ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
626 / 628
ホトヘルの祠ダンジョン

第553話 ホトヘルの祠 その1


 今回の旅のメンバーは、チアキさん、白雪さん、イブさん、タニアさん、ルイスさん、私の六人です。
 ダルスさんは一応村のお留守番という事で残っています。

「タニアさんお久しぶりです」
「ええ、肉ダンジョンに行くって聞いて間に合って良かったわ」

 タニアさんはダンジョン前での待ち合わせでした。
 スパイスダンジョンに行ったことを伝えた時は、一緒に行きたかったとショックを受けていたので、今回はダンジョンに行くことをちゃんと伝えておいたのです。
 タニアさんもこのダンジョンに来るのは数年ぶりという事で、とても楽しみにしているそうです。

「最近は皆して勝手巻きに嵌ってるから魚が多かったんだけど、ここに来ることを伝えたら肉を頼むって言われたのよね」

 タニアさん達が住む風竜人族の集落から直ぐにあるダンジョンは海苔も取れるダンジョンだったんだよね。それで勝手巻きを伝えたらとっても喜ばれた。
 あの集落ではお酒作りも教えてもらって、料理酒や葡萄酒も今では自作できるようになっている。

「さて、入るぞ」
「は~い」

 タニアさんと再会の挨拶をしていたけれど、チアキさんの掛け声でダンジョンに向き合う。久しぶりに見る岩壁に空いた黒い穴。洞窟ダンジョンらしいといえばらしいかもしれない。
 チアキさんと白雪さんからダンジョンに入っていく。
 次いでイブさんと私、最後にタニアさんとルイスさんが続く。

「おぉ! 久しぶりの洞窟ですね」
「なにそれ、変な感想」

 イブさんには笑われるけど、だってこっちに来てから入るダンジョンって特級に豊作に海、湿地と砂漠とバリエーションが豊かなんだもん。洞窟なんて久しぶりすぎて逆に興奮しちゃう。

「洞窟とはいえ多分上級以上のダンジョンだからな、一階から敵が出るぞ」
「はい! えっと次の通路を過ぎた辺りから魔獣がいます。ゴブリンかオークと虫かな? めっちゃ広いですね」

【索敵】をしながら見えた敵から伝えるけれど、まだ二階への道に到着しない。洞窟とはいえランクが高いから非常に広い。

「大丈夫そうだな、じゃあ行くぞ」

 興奮はしているけど油断はしていないという事が分かったようで、一つ頷いたチアキさんが先導するように進んでいく。
 そういえばチアキさんが先導するのは珍しいね。きっとチアキさんもちょっと興奮しているという事だろう。

 入口直ぐのところに魔獣が出ないのはここでも同じだったけど、通路を少し進んだだけで第一魔獣を発見した。
 オークかゴブリンかと思ったけど、先に現れたのは久しぶりに会うシカーマンティスカマキリだった。

「白雪いくか?」
「そうじゃな、性能も試してみたい」

 珍しい事に白雪さんが戦うようだ。普段はやるとしても魔法を使う白雪さんだけど、腰ベルトに差していた短い棒を取り出した。

「おぉっ!」

 ビュ~ン バシン! キラキラキラ

「うむ、発動までも速いし実用性ありじゃな」
「白雪さん! それ私のとお揃いな感じですか!? 格好良い!」

 白雪さんの新しい武器は鞭でした。私のはベルトにできるように50センチ程は皮の鞭があり、それよりさらに伸ばしたい部分に魔力で鞭を作れるというものだけど、白雪さんのそれは持ち手だけしかなく、持ち手から先が完全に魔力で出来る鞭なのだ。

「ヴィオの魔法武器を参考にさせてもらった。それを作った職人は素晴らしい錬金術師だな」

 はて、ギレンさんはそんな事も出来たのだろうか。それとも錬金は別の人がやったのか。あの村は普通の村人にしか見えない人が凄い冒険者だったりするから、ギレンさんが超絶錬金術師だったとしても驚きはしないけど。

 そうか、チアキさんが先導していたのはダンジョンに浮かれていたのではなく、白雪さんの武器をお試しする為だったんですね。
 いつもの184歳児が浮かれているとか思ってすみませんでした。

 オーク達は別の通路に行ってしまったのか、シカーマンティスが消えた後にはこれまた久しぶりのウッドラースダンゴムシが登場。マンティスよりも小さい敵ではあるけれど、魔法武器なので命中率もバッチリみたい。

「あの武器良いね。鞭なんて魔獣相手の武器として考えたことなかったけど、魔法武器だったらアリだよね」

 イブさんが白雪さんを眺めながらボソリと一言。
 そのうち鞭を振り回す美エルフが登場するかもですよ。

『私たちはまだ駄目?』
『しばらく見学か?』

 ルーチェとヴェントはダンジョンに入って直ぐに依り代から出てきて大人サイズになったんだけど、白雪さんのお試しが始まったので小さくなって肩に座っています。
 なぜこんなに戦闘狂になってしまったのでしょうか。いや、実体化したいという目標があるからというのは分かっているんだけど、イブさんから見ても成長速度が相当早いというのだから、ゆっくりでもいいんじゃないかな?

「おっと、オークが……。オークで良いんだよな?」

 ヴェントたちを慰めていたらチアキさんの声。ふと前方とみると見慣れた赤色っぽい人型の豚顔魔獣が立っていた。私たちを見つけた途端ニヤリと嗤うのも見慣れているんだけど、違いがあるとすればその恰好だろう。
 多分ノーマルなオークナイトは布っぽいズボンに皮の胸当てのような恰好をしている。だけど、登場ダンジョンによっては結構衣装が変わることも知った。
 特級ダンジョンのサ〇エさんでは野球帽をかぶっていた(※ウミノトモダンジョンです)
 今回出てきたオークナイトはトラ柄の腰巻をしている。胸当てとかもない分非常に軽装だ。

「やることは変わらん、それっ」

 ビュン、バチン

 確かに衣装が変わっても中身は同じ。使い回しと言う事なかれ。
 鞭を振り抜いた白雪さんだけど、その攻撃はオークナイトに防がれた。硬い皮膚もそうだけど、素早い動きをするオークナイト。片腕で鞭を防ぎ身体を捩ってこちらに突進してくる。

「拘束を【シャドーバインド】、イブいけるか」
「いいよ~、風よ【エアカッター】」

 慌てたチアキさんが影で拘束し、イブさんが即座に首チョンパ。流石の連携ですね。

「すまぬ、オークナイトの皮膚には通らんかった。魔力が少なかったか?」
「白雪さんの鞭はお水にしてます? 砂だと結構がっつり削れますよ?」

 白雪さんはウォータージェットを練習していたから、鞭もその形にしているとのこと。真っすぐ当たった時には貫通力があるけれど、切るというのは想像が足りないから難しいみたい。
 土も得意属性だから、今度は砂の鞭を練習したいという事で、それは安全地帯でゆっくり解説することになった。

『じゃあもうやって良いのね?』
『やるぞ~!』

 白雪さんの練習が中断されたことでヴェントとルーチェが大きくなった。やる気満々すぎるんですけど。

「じゃあ、ヴィオが先導だな。砂の鞭も使って見せてくれると嬉しい」
「あ、了解です」

 ということで、私が先導しながら進むことになりました。
感想 124

あなたにおすすめの小説

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!