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魔道具製作
第449話 お手紙の返信
しおりを挟むリルベルッティ大陸に来て五か月、私は8歳になった。
大陸歴588年よりも長生きしているベニ婆ちゃんは900歳を超えている。
ベニ婆ちゃんのお話は歴史の勉強として続いている。
砂浜のランニングも、朝のストレッチも、拳法とカンフーとマ〇リックスが混ざった組手も続いている。
刺繍の腕も上がり、ウエストポーチ型のマイマジックバッグも完成した。
シンプルな茶色いポーチが寂しくて、お父さんのつもりで茶色いクマさんのアップリケをつけた。それを見た白雪さんの希望があり、白い熊も追加した。並べているので何だか夫婦熊に見えなくもないけど、白雪さんが満足そうだからまあいいだろう。
折角だからと三毛猫のアップリケも追加したら、最近はベル君が羨ましそうにしていて、好きなアップリケを作ってあげると言ったら、水色のドラゴンを希望したので作ってあげた。
自分の持ち物に付けると思っていたのに、「私の鞄につけてほしい」なんて……こんにゃろう、可愛いかよ。
そういう理由で、私のウエストポーチは白熊、茶色熊、三毛猫、水色のドラゴンとなかなか賑やかな感じになった。
「マジックバッグには、寝る前とかに余分な魔力を注いでおけば、容量が増えるからな」
「はい。時間停止は付けれないんですよね?」
「それを付けると後から拡げられないからな。時間停止は空間を固定することで完成する。だから時間停止をするなら最初から容量をできるだけ拡げたもので作ればいいが、それは材料も大量に必要だし、失敗しやすいんだ。ダンジョンで時間停止のマジックバッグを探しに行く方が早いと思うぞ」
なるほどね。私の鞄は所有者固定の魔法陣が刻まれているというけれど、それは後付けで蓋に刻まれた刺繍がその効果を発揮していると言われたんだよね。ということは、この鞄自体はお母さんがダンジョンでゲットしたものだったんだろう。
時間停止はこのお母さんの鞄があるから、こっちの自作鞄は容量をガンガン増やしていくことにしよう。腐らない素材系もそうだし、味を染み込ませたい料理を持ち歩くにも良いだろう。
マジックバッグが完成してすぐ、ギルドに手紙が届いた。
ドゥーア先生に手紙を送って二週間、ウキウキしながら受け取った手紙はお兄ちゃんでも、ドゥーア先生でも、タキさんでも、ザックスギルマスでもなかった。
「どうしたヴィオ、待ってたやつじゃなかったのか?」
私が魔法陣の練習をしている時には、ギルドの地下訓練場で魔法の練習をしているベル君が、手紙が届いていることを知らせてくれたのだ。
翌朝の組手が終わった時に教えてくれたので、一緒にギルドまでついてきてくれたのは心配してくれたのかもしれない。同行してくれた白雪さんとチアキさんは完全に心配してくれての事だと思います。何だか手がかかる子供ですみません。
「あ、待っていたといえばそうなんだけど、まさかの相手だったというか、初めての手紙で驚いてる」
不思議な顔をしている三人だけど、だって、まさかフィルさんから手紙が来るとか思ってなかったもん。
送り先はメネクセス王国のヘイジョーのギルドだった。
封筒にはフィルさんの書いた手紙と、〔土竜の盾〕の皆からの手紙が入っていた。
どうやら皇国にフィルさんが行って、直接あっちの王様と話し合いと言う名の取引が行われたようだ。例のバカ娘からお母さんのペンダントを取り返した事、あの糞チビハゲデブ領主たちは断罪されることになったとネリアさんが書いてくれていた。
ヘイジョーに寄ったのは、ドゥーア先生からの連絡が来るのがヘイジョーだったからということ、この町からだとフィルさんが直接手紙を返すことができるから丁度良かったと、テリューさんが書いてくれていた。
《ヴァイオレット、君が生きてくれているという事実が知れただけでほっとしている。困っていることはないか? 寂しい思いはしていないか? 側にいてやれなくて本当にごめん。
