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ホトヘルの祠ダンジョン
第553話 ホトヘルの祠 その1
今回の旅のメンバーは、チアキさん、白雪さん、イブさん、タニアさん、ルイスさん、私の六人です。
ダルスさんは一応村のお留守番という事で残っています。
「タニアさんお久しぶりです」
「ええ、肉ダンジョンに行くって聞いて間に合って良かったわ」
タニアさんはダンジョン前での待ち合わせでした。
スパイスダンジョンに行ったことを伝えた時は、一緒に行きたかったとショックを受けていたので、今回はダンジョンに行くことをちゃんと伝えておいたのです。
タニアさんもこのダンジョンに来るのは数年ぶりという事で、とても楽しみにしているそうです。
「最近は皆して勝手巻きに嵌ってるから魚が多かったんだけど、ここに来ることを伝えたら肉を頼むって言われたのよね」
タニアさん達が住む風竜人族の集落から直ぐにあるダンジョンは海苔も取れるダンジョンだったんだよね。それで勝手巻きを伝えたらとっても喜ばれた。
あの集落ではお酒作りも教えてもらって、料理酒や葡萄酒も今では自作できるようになっている。
「さて、入るぞ」
「は~い」
タニアさんと再会の挨拶をしていたけれど、チアキさんの掛け声でダンジョンに向き合う。久しぶりに見る岩壁に空いた黒い穴。洞窟ダンジョンらしいといえばらしいかもしれない。
チアキさんと白雪さんからダンジョンに入っていく。
次いでイブさんと私、最後にタニアさんとルイスさんが続く。
「おぉ! 久しぶりの洞窟ですね」
「なにそれ、変な感想」
イブさんには笑われるけど、だってこっちに来てから入るダンジョンって特級に豊作に海、湿地と砂漠とバリエーションが豊かなんだもん。洞窟なんて久しぶりすぎて逆に興奮しちゃう。
「洞窟とはいえ多分上級以上のダンジョンだからな、一階から敵が出るぞ」
「はい! えっと次の通路を過ぎた辺りから魔獣がいます。ゴブリンかオークと虫かな? めっちゃ広いですね」
【索敵】をしながら見えた敵から伝えるけれど、まだ二階への道に到着しない。洞窟とはいえランクが高いから非常に広い。
「大丈夫そうだな、じゃあ行くぞ」
興奮はしているけど油断はしていないという事が分かったようで、一つ頷いたチアキさんが先導するように進んでいく。
そういえばチアキさんが先導するのは珍しいね。きっとチアキさんもちょっと興奮しているという事だろう。
入口直ぐのところに魔獣が出ないのはここでも同じだったけど、通路を少し進んだだけで第一魔獣を発見した。
オークかゴブリンかと思ったけど、先に現れたのは久しぶりに会うシカーマンティスだった。
「白雪いくか?」
「そうじゃな、性能も試してみたい」
珍しい事に白雪さんが戦うようだ。普段はやるとしても魔法を使う白雪さんだけど、腰ベルトに差していた短い棒を取り出した。
「おぉっ!」
ビュ~ン バシン! キラキラキラ
「うむ、発動までも速いし実用性ありじゃな」
「白雪さん! それ私のとお揃いな感じですか!? 格好良い!」
白雪さんの新しい武器は鞭でした。私のはベルトにできるように50センチ程は皮の鞭があり、それよりさらに伸ばしたい部分に魔力で鞭を作れるというものだけど、白雪さんのそれは持ち手だけしかなく、持ち手から先が完全に魔力で出来る鞭なのだ。
「ヴィオの魔法武器を参考にさせてもらった。それを作った職人は素晴らしい錬金術師だな」
はて、ギレンさんはそんな事も出来たのだろうか。それとも錬金は別の人がやったのか。あの村は普通の村人にしか見えない人が凄い冒険者だったりするから、ギレンさんが超絶錬金術師だったとしても驚きはしないけど。
そうか、チアキさんが先導していたのはダンジョンに浮かれていたのではなく、白雪さんの武器をお試しする為だったんですね。
いつもの184歳児が浮かれているとか思ってすみませんでした。
オーク達は別の通路に行ってしまったのか、シカーマンティスが消えた後にはこれまた久しぶりのウッドラースが登場。マンティスよりも小さい敵ではあるけれど、魔法武器なので命中率もバッチリみたい。
「あの武器良いね。鞭なんて魔獣相手の武器として考えたことなかったけど、魔法武器だったらアリだよね」
イブさんが白雪さんを眺めながらボソリと一言。
そのうち鞭を振り回す美エルフが登場するかもですよ。
『私たちはまだ駄目?』
『しばらく見学か?』
ルーチェとヴェントはダンジョンに入って直ぐに依り代から出てきて大人サイズになったんだけど、白雪さんのお試しが始まったので小さくなって肩に座っています。
なぜこんなに戦闘狂になってしまったのでしょうか。いや、実体化したいという目標があるからというのは分かっているんだけど、イブさんから見ても成長速度が相当早いというのだから、ゆっくりでもいいんじゃないかな?
「おっと、オークが……。オークで良いんだよな?」
ヴェントたちを慰めていたらチアキさんの声。ふと前方とみると見慣れた赤色っぽい人型の豚顔魔獣が立っていた。私たちを見つけた途端ニヤリと嗤うのも見慣れているんだけど、違いがあるとすればその恰好だろう。
多分ノーマルなオークナイトは布っぽいズボンに皮の胸当てのような恰好をしている。だけど、登場ダンジョンによっては結構衣装が変わることも知った。
特級ダンジョンのサ〇エさんでは野球帽をかぶっていた(※ウミノトモダンジョンです)
今回出てきたオークナイトはトラ柄の腰巻をしている。胸当てとかもない分非常に軽装だ。
「やることは変わらん、それっ」
ビュン、バチン
確かに衣装が変わっても中身は同じ。使い回しと言う事なかれ。
鞭を振り抜いた白雪さんだけど、その攻撃はオークナイトに防がれた。硬い皮膚もそうだけど、素早い動きをするオークナイト。片腕で鞭を防ぎ身体を捩ってこちらに突進してくる。
「拘束を【シャドーバインド】、イブいけるか」
「いいよ~、風よ【エアカッター】」
慌てたチアキさんが影で拘束し、イブさんが即座に首チョンパ。流石の連携ですね。
「すまぬ、オークナイトの皮膚には通らんかった。魔力が少なかったか?」
「白雪さんの鞭はお水にしてます? 砂だと結構がっつり削れますよ?」
白雪さんはウォータージェットを練習していたから、鞭もその形にしているとのこと。真っすぐ当たった時には貫通力があるけれど、切るというのは想像が足りないから難しいみたい。
土も得意属性だから、今度は砂の鞭を練習したいという事で、それは安全地帯でゆっくり解説することになった。
『じゃあもうやって良いのね?』
『やるぞ~!』
白雪さんの練習が中断されたことでヴェントとルーチェが大きくなった。やる気満々すぎるんですけど。
「じゃあ、ヴィオが先導だな。砂の鞭も使って見せてくれると嬉しい」
「あ、了解です」
ということで、私が先導しながら進むことになりました。
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