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はじめての上級ダンジョン
第310話 ゲルシイの森ダンジョン その16
しおりを挟むセフティーゾーンで〔草原の牙爪〕の面々と仲良くなった頃、下りていた男女混合パーティーの二人が呼びに来た。
「では先にいく、俺たちも踏破を目指してるから また深層階で会うかもな」
激渋のバリトンボイスで去って行った4人を見送れば 速攻で昼食準備を始めるお兄ちゃんたち。
まあまだ次の人たちも来そうにない今がチャンスだもんね。
サンドイッチじゃ物足りなかったのかな。
私もスープの準備をしながらそんな事を思う。
「でも あんなに仲良くなったのに さっぱりした別れだったね。冒険者は二度と会えないかもしれないんでしょ?」
熱々スープとお料理をテーブルに並べながらそんな事を聞いてみた。
命のやり取りが常に行われているダンジョンでは ほんの少しの油断で重傷を負うこともある。
いつものダンジョン、いつもの敵と思っていても 突然変異種だったりすることもある。
昨日笑いあっていた人と二度と会えないという事も珍しくはないのが 冒険者なのだ。
「んはひっへんほ はいんぐむぐ」
「ルンガは食べ終わってから喋るように。
というかヴィオってば 忘れてる? 20階のボス部屋前って2組待ち出来るってこと」
ん?
そういえば 一組が中に入ったら もう一組が待っている人たちを呼びに来るんだったね。
という事は 私たちを呼びに来るのは〔草原の牙爪〕の誰かで、その時に中に入るのは さっき呼びに来た男女混合パーティー。
ということは、その男女混合パーティーが戦っている間は またボス部屋前でマッタリ出来るという事か。
「じゃあ なんで次は深層階って言ったんだろう?」
「あっちのリーダーのうっかりじゃろうな。今頃下で気付いて揶揄われとるかもしれんぞ」
あんな激渋な感じで去って行ったのに……。意外とお茶目さんだったんですね、ギャップ萌えですな。
昼食を食べ終え、それでもまだ呼びに来ないので お父さんのお膝の上でお昼寝をしていたらトントンと起こされた。
「呼びに来る前に 上から下りてくるのがそろそろ到着しそうじゃ」
それは起きておかないとだね。
いつ呼ばれても良い様に準備をして ストレッチをし始めたら お兄ちゃんたちも一緒になってストレッチを行い始める。
これも魔力操作訓練と同じように 朝晩のルーチンになってきたね。
「あれっ?今日はもしかしたら一番乗りじゃない?」
「まじか、こんなに居ないのとか初めてだな」
「こんちはっす、今待ちって一組っすか?」
6人組の若そうなグループがテンション高めでやってきました。
一番乗りというセリフが出るという事は常連組という事なんだろうね。
「ああ、今下に二組いるが そろそろ呼びに……、ああ来たな。
待ちは君らだけになる、じゃあな」
「マジか!イエ~イ!そしたら今日は周回めっちゃできそうじゃね?」
「だね、待ちが少なかったら それだけやれるもんね。今回は鞄も期待できんじゃね?」
「「「イエ~~~イ‼」」」
「むかえに……、なんだか盛り上がっているが まだ一組なんだな」
下からのお迎えは 弟さん二人組で、到着した時には若者6人がハイタッチをして飛び跳ねているところでした。
私を見て子供だ云々を言ってこないけど、興味がないって感じですね。
ダンジョンでこんなにパリピな人たちに会うとも思ってなかったので驚きです。
パリピな人達は しばらく盛り上がりそうなので 私たちは弟さん達と20階へ。
階段を下りた先のフロアはセフティーゾーンの1/3程の広さがある。
それでもここが2組としているのは パーティーによって人数が違うからだろう。
「よう」
ちょっと頬を赤らめた狼さんが 片手をあげてご挨拶してくれました。
やっぱりお兄ちゃんが言ってたように あそこで別れると思ってたようです。
「随分前のパーティーが時間かかってた感じだね」
「そうだな、変異種か上位種になってない限り ここのボスはウッドランドリザードのはずだから そこまで物理や魔法に偏っているという事もないんだがな」
お兄ちゃんたちのリーダー同士による会話を聞きながら 二組前を思い出す。確か女子だけの5人組じゃなかっただろうか。
「あ~、なんかあの人たち 貴族令嬢で 学園の同級生だったらしいぞ」
「そうなのか? って お前ら一緒じゃなかったのによく知ってるな」
「俺らのひとつ前の奴らが 聞いたらしい。貴族のお嬢さんって 二人目以降は自分で婿探しをしないと駄目らしくって、あの子達は学園時代から冒険者になることを考えて鍛えてたんだってさ。
貴族も煌びやかなだけじゃなくて 大変なんだな~」
「あ~、そういえばうちのギルドも貴族の何番目って人が学び舎で先生してたな」
お兄ちゃんとクルトさんは 弟さん達と楽し気に会話をしている。
ここは年齢が近いからか すっかり打ち解けている。
ここに到着して30分ほど経った頃 カチリと音が聞こえた。
別に大きな音ではないけど 話していても聞こえるくらいの音。
ふと見れば 壁の絵ようにツルリとなって見えたボス部屋の扉が ほんの少し開いたような、というかいつもの扉と変わらないように見える。
「ああ、終わったみたいだな。じゃあ俺らは行ってくる。
今度こそ 深層階で会おう!」
「ああ、気をつけてな」
皆と拳をぶつけ合い 4人は扉の中に消えて行った。
ああ、後ろから見ているとこんな感じなんだね。
ダンジョンの入り口と同じように 黒い穴に消えて行った4人の姿が見えなくなれば 扉がバタンと閉まり、やはり壁の絵のようにツルンとなった。
「じゃあ俺とルンガで上に声かけてくるわ」
「あ、まあいっか。あの4人だと然程時間もかからないだろうし。よろしくね」
トンガお兄ちゃんはちょっと待ったをかけようとしたけど、彼らなら然程時間がかからないと読んだようだ。
確かにあのパリピとこの空間にずっといるのは辛いんでよく分かります。
ゆっくり迎えに行って。というリクエストを受けて お兄ちゃんたちは19階に戻って行った。
5番目のセフティーゾーンからこの階段までは10分ちょっとで到着する。
往復で20分だとすれば 終わっててもおかしくないよね。
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