だけど、君が元気で楽しんでいるという情報を知ることができて少し安心しているよ。
君が帰ってくるとき、全ての憂いがなくなっているように、(とう)俺も頑張るから、また元気でいる事を知らせてくれると嬉しい》
フィルさんからの手紙にはそう書かれていた。父さんと書きたかっただろうに、消した跡が見えるのは、フィルさんの葛藤なのかな。
どこか他人行儀で、だけど私の事を心配してくれているのが十分に伝わってきて、この人に私は愛されていたんだと知って嬉しくなる。
「お、おい、ヴィオ、大丈夫か?」
私の周りを心配そうにウロウロしながら声をかけてくれるベル君。
そうだね、ここにも私を心配してくれる人がこんなにもいる。私は一人じゃない。こんなにも素敵な人たちに囲まれているんだよって知らせないとね。
「ベル君、大丈夫。嬉しい内容だっただけ」
「そ、そうなのか? 泣きたいときは泣いた方が良いらしいぞ。モヤモヤした時はいっぱい動いた方が良いんだぞ。動くんだったら俺が相手してやってもいいからな」
アワアワしながら色々提案してくれるベル君、まだまだ小柄で美少女にも見えなくないベル君。はぁ~、可愛くて癒されます。
物騒な内容は土竜の皆が担当してくれたのかな? フィルさんは幼女にそんな事を聞かせるべきではないと思ってそうな気はするけど、どうやら悪侯爵の取り調べもしっかりされているみたい。
お色気お姉さんは生きていたらしく、その証言と、あの暗殺者たちが持っていたマジックバッグから悪事の数々が証拠品として見つかったんだって。
内容は流石に書いてないけど、お妃様も悪侯爵も処刑は間違いないだろうって事だった。
うん、あの人たちに同情する気持ちは一切ない。
結果が出たらまた知らせるか? と書いてあるけど、もう決定しているみたいだしそれ以上は聞く必要もないかな。
フィルさんからの手紙が来てから一月後、遂に待っていたお兄ちゃんたちからの手紙も届いた。
遅かったのは上級の豊作ダンジョンに入っていたから。
どうやらそこにモフッコらしき魔獣がいたらしい。新しく見つかった果物も沢山あって、クルトさんの非常に上手な絵によると、そのうちのひとつはバナナっぽいし、果物ではなくて魔草だけど、どう考えてもパイナップルな奴もいた。
パイナップルが攻撃してくるとか、興味しか湧かないでしょ!
蛙の大軍に猿の軍団、面倒そうではあるけど、殲滅はできそうだよね。外とは違ってダンジョンは魔獣と魔木以外にダメージは通らない。
なので蜂の時と同じように、蛙はエリアを凍結させれば行けると思うんだよね。
私からの手紙に魔法の事は書けなかったけれど、あっちからの手紙は魔封じがされていたのでサブマスの無双っぷりが書いてあった。
どうも凍結魔法の範囲攻撃を練習しているっぽいから、私が帰る頃には完成してそうです。
お兄ちゃんたちはモフッコかどうかを再確認しに行くことにした事、チョコレートを絶対に作りたいから次の手紙にはレシピもお願いと書いてあった。
そして、ドゥーア先生からは『春になったら無属性の回復魔法を発表するよ』と書いてあった。
そういえばそういう話だったね。
フィルさんとの会合があり、冒険者の国で大々的に聖属性ではない回復魔法が発表される。
これは皇国にとって大ダメージになりそうだね。
各国の教会の一番の収入源である回復魔法、これの需要が激減するのは目に見えている。さて、あの国はどうなっていくんだろうね。
チアキさんからクソビッチ聖女の話も聞いているから、皇国と神国に良いイメージは全くない。
最も皇国は私にとって鬼門だからね。滅びればいいとまでは思ってないけど、魔素の事もあるし、どうにかしないとあの国では魔力持ちがそのうち生まれなくなるかもしれないね。
まあ、それで衰退していくなら自業自得としか言えないけど、それで他国に迷惑をかけるのだけは止めてくれと言いたいです。
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