348 / 584
はじめての上級ダンジョン
第309話 ゲルシイの森ダンジョン その15
しおりを挟む1組が20階のボス部屋前ゾーンに行ったことで 残っているのは14名と私たち。4組だけとなった広場は随分閑散として 過ごしやすい。
「そういえば 早朝から20階に行く人たちが多かったの?」
「いや、ヴィオたちがテントに入ってから2組、朝方2組だったから 夜にボス戦した人もいると思うよ。まあその場合は 21階に下りて直ぐのセフティーゾーンで野営かな。
後はボス部屋の前もそれなりに広いから そこで仮眠してから入ったかもね」
そっか、まあボス部屋は次の人たちのための準備時間があるとはいえフルシェは5分だったし、ここが1時間とかのはずがない。
であれば 1時間に1度は交代できるんだろう。となれば既に全員がボス部屋に行っててもおかしくないもんね、休息大事だし、夜は休むべきだね。
納得したところで やることはない。
魔力訓練も人がこれだけ人がいるならやる訳にも行かないし ふむ。
「おお、ヴィオトランプをするか」
「あ、そうだね、折角持ってきたのに使うことが無かったもんね。お兄ちゃんも一緒にしよう」
「ああ、そういえば僕らも時間つぶしの為に買ったはずなのに鞄の底に入ってるかも」
時間さえあれば土人形を頑張って作ってるもんね。
私も 寝るまでは魔力操作の訓練をしてたからすっかり忘れてた。正にこういう時の時間つぶしにぴったりだね。
まずは魔王抜きから始め、七並べを始めたところでルンガお兄ちゃん起きてきて参加。
お姉さんたちの次に待っていた 女1:男4のパーティーが下りた頃にクルトさんも起きてきた。昨日お兄ちゃんが話しかけた人たちは 私たちの前の順番だったんだね。
「くわぁ~、よく寝た。
おお、後2組か テントしまうぞ~」
起き抜けだけど寝惚けてないのは 中で朝食を食べてきたのかな?
テントを素早く収納して トランプに参加する。
「そういえば昨日はあんなに多かったのに 全然来ないし 戻っても来ないね」
「上から下りてくるのは昼過ぎくらいから集まり始めるよ。戻り組が無いのは確かに珍しいね。昨日あれだけいたことを考えたら もっと戻ってきそうだけど……」
常に満員状態なのだと思っていたのに そうでもないから驚いていたんだけど、上から来るにはそれなりに時間もかかるもんね。
夜にかけて 溜まっていくって事なのか。
「お前さんらを見たからだと思うぞ、というかそっちの嬢ちゃんを見てだな」
隣から声が聞こえて思わず振り返ってしまう。
昨日も思ったけど渋い声ですね。バリトンボイスっていうの?葉巻と赤ワインが似合いそうです。
他のパーティーがアレコレ想像を膨らませて好き勝手な噂話を繰り返していた中、この人たちは全く我関せずって感じだったんだよね。
子供嫌いだと思ってたから まさか話しかけられるとは思わなかったよ。
「わたし?」
「あ~、急に話しかけてすまないな、俺たち〔草原の牙爪《そうが》〕銀ランクパーティーだ。
コイツはリーダーのノイシュ、俺は サブリーダーのルーヘンだ。
えっと、何が言いたかったかって 悪い意味じゃねえんだけど、そんな小さい子が赤メダルを持って入れるって事は 自分達でも深層階を目指せるんじゃねえかって勘違いした奴らが多いって事」
ん???
それって今までは ココでクルクルしてたけど、私を連れて行けるなら 思ってたより深層階って楽勝と思ったって事?
それって私の能力と関係なくない?自分の実力があるかどうかじゃないの?
「ああ、このダンジョンは 20階まででもそれなりに稼げるし、ここまでは然程強敵もいない。
だからここを根城みたいにして ずっと繰り返して潜ってる常連が多い」
あ~、モドキとギルド職員の癒着も常連だったからこそなのかな。
まあ ここの2組が下にいて 上に呼びに来るってのも 常連が伝えてルール化してるのかもしれないしね。テーアさん達からそんな事言われたことないもん。
「でも 私がいるのと 戻ってこないのに関係あるの?」
「ん~、そっちの兄貴達は 最近このダンジョンを踏破したんだろう?
常連組がそんな事言っていた。
俺たちは 弟たちのランク上げとマジックバック目的で来ているが、君らはそっちの妹用って感じだろ?
最近踏破した奴らが 妹を連れてこれると判断しているんだから 妹が危険にさらされるようなことはないレベルなんだろう。って事だと思うぞ」
常連が多いと 踏破した人の事とかも覚えてるんだね。
お兄ちゃんたちを見つめてみれば 三人とも不思議顔、うん、これは誰のことも覚えてないってやつですね。
サブリーダーの熊さんも苦笑してます。
「強い奴らの実力を見抜けるならまだ良いが、そいつらの “踏破した” という結果しか見てないから こういう判断をするんだろうな」
踏破者がそう判断するレベルって?
何だか人任せな判断の仕方すぎて危険だね。
自分たちの能力を理解してないって事?大丈夫?
「へぇ、てことは あなた達は 俺たちの実力を見抜けるってこと?」
トンガお兄ちゃん、いつになく挑戦的な物言いだけど 怒っている感じではなく ちょっと楽しんでる?
「冒険者は相手の力量を測るのは常識だ、それくらいできないと死ぬ。
あんたらも大概だが その父親が守ってるなら何の心配もいらないんだろ」
お父さんの威圧感ってこと? 今は訓練中じゃないから魔力も出してないし いつもの優しいお父さんだけど 獣人同士分かり合える何かがあるのかな?
お父さんも お兄ちゃんたちと顔を見合わせている。
「ふっ、過大評価されている気はするけど 光栄だよ。
俺たちは〔サマニアンズ〕、俺がリーダーのトンガだ。こっちは父と妹だ、よろしくな」
「ゲッ、サマニア村の出かよ。だったらそっちの妹も普通じゃねえってことか。
今回は遭難者が続出しそうだな」
トンガお兄ちゃんと あちらのリーダー、狼獣人のノイシュさんが握手をして笑い合う。
そしてサブリーダーのルーヘンさんは熊獣人さん、其々の弟さんとパーティーを組んでいるので 私たちと同じような感じだね。
ところで ルーヘンさん、普通じゃねえとはどういう意味ですか?
540
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる