ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
308 / 584
閑話

〈閑話〉メネクセス王国 24

しおりを挟む
銀ランク上級〔土竜の盾〕リーダー テリュー視点


皇国の子爵領で 暗殺部隊の生き残りから話を聞いた俺たちは 一度絶望しそうになったものの、ネリアの話によって希望を持ち始めている。
直ぐに伝達魔法で待っている3人に伝えてメネクセス王国に戻ることにした。

「まだ雪も深いし これから一月ほどはもっと雪が増えるよ?大丈夫なのかい?」

「ああ、急いで戻らないといけなくなったんだ。世話になったな」

宿屋の女将は 客が少なかったからなのか、何かと世話を焼いてくれた。
ヴィオの生存確率があると分かった事で 直ぐにでも発つことを決めた俺たちを心配しているが、長居するための言い訳にしていただけで、魔獣も出ないただの雪など 俺たちには問題ない。
宿を出れば 雪がちらついているが 全く問題ないな。
俺たちは意気揚々と 町を出て レスが待つ町へ向かう。既に伝令魔法は飛ばしているから もしかしたらあっちも俺たちを迎えに来ているかもしれないな。



レスと合流し、国境から2つ目の町でアンと合流、二人もヴィオが生存している可能性を疑いもしていない。

「だって あのアイリスが作った魔道具でしょう? 自信作だって言うなら 絶対大丈夫だわ。
あの子の使ってたあの変な杖も 威力がバカ強だったじゃない。キラキラ光る理由を聞いたら “その方がヨウシキビっていう事らしいんだよね。よく分からないけど” とか言ってたしさ」

ああ、仲良くなってから 一緒に上級ダンジョンに潜った時に使ってた杖な。
魔法使いの杖は 大抵トレントの枝を使ってる。トレントの種類が違うことはあるけど 見た目は変わらない。あとはミスリルの杖を使ってるやつもいるけど、トレント材に比べれば重いし 杖自体を武器にするような奴しか使ってるのを見た事がない。

だけどアイリスのそれは全く違った。
まず短い。普通は自分の胸くらいまでの長さがある杖を使うことが多いのに 手で握れるくらいの大きさの杖は 短剣と同じくらいだったと思う。

それから派手。通常の杖はシンプルだ、杖素材の先端に魔石が付いているくらいで、まあミスリル製の方は多少魔石の周辺に掘り込みデザインがあって凝ってるけどそれだけだ。
あの派手さはなんというか、貴族のガキがヒラヒラしたドレス着てるみたいな感じだ。

魔法をぶち込むときに 何故か杖の真ん中にある魔石が回りながらキラキラ光るのもよく分からなかったけど、本人も分かってないという意味不明さ。
知らない人の前では使わないと言ってたが そういえばあの杖はどうしたんだろうな。

そんな懐かしい話をしながら、最短時間でメネクセス王国に帰国した。
約4か月ぶりの旦那との再会が嬉しいのは分かるが 尻尾にしがみ付いたまま離れなくなってしまったネリアのせいで、とりあえずヘイジョーへの連絡は俺のほうでやっておくことにした。


◆◇◆◇◆◇


ヘイジョーのギルマスからは ネックレスの件をフィルに伝えるのはもう少し先にすると連絡が来た。
まずはヴィオの生存が分からないと何とも言えないし、分かれば それを奪われた時の話を聞けるかもしれない。
ネックレスはもしかしたら アイリスが持っているのを見た子爵が 似せたデザインのものを作らせたのかもしれないし、もしそうであれば 問いただした後に国際問題になるからだという事だった。
まあ確かに 魔石の存在を確認できてないし、聖属性も本当にあの娘が発現してたのかもしれないしな。

その結果をメンバーに伝えたところ それでいいんじゃないかとの事。

「だって あのネックレスが本物だったとしたら あの子が聖魔法を使えなくなるのは時間の問題だし、そうじゃなかったとしても 教会に隔離されるのは確実だもの。
自由が担保されるのはあと数年って事だから どうでもいいわ」

「そうね、あの家族じゃ どうあっても破滅しそうだもの。フィルとの再会だって 私たちが間に入ってあげればネックレスが無くても叶うしね」

まあそりゃそうだな。
ギルマスからも 引き続きヴィオの捜索を頼むと言われたので 俺たちは数日の休憩を挟んだだけで 直ぐに旅立つことにした。
皇国とは違い リズモーニは冒険者ギルドも大抵の町にある、店の規模は違っても 買えないものがないって事はないだろう。
必要最低限のものだけを購入したらプラネルト辺境伯領地を南下し リズモーニ王国との国境があるエクロヤを目指す。


「あ~、魔獣が居るっていいな!」

「ええ、あの町は安全かもしれないけど 刺激も無くて酒と博打くらいしか逃げられないんでしょうね。
ほんっとうざったかった~!」

「過度なストレスは健康によくないからね。うんうん、戦うのはストレス発散に良いって事が分かったわ」

「おう、俺も一人だったしな 伝言が来ないとやることもねーし、人生で一番本を読んだわ。
身体がなまり過ぎて この辺である程度動かしとかねーと 魔境に行くのは危険だな」

「ほんと、私も何回 魔獣狩りだけしに戻ろうかと思ったわ」

「お、お前らも大変だったんだな……。ネリアは 程々にね」

辺境の山沿いは それなりに魔獣が湧いて出てくる。街道を通れば安全だけど 俺たちは敢えて距離の短さもあるけど 魔獣と戦える危険な道を選んでいる。
あの国では 戦うこともできず、だけど鬱憤が溜まるようなことが多すぎて イライラしていたからな。
一人きりで伝言役の為に町で滞在していた二人も同じなようで、歩きながらザクザクと魔獣を切り倒し、刺し殺し、魔法で仕留めていく。俺たちを知らない人が見れば ひかれるかもしれない。
オトマンだけは 定期的にソロでも受けれる依頼を受けていたようで 寂しかった以外にストレスはなかったらしい。
自分の嫁が弓でバンバン倒していくのを見て ちょっと心配しているくらいだ。

だけどこっちの辺境よりも これから向かうプレーサマの北西部は 山と川のダブルで魔素が流れ込む環境のせいで 魔境と呼ばれる場所だ。
そこに行くまでには 4か月で鈍っちまった身体を戻さねえとな。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...