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エルフの里
第458話 村人との交流
しおりを挟む本気の川遊びをした後、村に戻ってお昼ご飯を頂いた。
エルフがベジタリアンでない事は既に知っているし、なんならマムさんが和調味料を村に広めていたおかげで、チアキさん宅で食べるのと同じくらい美味しい食事が頂けました。
地元料理を楽しみにしていた気持ちもあるけど、マムさんが少食だと思われるレベルの味付けだった事を思えば、今来られて良かったのかもしれない。
食後も遊びに誘われたんだけど、チアキさんからしばらく滞在するツリーハウスを確認するように言われてウッキウキで見に行ったのは覚えている。
外から見たツリーハウスは木にくっつけている感じだから、そんなに大きくはなかったんだけど、中は非常に広かった。
ギルドの訓練場と同じで空間拡張を施しているらしいのは、イブさんが技術を持ち込んだんだろう。
それまでのエルフは地上に家を持っていたようで、森の中に沢山家を作ることはできないから、数軒ずつの小さな集落がポツポツある感じだったんだって。
ベッドは蔓草のハンモックで、寝心地を確認するように勧められてコロリと転がったら、あまりの気持ちよさに目を閉じたところで眠ってしまっていた。
ベル君も同じだったようで、一時間程の昼寝は非常に気持ちが良かった。
「おはようございます」
「よく眠れたか?」
起きた時には、森に来た時から一緒にいた光の精霊も一緒になって寝てた。精霊が眠ることに驚いたけど、ハンモックに引っ掛かるように絡みついていた蔓草の精霊も、竈では火の精霊も眠っていた事を思い出した。
チアキさんはリビングスペースで寛いでおり、白熊状態でコロンと横になっている白雪さんにもたれかかって本を読んでいた。何と贅沢なソファーだろうか。
「今日は顔合わせが目的だったんだが、精霊たちのお陰で思った以上に受け入れられるのが早かったな。毛織物の確認は明日からにしようと思うがいいか?」
「勿論です」
ダンジョンも楽しみだけど、この村の人たちにモフッコの毛織物を作ってほしいとお願いしたのは私だしね。
毛刈りのやり方、カボスの回収にもついて行くことになっている。改善方法などがあれば教えて欲しいとも言われているんだけど、自分たちのやりやすいように改変していけばいいと思うんだけどな。
「あと、マムから料理の確認もして欲しいと依頼されたんだが、それは……モフッコの件が終わってからで良いだろう」
「チョコの確認じゃなくてですか?」
「ああ、ミケから教わった和食を食べさせたら、皆が気に入ったらしいぞ。菜食が好きな奴らが多いのは確かだから、野菜をうまく食えるようになる調味料は最高なんだろうな」
なるほど、確かに一つの野菜をいろんな味で食べることができる調味料の数々は素敵だよね。
どうやら最近はモフッコの毛織物関連に関わる人、チョコをはじめとした新素材での調理全般に関わる人、素材を確保するためにダンジョン探索をする人の三部隊に分かれて活動しているみたい。
マムさんから教えてもらった沼のダンジョン以外にも行けるかもだね。
夕食も広場で皆と楽しんだ。
マムさんから何か一品作ってほしいと言われたので、簡単に作れるイモモチを作ったら阿鼻叫喚の騒ぎになった。
「な、なんだこれは、伸びるぞ、うまぁぁぁぁい!!!」
「すご~い、パテトなのに何でこんなにやわらかいの? モッチモッチしてる~」
「これは無限に食べられるな」
「俺も一緒に作ったんだぞ」
甘めの醤油タレで絡めたものと、味噌を塗ったものの二種類を作ったんだけど、どちらも大人気でした。何度か作っているので、ベル君も丸めるのを手伝ってくれたので、エルフの子供たちにエッヘンと自慢げにしているのが可愛すぎる。
「ヴィオ、これはどうやって作っているのだ?」
「んっと、パテトを茹でて、しっかり潰して――」
興奮で鼻の穴が広がっていても美しい男、それがエルフ。
いや、マムさんが真剣な顔でメモを片手に聞いてくるので作り方を説明していたら、多分料理担当というか料理好きの人たちも集まってきて一緒に聞いている。
「そんなに時間がかかるものじゃないので、一緒に作ってみますか?」
「いいのか?」
