を置き、キッドを睨んだ。

「ねえ、メニーは関係ないでしょ。それに、この子は事件のことを何も知らない」
「お守り代わりだよ。俺も悪夢は怖いんだ」
「お守り代わりって何よ」
「お守りはお守りさ」
「メニーがお守りってこと?」
「そうだよ」

 キッドはいやらしく微笑む。

「すごく強いお守りだ」

 ね?

「メニー、俺の代わりにテリーを守ってくれる?」

 メニーがキッドを見つめる。キッドとメニーが見つめ合う。闇に近い青い瞳と、光に近い青い瞳が重なり合う。メニーが瞬きをして、ゆっくりと頷いた。

「……ついていけば、いいんですよね?」
「そうだよ。メニーは何もしなくていいんだ。ただ、ついてきてくれるだけで」
「……分かりました。それなら」

 メニーがあたしの手を握る。

「行きます」
「そう。良かった」
「……あの、ドロシーもいいですか?」
「……ん?」

 キッドがメニーの腕の中にいるドロシーを見る。ドロシーがキッドをじっと見つめた。キッドが微笑んだ。

「可愛い猫だね。メニーの妹? 弟?」
「妹です」
「いいよ。その子も一緒に」

 キッドがあたしの手を握る。

「よし、メンバーは揃った。テリー、行こう」
「場所、分かるのね?」
「分かるよ」

 キッドが頷く。

「何度か顔を出したから、分かるよ。あいつのいる場所なら」

 キッドが微笑む。

「会いに行こう。この悪夢を終わらせないと」

 あたしは立ち上がる。メニーも立ち上がる。ドロシーがメニーの腕の中で鳴いた。

(レオ)

 見つけに行くわ。

(隠れんぼを終わらせましょう)

 ビリーがリトルルビィの肩を叩いた。

「ルビィや、出かけるぞ」
「はっ!!! テリー!!」

 リトルルビィの瞼が、ようやく開けられた。

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