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ヒスの森ダンジョン
第427話 ヒスの森 その9
しおりを挟むチアキさんの近くにいた人達もテーブルに戻ってきたところで、白雪さんが【ホーリーシールド】と、その上に【アイスシールド】を張った。まさかの二重盾!
「天で震える星々よ、我が意志となりて地を穿て、焔の雨を降らせ敵を絶望させよ【メテオ】」
おぉ! 今日イチの厨二呪文!
そしてやっぱりあの考察されていた【フレイムバレット】の元となった魔法は【メテオ】だったんだね! 何処からともなく火球が降り注ぐ様は、さながら流星群。流れ星を見慣れていない人からすれば想像は難しいだろう。うん、ここから【フレイムバレット】が出来たなら上等じゃない?
十秒間くらい降り注いだ火球によって盾の外にあった土人形二体はボロボロです。
「メテオは元々空から降る魔法だったからか、槍の時のような威力減退は感じなかったな。ヴィオありがとう、解除してくれていいぞ」
解析が終了したようです。
私としてもトラウマになっていた水の盾を検証させてもらえたことは非常にありがたかったです。
「あ、チアキさんもう一度だけ実験してみてもいいですか? あの時もそうでしたが、足元に盾を張っていなかったから駄目だったのかもしれないので、全部を包んでも魔法が行使できるか試してもらえませんか?」
「其方らまだやるのか?」
「ヴィオ様、魔力は大丈夫ですか?」
「おお、それは面白そうだな、やってみよう。白雪、もう少しだけやらせてくれ、ヴィオの心の傷を治すにも、これは必要な事だと思うぞ」
チアキさんは気付いていたんですね。白雪さんも納得したようで頷いてくれました。我儘を言ってすみません、ありがとうございます。
土人形はタニアさんが複数体作ってくれましたので、さっきと同じ魔法で攻撃する予定の様です。
「では行きますね、足元もべた付きますので動けなくなると思います【ウォーターウォール】」
いつもは敵の周辺だけを包んでいた壁だけど、今度は足元も包み込む。足があるからどうかと思ったけど、全く邪魔されることなく、砂浜で波が足を包み込むように、踝くらいまでお水で足が埋まっている感じに見える。
「チアキさん足は動きますか? まずは片足だけ動かしてもらって、反対はそのまま地に着けておいてください」
「成程、やりたいことは分かった。
おお、浮かすことは出来たが……、おっと、足を抜いた場所が水で埋まったな。このままこっちの足を着けば離れなくなるんだろうな。こちらはそれでやってみよう」
やりたい事をすぐに理解してくれたらしいチアキさんは、そのまま足を地に下ろす。水の壁だからグニュリと足が埋もれるけれど、そこからもう一度足を上げようとしたら動かない。
「ふむ、だが右足は最初の地に着いているのは分かる。不安定な感じが無いからな。この状態で魔法を行使してみよう」
そう言って【ファイアアロー】と【アースランス】の二種類を発動してくれた。アローは最初と同じで壁の中で消えた。外に出そうと思ってもチアキさんの手から飛び出す形のアローは無理みたい。
ランスはさっきと変わらない感じだったので、メテオも同じだろうという事で試さなかった。
「では両方の足が地から離れた時の実験だな」
「お願します」
楽し気に右足も抜いたチアキさんは、そのまま真っすぐ下ろすことなく、少し考えてから呪文を唱えた。
「燃え盛る壁よ、我が身を包み全ての害を焼き払え【ファイアウォール】」
チアキさんが炎に包まれたので一瞬驚いたけれど、自分で出した魔法に怪我をさせられることは無い事を思い出して静かに見守る。メラメラしていた炎は小さくなり、チアキさんの足元で円盤のような形に変形した。
「攻撃魔法ではないが、この魔法でも壁の中の水が蒸発することもないな。ヴィオの魔力消費はどうだ?」
中からの攻撃に近いんじゃない? だけどあの水の壁は『全てを吸着する』という想定で作っているので炎すら吸着したのだろう、オーク達の打撃の時以上に魔力に変化はない。
チアキさんは右足の下に炎の円盤を置き、その上に足を下ろした。円盤は多少沈んだものの、チアキさんの右足はまだ自由に動かすことが出来ている。
「これで完全にヴィオの壁の中に全身が包まれた訳だな。さて、ではやってみるか。
眠れる地よ牙を剥け、鋭き槍となりて敵を貫け【アースランス】」
アローが不発になることは分かっているので、最初からランスを唱えたチアキさん。だけど外にある土人形はそのまま立っているし、土の槍も出現していない。
「ほぉ、発動したのと同じように魔力は減ったからな、ただ不発だったという事か。魔法がこの壁に吸収されたのか、面白いな。よし! メテオもやってみよう。白雪障壁を頼む」
もうこうなったら、他の皆も興味津々でキラキラしてますよ。白雪さんの二重壁が出来たところでチアキさんがメテオの呪文を唱えたんだけど、やっぱりこれも不発だった。
「成程なるほど、これは面白いぞ。では最後は影魔法が使えるかだな。ヴィオは止めておくか?」
「――いえ、これは乗り越える為の実験なので、お願いします」
あの状態のヒトに影魔法で縛られる。それはあの日の恐怖を思い起こさせる。今だってあの時のあの瞬間が目の前に浮かんでいる、だけどこれは乗り越えないと、これから先何度でも思い出して動けなくなる。
カタカタと震える身体、震えを自分で止めることは出来ないけれど、しっかり顔をあげてチアキさんにお願いすれば、一つ頷いてくれた。
白雪さんが壁を解除し、私はテーブルから少し離れた場所に立つ。
「影を生み出す闇よ、敵の動きを拘束せよ【シャドーバインド】」
チアキさんの呪文を聞いた瞬間、思わず目を閉じてしまったけど直ぐに目を開けて確認する。自分の身体に絡みつく黒い影はない。足元からフワフワと出てくる触手もない。
顔をあげて前を見れば、困ったように両手を上げたチアキさんの姿が。
「全然駄目だな。影が一番わかりやすい。全く動かせる気がしない。これは足元から全部を覆われたら中にいる奴は身動きも出来ないし、魔法の行使も不可、完全に積むな」
成程、それはかなり危険な魔法を創り出してしまったという事ですね?
「悪い奴らが覚えると厄介ではあるが、果たしてその壁を維持できるだけの魔力を持つ奴がどれだけおるかという事はあるかもしれんがな」
「そうですね、ですから我々はこの魔法を見なかったことにしておきましょう。竜人族、魔人族で使える者が出てしまっては、他種族の者には抵抗できないでしょうから」
白雪さんとルイスさんの言葉に、同席していた竜人族の大人たちも頷き、よく分かっていなかったベル君も内緒ですという言葉に頷いていた。
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