「それは嬉しいわ! 何が必要? 持ってくるわ」
はりきった奥様が早速とばかりにご自宅へ芋を取りに帰りましたよ。
肉が食べ尽くされて綺麗になった竈に再び大鍋をドンと設置。もっと食べたいと希望する子供たちの為にも多めに作ることになりました。
鍋に大量のパテトが投入されてグツグツ茹でられていく。鍋の下では火トカゲっぽい火の精霊が炎と一緒に踊っているし、グツグツしている鍋の中では水の精霊が温泉に入っているような顔をして浮かんでいる。熱湯ですけど大丈夫なんでしょうかね。
茹で上がったパテトは手分けしてマッシュされる。涎を垂らしそうになっているそこの人たち、ちょっと下がっておいてくださいませ。
マッシュしたパテトに片栗粉と牛乳を混ぜていくんだけど、そういえばこの村では山羊が沢山いるんだよね。
「さっきのはカウカウのミルクを使ったんですけど、ここってカプラのミルクが沢山あるんですよね? 味が違うかもだし、試してみませんか?」
「おぉ、それはやってみたいな。だったらホルルタンの二つも試してみよう」
マムさんに山羊のミルクを提案したら、生クリームとヨーグルトでも試してみたいと言われた。やった事は無いけど、これだけマッシュパテトがあるんだもん、試してみるのも面白そうだ。
という事で、四種のミルクと醤油と味噌、更に豆板醤などのジャン系を使った味も試してみたいという事になり、担当を決めて作ることになった。
カウカウのミルク、醤油担当みたいな感じですよ。
ミルクと片栗粉を混ぜたら丸めるだけなので、子供たちも参加してワイワイキャッキャと楽しいイベントになってしまった。
それだけの人数で丸めたからすぐにイモモチはでき上がる。後はタレをつけて焼くだけだけど、流石に焼き台が足りなくなった。
ここまで見学に徹していたチアキさんがおもむろに立ち上がり、BBQ台を土魔法でシャシャッと作れば、子供たちが大興奮です。なんかおいしいところ取りな気がしないでもないけど、まあいいか。
種類別に作っているので、それらが混ざらないように同じ種類で纏めて焼いていく。
ある程度焼けたらタレを塗ってさらに焼いていく。タレが火に落ちるとフワリと香る醤油や味噌の香りが周囲に漂う。
よく見ていれば、火の中にいるトカゲくんが落ちたタレをチロチロ舐めているし、焼いているイモモチに抱き着いている火の精霊もいる。
「マムさん、精霊って食事をするんですか?」
お供えとかした方が良いのだろうか。
「いや、精霊は魔素を吸収しているだけだろう。ただ、好きな匂いとかはあるようだからな、きっと匂いを楽しんでいるんだと思うぞ」
なるほど、ダンジョン産の調味料だから、あれ自体にも魔素はたっぷり含まれている筈だし、それを楽しんでいるのかもしれないね。
でもイモモチを抱きしめている赤い小さな精霊は「これ僕んだからね!」と言っているようにしか見えないのが面白い。
完成後は皆で試食。
豆板醤とコチュジャンのイモモチを気に入ったのは、アリオールさんをはじめとした翼人族の大人でした。
「むむっ、この辛味は癖になるぞ」
「これは良いものですね。子供には少し刺激が強いかもしれませんが、非常に良い。これは、ヘッジホッグの素材でも試してみたくはないですか?」
「「おぉ! それは良いぞ」」
子供は一舐めして「カラーイ」と言っていたし、エルフの人にもちょっと刺激が強かった豆板醤。それを殊の外楽しんでいた彼らが何やら相談しているんですけど、ヘッジホッグってどんな素材なんだろう。
「前に教えた魚が採れるダンジョンの深層階に出る魔獣だな。針のような棘が沢山ある魔獣で、その棘を飛ばしてくる面倒な奴だ。
奴らが言ってるのは、ヘッジホッグの棘だな。刺激物なので刺さると痛いし辛いんだが、珍味として一部では好まれているらしい。俺は二度と喰らいたくないがな」
何その面白魔獣!
刺激物を纏っている針鼠みたいな魔獣なのかな? 意味不明だけど水の壁で受け止めれば何とかなりそうだし、是非見てみたいね!
「ははっ、まあ行くことは決定しているしな。そのうち会えるさ」
チアキさんからそう言われて、来週には見ることができるんだったと思い出す。
うんうん、謎の針鼠君に会えるのが楽しみですよ!
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