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ウミユ遺跡ダンジョン 前半
第336話 ウミユ その3
しおりを挟む「美味すぎた! すまん!」
食後の休憩でまったりしてたら、中々斬新な感想を頂きましたよ。美味しかったのに謝罪をされるとはこれいかに。
「くはっ、ヴィオってばどんな顔してんのさ」
いや、だって、どうしたの? ってならない?
トンガお兄ちゃんに爆笑されてるけど、テーブルに額をぶつける感じで頭下げてるもんびっくりでしょ?
「テリュー、何となく言いたいことは分かるがヴィオが驚くから『美味かった』だけでええと思うぞ」
ええ⁉ お父さんは分かるの?
ナニソレ、ベテラン冒険者あるあるな感じ?
「ヴィオ、多分土竜の人たちは、ここまでなにも良いところを見せれてないのに、こんな美味しいご飯を食べて大満足してしまったけど良いのだろうか、しかも6歳の女児に食事の準備も任せっきりで、自分たちは何も手伝いすらしていない。これは良くないのではないか、スマン! って事だと思うぞ」
「俺たちの心情を正にそのまま伝えてくれてありがとう、そして言葉にされると本当に俺たち駄目なベテラン冒険者だって痛感してる。でもすげえ美味かった。ありがとう」
おお! ルンガお兄ちゃんの通訳は完璧だったみたいですよ。そういう事ね、成程それで 美味しかったの後に謝罪だったんだね、納得です。
「お料理が普通じゃないのは他の冒険者さんにも言われたことがあるから大丈夫なの、でも美味しいものを食べたいから、これを常識に出来るように頑張るつもりなの。美味しいって喜んでもらえてよかったねお父さん」
昨日の夜に頑張った甲斐があるというものだ。
「そうじゃな、それにここまでは移動しかすることはないんじゃ、ベテランだろうがやることはないからなぁ。
まあ次回からは料理の準備なんかで手伝ってもらえると助かるな。お前さんらがこれからも上級や特級に潜るんなら、調理が出来た方がええぞ。ダンジョンでの調理に慣れておらんのじゃったら、今回で多少慣れてくれればええ。かなり長い道のりになりそうじゃしな」
土竜の人たちはどうやらあまりお料理は得意ではないらしく、皆の視線が泳いでいる。
「一人一品の得意料理を作れば、それだけでも六種類だよ?
頑張って二品覚えたら十二種類、それだけあれば毎日誰かが作る一品とスープとパンにしても飽きないんじゃない?」
「わぁ、ヴィオってば天才ね! それなら頑張れそうだわ」
うん、ネリアさん本音が出たね。二品までなら頑張れるって事ですね? 他の皆さんも頷いているので頑張って覚えてもらいましょう。覚えた後は食材を変えればいいだけだから、何とでもなるでしょう。
昼食休憩は1時間程、かなりゆっくり休憩してから散策再開。
「あれ? 人数が増えたね。脱落組が追い付いたって事かな?」
トンガお兄ちゃんの言葉にマップの確認をすれば、確かにさっきまで8人に減っていた破落戸が11名に増えている。
「ん? これって11人だけがグルなのか、そことは少し離れたところにいるこの3人も一緒なのか、微妙なところじゃない?」
「あ~確かに。最初に入ってきたのは11人だったけど、追加で増えたのか、偶々なのか、採集の人なのかはちょっと様子見だね」
安全地帯内にいるのは上の階でも最初から見えていた11人なんだけど、それとは別に、絶妙な位置に3人組がいる。
だけど 既に採集目的の町民も2階層に入ってきているから、その人たちではないとも言い切れない。今夜の野営が終わっても位置が変わらなければクロ、居なくなってればシロかな。
様子を見るしかないという事で、石のテーブルを元に戻して休憩は終了。今夜の野営地はこの3つ先にある安全地帯だから、急ぐ必要もなくゆっくり進む。
20分程で休憩していた破落戸系冒険者たちも動き出したけど、明らかにさっきよりも行動がゆっくりだ。
「あっちもご飯を食べ過ぎてお腹いっぱいなのかもね」
「いや、普通に体力切れだろ」
「そうだな、こっちの歩く速さは中々だったし、バレない様についてくる方は大変だったと思うぞ」
テリューさんとレスさんからツッコまれるけど、バレバレだったのに彼らは何に気を付けていたのだろうか。それに6歳の私がついて来れる速度でしんどいと言ってたら、上級ダンジョンなんて来たら駄目じゃない?
