ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
115 / 581
ダンジョンと他の町 

第99話 アンナープ村

しおりを挟む


1日目は街道から少しそれた 森の入り口に近い場所で野営をした。
この野営は最近やってた野営と同じ感じだったので 、二人で直ぐに準備を整えて 翌日の早朝からまたしっかり歩くことが出来た。


第一休憩場となっている広場についたのは 2日目のまだ明るい時間だった。
だけど、ここから更に歩いてしまうと また何もない場所でテントを張ることになるから 出来ればこうした休憩場で休むことにしようという事になった。

「ただし、人が多く使う街道の場合は ヴィオの姿を見て 良からぬ考えを持つ者がおる可能性があるからな。そういう道では 街道を使わず森を歩く。森での野営は既に練習しておるから大丈夫じゃな?」

「うん、こんなに周りに何もないところでテントする方がドキドキするね。
お父さん、いつもは蔓でテントを吊ってたけど、今日はどうするの?」

よく考えれば お父さんのテント準備は蔦でテントを吊り上げるところから始まっていた。
この場所は地面を平らにする必要はないし、結界を張る必要もないようだけど、逆に蔓も木もない。

「ああ、ちょっと待っとれ【アースポール】」

地面に手をついたと思えば ニョキニョキと物干し竿のようなコの字型のポールが出来上がった。
そこにひょいとロープを引っかけたと思えば テントを吊り下げていくお父さん。

……絶対これって初心者のテント張りじゃないと思うけど。
お父さんも大概チートだと思うんだよね。
まあ、便利だからいいか。
森と変わらず 蔦が手持ちのロープになったくらいで、見慣れたテントが出来上がる。
私も中に入って毛布の準備、焚火をするための場所も確保されていて、簡易BBQ場みたいだ。
石組と 鉄の棒が何本かあるだけの簡易な火台だけど、鍋も置けるし、大きな肉だったらそのまま焼ける。

ここに来るまでに拾っておいた木の枝を 枝置き場っぽい場所に置き、かわりに乾いている枝を火台に入れる。休憩場は こうした屋根付きの枝置き場や 火台が設置されていて、魔獣除けの魔術具も四方に設置されている。
使った薪は、新しい枝などを補充しておけば、次に使う人が来る時には乾いていて使えるようになっているという事らしい。

とても人道的というか、これを考えたのも勇者なんだろうな とか、だとしたら絶対日本人だったんだろうなって思ってしまう。
ルールではなく マナーの話だからね。守ってくれたら過ごしやすいけど、守らなくても罰則はないから、そうしない人だっていると思うもん。
それでも人の善性を信じているあたりが 道徳を大切にするように育てられた平和大国 日本出身者って気がする。

休憩場ところか、街道で私達以外の人に会うことはなく、森から魔獣が出てくるなんてこともなく、休憩地の周辺で薬草採収をした以外に変わったことは起こらないまま 3泊4日の徒歩旅は終了し、アンナープ村に到着した。




街道の終わりに塀が見え、あれがアンナープ村だと言われた。
サマニア村と同じくらいの大きさかな? ダンジョンの村だからもっと大きいと思ったけど、そうでもない?

「親子連れとは珍しいな、何の用だ?」

サマニア村と同じように、塀のところには男性が一人立っていた。武装と言っても槍を持っているくらいで軽装だ。
ここは「アンナープ村へようこそ」とかじゃないんだね。怒っているとかではないけど、本気で 何しに来たんだ?って不思議顔だ。

「アンナープ街道洞窟に入るのに来たんじゃ、今日は村で一泊して 明日から潜る予定じゃ」

「は? 子供は留守番させんのか?」

「ううん、私が入るの。お父さんは付き添いだよ」

「は? チビが? 洞窟って言ってるけど、ダンジョンだぞ? 魔獣が出るぞ? 危ないぞ?」

お父さんがギルドタグを見せて 目的を告げたんだけど、勘違いしているようだから 私が入るのだと告げたら 更に混乱してしまったようだ。
膝をついて 私と目を合わせながら 危ないぞと言ってくれる辺り この人は良い人なんだと思う。

「あのね、私小さいけど銅ランクの冒険者なの。無理はしないようにお父さんが一緒に来てくれているの。心配してくれてありがとう」

胸元からギルドタグを取り出して おじさんに見せる。
ちょっと寄り目になってるけど、見えてる?
おじさんの目の前で揺れる銅色のギルドタグ、それを恐る恐る右手で抑えてじっくり見たおじさんは、タグ、私、お父さんの順に目を向けて、お父さんの頷きを見て納得したようだ。

「ちっこいから子供だと思ったけど、ドワーフだったか。じゃあ大丈夫だな。
まあここのダンジョンは 初級ダンジョンだから 余程無茶しなけりゃ大丈夫だろう。
こないだもトカゲ獣人の親子がゆっくり過ごしてたしな。訓練頑張れよ!」

「ああ、じゃあ入らせてもらうぞ」

え?え?私ドワーフじゃないけど?
でもお父さんも否定しないし、おじさんも なんだかそれで納得しているからいいのか?
まあ下手に人族5歳の幼児だと思えば 心配されて大変かもしれないから ここではそれで行こう。
認めた訳じゃないし、嘘はついてないからね。

おじさんと別れて まずは今夜のお宿を探す。
ケーテさん達から聞いていたお宿にするらしく、お父さんの足に迷いはない。
〖止まり木亭〗と書かれたお店用の看板がある宿は 小さな鳥と草花の絵が壁に書かれたとても可愛い宿だった。

