ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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閑話

〈閑話〉??????

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「ったく、本当にこの山は異常よね」

「俺 ギガントボアって初めて見たけどやっべーっす」

「だが 魔道具の力がよく分かったじゃないか。これで無事に山越えできる」

皇国の子爵領から侵入した魔の山は 結界魔道具のお陰で 魔獣に襲われることなく 反対側のリズモーニ王国へ無事到着した。
険しい山道はそれなりに大変ではあったものの、一流の暗殺者である影3名と 暗殺などを請け負っていた冒険者である。一般人よりは体力もある。
2週間ほどかけて山を越えて来たものの、魔道具の効果が切れたら 即死していただろうと思わせるような魔獣がウロウロしていた。

ギガントボアは理解できたが 図鑑でも見た事が無いような魔獣も存在したし、なにより全てが大きかった。できれば二度と入りたくないが 誘拐犯が隠れるには絶好の場所でもあると改めて実感した。

「そうね、あの威力なら 魔力さえ切らさないように気を付ければ そのまま山を伝って王国に戻れそうじゃない?」

「まあそっすね、ガキ一人じゃ背負っても大した荷物にならねーだろうし、なによりこの山でゆっくり野営とか無理っす」

それは同意しかない。
結界によって魔獣が一定距離より近づくことはなかったものの 常に見える場所にいられる威圧感は 魔力切れを狙っているようで 生きた心地がしなかった。

「で、あんたは裏切り者を探すんだっけ?」

「ああ、ここから一番近くの大きな町でパーティーの動きを確認するつもりだ」

「え?ギルドなんか行ったら 指名手配されて直ぐ捕まるんじゃねえの?」

「いや、生き残りの一人も手配されている筈だが 今もリズモーニで活動しているのは分かっている」

「皇国から出るには 共和国かメネクセス王国、もしくはニーセルブを通るしかない。その3か所のギルドに連絡をしているだけなのではないか?」

「あ~、確かに山越えとかすると思うやついねーもんな」

であれば 3人組はどうやってリズモーニに密入国したのだろうか。
まあ 今回の件が終われば この国に来ることもないだろうし 調べる必要もないか。

その後 メリテントという町で男とは一旦別行動をすることにし 私たちは目的の村について情報収集をした。
どうやら 来月から特別な魚の漁が始まるらしく その時期には多くの冒険者がこの村に集まるというのだ。これは侵入しやすくなるという事だろう。




2週間程 メリテントで情報収集と休息をしていれば 元お仲間を見つけたとの連絡があった。

「ふふっ、運が良いわ。元お仲間ちゃん達ってば 対象のガキとどうやら馴染みたい。自分たちが暗殺しに行った相手の子供と仲良くしてるとか面白過ぎるわ」

「じゃあ そいつらに手引きさせれば楽勝じゃね?」

「では そいつらが戻り次第行くのか?」

全員が暇を持て余していた事もあり、二人はいそいそと準備を始めようとする。

「いいえ、対象は今ダンジョン巡りに行ってるんですって。この時期は他所からの冒険者が増えるから 外に出てるみたいね。
しかもやっぱり色変えしてるみたいよ、元お仲間もそれで分かってなかったみたい。
クスクス、精々役に立ってもらいましょう。
私たちは とりあえずダンジョン巡りをしているっていうから 対象の確認、周辺の破落戸を雇って襲撃をしてもらいましょ。
それでうまくいけば早く戻れるし、無理なら村に戻ってからで良いと思うわ」

「けど どこに行ったか分かんなくねえ?」

そう聞いてくるマックスに手紙を見せれば 納得したようだ。
最北のここからだと かなり距離はあるけど 2か月もあれば十分到着するだろう。
男には そのまま元お仲間への協力依頼を取り付けるよう指示しておいて 3人は王都へ向かうことにした。


風の季節に入り 男から連絡が入り ガキは王都南部のウミユ遺跡ダンジョンに入るとの連絡が来たので早速向かったものの 銀ランク以上の冒険者でなければ入れないと断られてしまった。

「冒険者のカードって偽装できないの?」

「リーダーに聞いたが、あれは魔力登録らしいから無理だそうだ。それから俺たちの場合は登録時点で捕まるだろうから辞めておけとも」

「どーゆーことっすか?」

この国ではダンジョンが多いことにより冒険者も多い。だからこそ 人の出入りが激しくて私たちも動きやすくはあるけれど、こうしたダンジョンに入る時には冒険者のギルドカードが無いと動けない事が多くて困る。
街に入るには商人用のカードで動けるものの ダンジョンには入れないんだから面倒過ぎる。
商人用のカードを作った時のように 偽装できないのかと聞いたら ハンスから無理だとの返答。まさか魔力登録なんてことをしているとは、商業ギルドでは書類審査だけだったからお金を詰めば 名前だって偽装し放題だったのに なんて面倒なの?

「それはその辺りの誰かを捕まえて登録させて カードを奪うってことは出来ないの?」

「採集物とかにつく本人の魔力と カードの魔力で確認するから無理だと思うぞ」

なんて面倒な機能が付いているのだろうか。
ああ、だからこそ あの男たちもカードの書き換えをしてなかったのだろう。指名手配されているのであれば カード情報を書き換えればいいのにと思ったけど、そう簡単にできるものではないようだ。


「じゃあ 私たちが動けないなら 動いてもらうしかないわね。
ここに来るまでにスカウトしてきた屑共に働いてもらいましょ」

「また俺たち暇になるっす」

「まあ 入れなかったとしても町には来るでしょ? 家族ゴッコしてるみたいだし、他の奴らの能力も把握しとけば 攫う時に楽になるじゃない?」

お仲間から引き出せたのは 思った以上に多くの情報があった。
熊獣人に引き取られたガキは 冒険者になるべく動いていると。今は兄達のパーティーと供に上級ダンジョンに入っているらしい。

どうやら定期的に村に手紙を書いているらしく ギルドに顔を出している 元お仲間たちが情報を拾ってきているみたい。
その情報によれば 来月末にはこの町に到着するとの事。
さあ 早くその姿を見せて頂戴。
私たちがちゃーんとお父さんのところへ帰してあげるからね。
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