ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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はじめての上級ダンジョン

第308話 ゲルシイの森ダンジョン その14

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ゲルシイの森13日目
19階の半分を過ぎ ゆっくり散策中ですがどうしましょう、人がいっぱいです。

5カ所めのセフティーゾーンに人がいるのはこれまでの階でもあったけど、例のボス部屋順番待ちの人たちが集まっているようで 数十人もの人がいるのだ。

「まあパーティー単位だとしたら10組弱じゃないかな?それでも多いね。
入る時に20組ちょっとって言ってたから 多いのは分かってたけど 深層階を目指さないのが思ってたより多いのかも」

「けどここで並んでないと いつまでも入れねえからな」

まあそうだよね。
クルクルする人もこのセフティーゾーンで並んで待つわけだから 仕方がない。
今日はお風呂も 熱々のお食事も残念ながら諦めよう。
お昼にたっぷりサンドイッチを作っておいて良かったね。今日の夜と明日の朝、お昼の分まで念のため作っておいたんだ。

人が多いセフティーゾーンも嫌だけど、仕方がないので伺いました。
ね、本当に、気にしないで良いんですよ。
新参者か~って珍しいのかもしれないけど ジロジロみるのはどうかと思いますよ。

確かにパーティー単位で集まるようになっているみたい。
2つから3つのテントのパーティー、大きなテントひとつのパーティー、そもそもテントを立てずに厚手の布だけを敷いているパーティー等々。

「すまない、今 何組並んでいるか分かるか?」

「下に2組、ここはお前らが来て9組目だな」

「そうか 情報助かる、じゃあ 流石に今日中に10組分進むとも思えないし テントの準備しようか」

トンガお兄ちゃんが 近くでお湯を沸かしていた冒険者の男性に声をかけ 今の順番を確認。
9組という事は11番目という事だね。
このダンジョンも昼夜の差はないので そのまま活動する人たちもいるかもしれないけど、私たちは 基本的に外と同じ体内時計で動いているので 夜は休む。

チラチラ見てくる視線は感じながらも 空いている一角にテントの準備。お父さんとトンガお兄ちゃんが其々土魔法を使って素早く設置すれば 「おぉぉ」とか「えぇっ!?」とか聞こえるけど、ふむ、これが一般人の反応という事なんだね。覚えておこう。

セフティーゾーンは各階に5つあるけど、3つ目と5つ目が非常に大きめの広場になっている。
多分ダンジョン様のお気遣いによるものなのだろ思っているんだけど、それでもここはギチギチって感じである。
まあ9組もいればそうなるだろう。
パーソナルスペースを守りたいならテントの中にいるのが一番って感じだね。

お兄ちゃんたちのテントの入り口は 広場の中心を向いていて、私たちのテントは お兄ちゃんたちのテントの後ろ側に入口がある感じ。トイレの出入りも気にせずに済む。
今夜はこのまま外に出ず、夜の見張りも3人で交代してくれるとの事、ありがとうございます。


◆◇◆◇◆◇


特に絡まれることなく朝が来ました。
ただ これだけの人数が居るのに 然程煩くないのは 【サイレント】などを使って会話をしているからだろうか。テントの中だと防音結界を張ってるかもしれないね。

朝食を終えて準備を整えればテントから出る。
昨日は9組が待っていたけど、この時間で既に5組になっているので 私たちが起きるより早い時間に4組が下りたのだろう。

「ヴィオおはよう、よく寝れた?」

「うん、見張り番ありがとう。テントはもう収納で良いのかな」

「ん~、まあそうしようか。昼には下りれそうだしね。うちのはルンガとクルトが起きてきたら片付けるよ」

最後の見張り番はクルトさんだったんだね。
まだまだ私たちの順番まで時間があるし ゆっくり寝れるだろう。
という事で私たちのテントは収納。畳んだら【クリーン】をかけてお父さんの普通のリュックに入れておく。
パーティーが減ったところは穴あきになっていて、特に 端から順にズレていくという訳ではないらしい。
なので お兄ちゃんたちが見張り番をしてくれていた火台もそのままだ。

「はい、熱いから気を付けてね。父さんも」

「ありがとう、お兄ちゃんも 朝ごはん食べた?」

「うん、さっき中で食べたよ。作り置きしといてよかったよね」

お茶を沸かしてくれていたらしく コップに注いだそれを受け取り フーフーしながらゆっくり飲む。
ルンガお兄ちゃんもまだ寝てるらしくて 外には私たちだけ。

『家族だよね、お兄ちゃんと父さんって言ってたし』
『じゃないとあんな子供連れてこれないでしょ』
『けどさ、ここ上級だよ?危なくない?』
『胸元見てみなよ』
『えっ!?赤メダル? って事は踏破許可って事?家族が金とか?』
『他のパーティーについてとやかく言わない。授業でも習ったでしょ?私たちに関係ないんだから 余計なお世話だよ』


女性ばかり5人組のパーティーが 奥の方でコソコソ話しているのが聞こえる。
まさか聴力強化をされているとは思ってないんだろうけど、お父さんたちも悪口ではないし 気にしていない。

『見張りも兄貴たちにお任せってか、まさにお荷物だな』
『けどその分 親父さんが強ええんだろ』
『留守番じゃ駄目だったのかな、お母さんはいないのかな』
『母ちゃんいるなら家にいるだろ、家族が冒険者なら戻ってこねえで孤児院って事も珍しくねーからな。一緒にいれんならってことじゃねえの?』
『それならしょうがないよね。強そうだもん、家族が守ってるんだよ』


男女混合パーティーは何かよく分からん結論に達したようです。女子二名の “可哀想” という意見が強かったようですね。
そんな待ちすぎて暇になっている人たちの 暇つぶしのネタとして皆さんの想像力と妄想力を楽しく聞いていたら、2人の冒険者が20階からこちらに向かってくるのが見えた。

この周辺は 大方皆が移動するときに狩っているからか魔獣が居ないので2人で充分なんだろうね。
セフティーゾーンに来た二人は 昨日見かけた顔だったので クルクル隊ではなく 下で順番待ちの人なのでしょう。

「次いいぞ、俺らはこれが3周目だから 然程時間もかからねえと思う。
その次の奴らも準備しといて良いぞ」

あらあら、丁寧なご案内ですよ。
自分たちはそのまま転移で戻るらしく 既にボスも2回攻略してるから 時間がかからないという自信。前回と前々回がどれくらいで倒したのか聞きたいですね。
で、彼らの前に待っていた人たちは 深層階を目指す人らしいので 戻ってこない筈との事。

次に下りるのが男女混合チームだったらしく 2人の案内冒険者と一緒に階段に向かって行った。そしてお姉さんたちチームはその次だったらしく テントを片付け始めている。
そうかそうか、ああやって言ってもらえれば そういう事もできるんですね。

モドキな冒険者、アンアンしてた冒険者と、ここのところ変な冒険者を見過ぎてたけど、本来はこういう人たちの方が多いって事だよね。
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