カラ~ン カラ~ン

「は~い、いらっしゃいませぇ」

ドアを開ければ ドアについていたベルが鳴る。
奥から出てきたのはフワフワの茶髪をひとまとめにした可愛らしいリス獣人のお姉さん。

「あらぁ、可愛らしいお嬢さんだわぁ、それに熊獣人さんの組み合わせという事は、あなた達がテーアさん達が言ってた親子かしら?」

「ああ、多分そうじゃ。明日からダンジョンに数日かけて入る予定にしておる。
数日厄介になるつもりじゃ」

「ええ、ええ、聞いているわ。2階の右側のお部屋を使ってね。ダンジョンに泊る予定はないのかしら?
泊る前日に言ってくれたらお弁当も多めに作りますからね。
明日からの分はお昼のお弁当だけで良いかしら?」

「えっ?お弁当作ってくれるのですか?」

お父さんとお姉さんのやり取りを静かに聞いてたんだけど、まさかのお弁当発言に突っ込んでしまった。
そんなサービスあるの?荷物少なくてすんじゃうね。

「うふふ、そうなの。ここのダンジョンは初心者ダンジョンだからね。貴女のような小さな子は流石に珍しいけれど、銅ランクになったばかりの子が 最初に挑戦することが多いの。
ランクが低い子達は マジックバッグなんて持っていないでしょう?
だからと言って何も持たずに入るのも危険だから こうしてお宿で準備をするのもサービスなのよ」

なんと!凄いね。
ランチ代はちゃんと宿代に入っているらしいので、お弁当をもらわない方が損なんだって。
初心者ダンジョンはリズモーニ王国にいくつかあるらしいんだけど、こんなサービスをしているのは珍しいらしい。
だからこそ、テーアさんたちも お父さんも、この村のダンジョンから始めようと思ったらしい。
特訓はスパルタだけど、そういうところがお父さんの凄いところだよね。至れり尽くせりで エリート冒険者街道を突っ走らせてもらえている感じですよ。


お部屋に入ってから お父さんにドワーフ疑いに関して謝られたけど、変に心配される方が困るから気にしてないと言ったら笑ってた。
しおりを挟む
感想 108

あなたにおすすめの小説

【完結】三歳年下の婚約者は、嘘を覚えた

恋せよ恋
恋愛
ランバート侯爵令嬢フィオーラには三歳年下の病弱な婚約者がいる。 保養地で十二歳まで静養するフィッチモ公爵家の嫡男、エドワード。 病弱で儚げだった可愛い彼を、フィオーラは献身的に励まし支えた。 十四歳でエドワードが健康を取り戻し王都へ戻ると、環境に変化が。 金髪に青い目の整った容姿の公爵家嫡男に群がる令嬢たち。 「三歳年上の年増」「素敵なエドワード様に相応しくないおばさん」 周囲の令嬢たちによるフィオーラへの執拗な侮辱。 そして、エドワードの友人の義妹マリアンヌの甘い誘惑と、接近。 思春期真っ盛りのエドワードと、美しいフィオーラの関係は拗れていく。 二人の婚約の結末は、婚約解消か、継続か、はたまた……。 若い二人の拗れた恋の行方の物語 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

冷遇夫がお探しの私は、隣にいます

終日ひもの干す紐
恋愛
愛人がいるなら、さっさと言ってくれればいいのに! 妻に駆け落ちされた、傷心の辺境伯ロシェのもとへ嫁いでほしい。 シャノンが王命を受け、嫁いでから一年……とんでもない場面に立ち会ってしまう。 「サフィール……またそんなふうに僕を見つめて、かわいいね」 シャノンには冷たいの夫の、甘ったるい囁き。 扉の向こうの、不貞行為。 これまでの我慢も苦労も全て無駄になり、沸々と湧き上がる怒りを、ロシェの愛猫『アンブル』に愚痴った。 まさかそれが、こんなことになるなんて! 目が覚めると『アンブル』になっていたシャノン。 猫の姿に向けられる夫からの愛情。 夫ロシェの“本当の姿”を垣間見たシャノンは……? * * * 他のサイトにも投稿しています。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

このわたくしが、婚約者になるはずでしょう!?

碧井 汐桜香
恋愛
先々代の王女が降嫁したほどの筆頭公爵家に産まれた、ルティアヌール公爵家の唯一の姫、メリアッセンヌ。 産まれた時から当然に王子と結婚すると本人も思っていたし、周囲も期待していた。 それは、身内のみと言っても、王宮で行われる王妃主催のお茶会で、本人が公言しても不敬とされないほどの。 そのためにメリアッセンヌ自身も大変努力し、勉学に励み、健康と美容のために毎日屋敷の敷地内をランニングし、外国語も複数扱えるようになった。 ただし、実際の内定発表は王子が成年を迎えた時に行うのが慣習だった。 第一王子を“ルーおにいさま”と慕う彼女に、第一王子は婚約内定発表の数日前、呼び出しをかける。 別の女性を隣に立たせ、「君とは結婚できない」と告げる王子の真意とは? 7話完結です

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?

碧井 汐桜香
ファンタジー
若い娘好きの公爵は、気弱な令嬢メリシアルゼに声をかけた。 助けを求めるメリシアルゼに、救いの手は差し出されない。 母ですら、上手くやりなさいと言わんばかりに視線をおくってくる。 そこに現れた貴婦人が声をかける。 メリシアルゼの救いの声なのか、非難の声なのか。

処理中です...