「私たち、リズモーニに来て体力回復させておいて良かったね」
「そうだな、ヘイジョーで大分マッタリしてたから、今思えば大分鈍ってたよな」
「そっか〔土竜の盾〕の所属はメネクセス王国だっけ。大陸で一番おっきい国だけどどんな国なの? 金ランクになったら貴族からの依頼が増えるんでしょう? みんな王様に会いに行くの? 王様って怖いのかな」
この大陸の地図の半分を占めているのがメネクセス王国という大国だ。冒険者ギルドの総本部もメネクセス王国にあるんだと習った。トンガお兄ちゃん達も、このウミユを終えたらメネクセスに行くと言ってた。
金ランクに昇格するための単独踏破が必要な中級ダンジョンは、共和国とメネクセスにあるらしい。どちらの国のダンジョンでも良いらしいけど 折角だからメネクセスを選んだと言ってた。
お兄ちゃんたちの所属はサマニア村のままだけど、金ランクの昇格をメネクセスでしたら、そっちの王城に呼ばれたりするのかもしれない。怖い王様だったら理不尽な事を言われるかもしれないから、リズモーニに戻ってきてからの方がいいかもだよね。
「どんな国……、そうだな、穏やかで良い国だと思うぞ。
リズモーニとの国境にある辺境はそれなりに魔獣が多いし大変だけど、俺たちの住んでたヘイジョーって町は、ニーセルブとの国境だから、魔獣被害も少ないし静かな町だったな」
「うん、小さな町だったけど、だからこそ町の人が皆知り合いになるくらい仲良しで、誰かが出産する時なんかは産婆さんだけじゃなくて近所の肝っ玉母さんたちが集まって手伝うの。赤ちゃんが生まれて戸惑っているお父さんに檄を飛ばしてたりもしたわね」
「そうね、子供の成長も皆で見守ってたりして、ハイハイするようになったとか、立ち上がれるようになったとか、町を歩けば誰かが噂しておめでとうを言いに行く感じだったわ」
テリューさんの言葉に続けてアンさんとシエナさんが懐かしそうに、何かを思い出すように微笑んでいる。きっとアンさんの姪っ子さんが産まれた時の実体験なのかもしれないね。
サマニア村も私が来た時、皆で母親役をすると言ってくれた。色変えをしたときも直ぐに通達があったのか、皆普通に受け入れてくれた。田舎あるあるなのかな。
「王様は……どうだろうな、一部貴族からは怖がられてるって噂は聞こえてくるけど、平民からは慕われてるとも聞く。あの国はちょっと前に 色々あって、大改革が行われたからすげえ大変だったみたいだからな」
「歴史の授業で習ったよ、クーデターがあって、その後に流行病で凄く大変だったって。それで王様が交代したんだよね? 」
「それもドゥーア先生に習ったの?」
「ううん、ギルドの図書室で皆に教えてもらったの。最初はリズモーニの歴史から勉強して、メネクセス、共和国って勉強して、その後はリズモーニの貴族について勉強したの」
「え? リズモーニの学び舎ってそんな事も教えているの?」
「オトマンさん、そんなの勉強してるのヴィオくらいだから。普通の子供は 算術と文字の読み書き、魔法と武術くらいだよ」
「ヴィオの夢は大陸のダンジョン制覇だからな、全部の国の歴史を学んでおきたいんだってさ。俺は途中で寝たけどな」
そうだよ、どんなことを学んでるか一緒に聞くって言ってたのに、気付いたらルンガお兄ちゃん爆睡してたんだもん。まだ小国に関しては習ってないけど、次に帰った時に教えてもらえるかな?
「ダンジョン制覇……それは凄い夢だね。でも6歳でこれだけついて来れる冒険者になっているヴィオなら出来そうでちょっと怖いね」
「ああ、ほんとにな。
で、メネクセス王国で金ランクになったからといって王様に会うことはないと思うぞ。貴族からの指名依頼は入るかもしれないけど、そうなる前に国を出れば受ける必要もないしな。
ちなみに今の国王陛下は、元冒険者っていうかなり異色の経歴を持った人だから、もし謁見するとなっても緊張はしないで済むかもな」
ええ⁉ それは流石に習ってないけど、冒険者が王様になるってどんなシンデレラストーリーなの? いや、男性の場合は下剋上って言うのかな? 凄いな、超ヒーロー属性じゃん。
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