ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
356 / 584
閑話

〈閑話〉??????

しおりを挟む
共和国出身のとある冒険者たちがいる。
彼らは其々 冒険者になったばかりの頃は 沢山の夢があった筈なのに、いつしかそれは叶わないと諦め、楽な方、甘い方へと流れて行った。
自分より上のランクだった男に声をかけられて そのパーティーに入った時には まだ引き返せただろう。
サブリーダーに冷たくされて その時点で逃げていれば 普通の冒険者に戻れていた筈だ。
何度も引き返せるチャンスはあったが その全てを見ない振りしたのは自分自身。
そして今も彼と供にいる二人も 同じように 甘い汁を啜る方を選択してきたのだ。


だが そんな彼らに大きな転機が訪れた。
その転機となる仕事は 今までの 誘拐の下準備などという簡単な仕事ではない、ヒトを殺害するという依頼だった。
自分たちが直接手を下すのは嫌だった。
勿論過去に彼らがやってきた事だって 許されることではないが、自分たちが直接手を下していない分 気が楽だったのだろう。

しかしリーダーにより契約はなされ 現場に赴くこととなった。
だがそこで 対象者から思わぬ反撃にあうこととなり、自分たちのパーティーは壊滅状態、同伴していた者たちも入り乱れて 現場は騒然。

この時、腰が引けて対象へ攻撃を仕掛けられなかった3人は 逃げ出す好機だと判断した。
幸い リーダーはたった今 対象の魔法攻撃で首を刎ねられた。
危険な闇魔法を使えるサブリーダーも 対象者の標的となっている。逃げるなら今しかない!

3人は我武者羅に逃げ出した。
共和国と皇国の間には山はないが 国境門以外でも抜け道はいくらでもあった。
彼らは抜け道から共和国へ入り、そのまま南下して 共和国から流れ込む川を渡って リズモーニ王国に入った。


リズモーニ王国はダンジョンが多く 冒険者が多い。殆どの町にギルドがあるから 仕事がないという事はなかった。
彼らがリズモーニ王国に密入国したのは火の季節の半ば、冒険者たちの間では ゴールデントラウト漁に参加するかどうかが話題に上がり始める時期だった。
“一攫千金” そんな言葉を聞いたら 飛びつかない筈もない。

彼らは噂を頼りに プレーサマ辺境伯領地へ赴き、風の季節サマニア村に到着した。
魔魚の討伐と聞いていたけれど  まさか魔法を使う魚だなど聞いていなかった。
ゴールデントラウトの下位である レッドトラウトにすら敵わない。

自分達のように 初めて参加した者達は皆満身創痍、毎年来ているというベテランらしき冒険者ですら苦労している魚を 防具も武器も碌に身に着けていない村人は 軽々と釣り上げている。
人々が魔境だと、あの村の奴らは異常だと言っていた意味がやっと分かった。

だが彼らは この村が好きになった。
へっぴり腰で時々混じるブルートラウトにすら逃げられる自分たちを しょうがねえなと笑いながらも 手助けしてくれる彼らが好きになったのだ。
周辺の魔獣も魔の山の影響で異様に強く、普通の人はこの村に永住することはないという。
だけど彼らは あの世界から足を洗ったんだったら ちゃんと真っ当な冒険者になりたいと思った。
折角抜け出すことが出来たのだから 一から鍛えたいと思った。

たとえ学び舎に通っている10歳未満の子供に勝てなくても、それでも努力をしようとすれば しょうがねえなと笑いながら手助けしてくれるから。
まさか6歳の少女に一番鍛えられるとは思ってなかったけれど、だけど何が大切か、何が足りないかを 真っすぐに伝えてくれるのは有難かった。
学び舎には通えないが 図書室で勉強も教えてもらえるようになった。
今まで逃げてきた事を 今更学ぶのは大変だけど、それでも新しいことを知ることは楽しかった。


「俺たち ダンジョン巡りをして来ようと思ってる」

「へえ、良いんじゃないですか」

6歳の少女が旅立った後、3人で相談して決めた事をギルドの受付スタッフに報告したら 止められることもなかった。

「頑張って力をつけて 今年のトラウト漁に再挑戦するんでしょう? 気をつけて行ってきてくださいね」

住民じゃないから どうでもいいという訳ではなかった。
トラウト漁に再挑戦なんて この村に滞在する理由のひとつでしかなかったけど、いつしか自分たちの目標になっていた。
まさかそれを覚えてくれていたとは思っておらず、思わず3人で顔を見合わせてしまったくらいだ。

「ああ、今年はレッドトラウトをしっかり獲ってやる。風の季節には戻ってくる」

「ゴールデントラウトに挑戦じゃないんですね。
まあ 自分たちの実力を理解するのも大事ですしね。はい、行ってらっしゃい」

そう見送られて 3人はプレーサマ辺境伯領地のダンジョンを巡ることとなった。

3人の中でパーティーの名前を変えないかという話は何度か出ていた。
思い入れがある名前でもないし 前のリーダーがつけたものだから変えても良かったが 慣れてしまったから変えてなかった。ただそれだけの理由だった。
それを あんなに後悔する日が来るなんて思ってなかったから。
もっと早く、せめてサマニア村にいる間にでも変更していればよかった。

そう思っても 後悔は先に立たないのだ。




※いつもヒロ退をお読みいただきありがとうございます。
この度ファンタジー小説大賞に作品をエントリーいたしました! 
本日からコンテスト期間中は1日2話(0時、12時)投稿に変更いたします。
皆様の投票をお待ちしております('◇')ゞ
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...