ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
311 / 584
村でのひととき

第275話 首都から出発

しおりを挟む

ドゥーア先生のお屋敷でお別れ会をした翌日、ギルマス、サブマス、お父さん、私、そして料理人3名を乗せたギルドの馬車は 1か月お世話になった 首都の侯爵邸を後にした。
お別れの時は メイドさんたちに号泣され、騎士さん達はお父さんに一人ずつ握手を求め、中々カオスな感じだったけど、しんみりしてって雰囲気ではなくなったから良しとしよう。


「ふふっ、ヴィオさんは楽しい1か月を過ごせたようですね」

「はい!学園にも 見学に行ったんですよ。食堂はお休みだから入れなかったけど、図書館で本も読んだし、別館は入れなかったけど お外からの見学はしてきました。
それにね、学園に行くからって制服まで用意してくれてて、本当の学生になったみたいで楽しかったです」

「え?ヴィオ 学園に通うのか?」

「ううん、先生からも通う必要はないねって言われたから通わないよ。
でも学園の見学に行くなら 学生に見られた方が安全だねって事で用意してくれたんだって。
お父さんたちは学園見学の保護者役だったの」

お陰で見学中にすれ違った人たちも お互いにお辞儀をしあうだけで 会話をすることもなかった。
学生の数が多すぎて 同級生ですら把握できないとブン先生たちも言ってたし、私は完全に学生だと思われていただろう。

そんな話をしながら馬車は走る。
王都の街道は基本的に馬車通り、人通りが多い。ドゥーア先生は風魔法を使ってドーピングしてたけど、あれはどう見ても貴族の馬車であり 家紋もあるから何かあれば問い合わせもできる。
だけどこの馬車はギルドの馬車だ、あまり無茶なことはすべきではない。
しかもサマニア村のギルド馬車は戦闘馬のホースヴァルルくんが先導してくれている。
ただでさえ すれ違う人たちがビビっているので 大人しくしておくべきだろう。こんなに可愛いお馬さんを怖がるなんて ナンセンスだよね。

「ヴィオお嬢様は 本当に怖くないんですね……」

料理人のマキシムさんが呟く。
馬車の屋根に荷物を載せる時 ビビリ散らかしてたもんね。

「うん、目を見てお話すればちゃんと理解してくれるし とっても賢いから可愛いと思う」

「まあ非戦闘員の獣人にとってはきついだろ。戦闘馬は 常に威圧を周囲に振り撒いているからな。俺たちみたいに 戦い慣れている奴らや 気配に鈍感な人族、ドワーフ族は平気なことが多いが、お前さん山羊だろ? 馬は基本的に草食だけど こいつらは肉食だからな。本能的に恐怖を覚えても仕方ねえ。
まあけどこいつらはよく躾けられてるからな、余程馬鹿な事しない限り大丈夫だ」

同乗している料理人は3名、山羊獣人のマキシムさん、サル獣人のルーカさん、ヒト族のベルンさんだ。
どうやら本能的にビビってたのはマキシムさんだけで、ルーカさんもヒトに近い感覚で 怖そうだとは思うけど それくらいなんだって。獣人特性って面白いよね。


首都から 川船の町リスケットまでは1泊2日で到着した。
野営は セフティーゾーンではなく 街道途中の広い場所で。
ホースヴァルルにビビって 他の馬たちが興奮しちゃうからね、この子が居れば この辺の魔獣は寄ってくることもないだろうという事だったけど、お父さんとギルマス、サブマスの3交代で見張り番をしてくれてました。
なんと豪華な三枚盾なのでしょう。誰も破れる筈がないってやつですよ。

食事は全部料理人さんが準備してくれました。私とお父さんは テーブルと食材を出したくらいです。
まあ、最初石のテーブルを作った時には ギルマスから盛大な溜息を頂きましたけどね。
大丈夫、テーアさん達もこれを常識にしている筈だから。

川船では また〔水龍門〕のツンデレボーイに会えるかと思ってたんだけど、行とは違う 貴族船に乗りました。ドゥーア先生が予約をしてくれていたようで、昼前に舟屋に到着したんだけど、1時間後には出航できるという貴族仕様でした。

「なんか、すごい早い?これ、川を遡ってるのに こないだより早くない?」

船の大きさはこないだの半分にも満たないけど、馬車留めもありデッキもあり、休憩できるデラックススイートみたいなソファがドーンとあるお部屋もありました。
料理人3人衆は 落ち着かない様子で ソファの隅っこにチョコンと座ってたよ。
私は即デッキに上がって船首で風を感じております。
一応落ちないように お父さんが後ろに立ってくれてるけど、これってアレみたいじゃない? 
両手広げた方がいい? アイムフライング!とか言った方がいい?


「風魔法を使う魔法使いが乗ってますからね、通常の川船の倍ほどの速さで到着しますよ」

船長に挨拶をしてくると言ってたサブマスがデッキに上がってきた。
そっか、風魔法で追い風をしてるんだね。水魔法のジェット噴射とかしたらもっと早いかな。

「ヴィオ、多分通常よりも早いと思うぞ。ルパインには 夕方には到着するんじゃないか?
それ以上は船が持たんじゃろう」

お父さん、私の心を読みましたか?
そうか、早けりゃいいってもんじゃないもんね。
風魔法の人が疲れたら交代要員になるとだけ伝えておこう。

まあ結局交代することもないまま 日が落ちる前にルパインの町に到着した。
室内で過ごしていた料理人ズは どうやら船酔いしたらしく 非常に顔色が悪い。
とりあえず宿屋に運んで 今日はお休みなさいですよ。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...