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父娘の寄り道旅
第380話 久しぶりのあの村へ
ケストンジェの町で ダム見学を堪能した私たちは 山沿いに北上している。
「ここも辺境なのに 本当にボアが小さいね」
「そうじゃな、これは多分ビッグなんじゃろうが 大きさだけじゃと 普通のボアか分からんな」
山沿いという事で 肉を調達しながら歩いているんだけど、ボアが小ぶりなんですよ。
ダンジョンに出るボアよりは大きいかな? って感じだからビッグボアなんだろうけど、ボアで良いじゃないって思うサイズです。
「これじゃ、この辺のヒュージボアでハンモック風呂は難しいね」
サマニア村では 一頭分でお風呂が作れるけど、この感じだと二頭分を繋ぎ合わせる必要があると思う。繋ぎ合わせると水漏れとかしそうで ちょっと不安だよね。
公爵領は整備された道が多すぎて お肉は町で買い足しを余儀なくされていたけれど、それが解消されてちょっとスッキリ。
碌に魔獣討伐も出来なかったし、盗賊や野盗も居なかったから 本当に移動だけでつまらなかったんだよね。
「夜の間に ウインドダッシュしても良かったかもね」
「いや、ヴィオの睡眠時間を確保するのが一番大事じゃからな。退屈じゃったのは確かじゃが これもまた冒険者の経験になったじゃろ?」
まあそうだね。私たちは【索敵】でマッピングしているし、お父さんが位置情報を的確に判断できる人だから 迷子になることもなく 多分最短移動距離で来ているんだけど、普通の人ならもっと時間が掛かってるんだろう。
そう考えれば うん、これも修行だね。
「この後は ヒルトマン侯爵領地に入るが、山沿いに行くか? ずっと進めばクラベツィアに到着するが、あのダンジョンは前に入ったな」
ああ、そっか。クラベツィアはプレーサマじゃなかったんだよね。
あそこはオークくらいしかいなかったし 洞窟で何の楽しみもなかったからなぁ。
「あ、だったら 北西に移動して ルエメイに行きたい。あそこの遺跡も確認したい」
他の豊作ダンジョンに行った今、確かにルエメイの後半は魅力的ではない。
だけど、あそこはフォレストスパイダーが結構沢山いて 糸を稼げるからね。果物は殆どなくなったし補充しても良いと思う。
「おお、そうじゃな。メモを先生に送っても喜ばれそうじゃ」
という事で 次の目的地はルエメイ遺跡ダンジョンになった。
このまま山沿いを北上しても良いんだけど、肉がショボいと分かったので山沿いに拘る必要は無くなった。
それに山沿いだと大分遠回りになるから 真っすぐ北西に移動することにしたんだ。
ケストネル公爵領地は どこもかしこも整備された道が多かったけど、オランジェ侯爵領地も ヒルトマン侯爵領地も 主要街道以外は それなりに森や林が残されており、小さなお肉は手に入れやすかった。
森や林があるという事は 隠れる場所がある訳で、そうなれば多少の野盗は出てくるのも仕方がない。
だけど 以前の野盗退治後の面倒があるので 今回は【索敵】で分かった時点で 二人に気配隠蔽をかけてウインドダッシュで駆け抜けるという裏技を使って 野盗と対峙しないように移動した。
「それなりにいるけど、ノイバウワーほどではないね。あそこは何であんなに多かったんだろうね」
「確かに あの量は多かったな。川の半分から向こうが手出しできんからという事かもしれんが それにしても多すぎたな」
私が悪者ホイホイの魅力に溢れていたとしても、そもそもの母数がいなければ あんなに出てくることはないもんね。
ゴブリンや ウルフがいるからかと思ったけど、それはノイバウワーでも存在していたし、野盗があんなに多かった理由にはならないだろう。
そして この二つの領地を移動していて分かった事が幾つかある。
まずは プレーサマ辺境伯領地ほど ダンジョンがない。
プレーサマ辺境伯領地は 場所柄 冒険者になる人が多い(特に辺境)、冒険者育成のためにも 旨みのない初級ダンジョンも多く残している。
王都近辺は 学生が入りやすいように 特徴的なダンジョンは初級でも残しているが 中級が多い。
だけど そのほかの領地は 他国に比べればダンジョンを多く残しているようだけど、それでも旨みが無さ過ぎるダンジョンは 国に届け出をしたうえで廃棄しているんだって。
ダンジョンコアを破壊すればダンジョンは数日で崩壊する。
だけど 魔素が溜まりやすい場所という事もあり また何年かしたら出来る可能性もあるということで、次は稼げるダンジョンになるかもしれないからね。
だからなのか、この辺のダンジョンは中級以上がポツポツあるくらいで、ダンジョンに関係ない村や町も多い。いや、プレーサマみたく ほとんどの町がダンジョン管理をしているという方が珍しいらしいけど。
だからこそ 私たちは町に寄ることなく ひたすら北西に向かっております。
人がそれなりに入る中級や 上級ダンジョンは私とお父さんの二人だと止められる可能性が高いし、村に帰れば銀ランクになる事を思えば 無理に入る必要もないからね。
人が集まるダンジョンは気になるけど、地図情報を元にチェックを入れておけば いつでも来れるし、また後の楽しみを取っておいた方が良いかなって。
そういう事で 野営をしながらの移動を続けて 一か月、首都をでてからだと二か月くらいかな。今までで一番長い移動時間をかけて およそ一年ぶりにルエメイの村に到着した。
村の門を守るお兄さんは 見覚えのある人で あちらも私たちを見て 驚いたように目をこすり、もう一度よく見てから大きく手を振ってくれた。
「おぉ、久しぶりだな! 随分大きくなったんじゃないか? 今日はまたダンジョンに入りに来たのか?」
「うん、覚えててくれて嬉しい。
そうなの、別の町に行ってたんだけどね、もう一回ダンジョンに入りたくて来たの」
変な時期に来た旅人だった事、小さすぎる私が珍しかったことでよく覚えててくれたみたいだ。
ギルドタグだけ確認すれば 入村料は支払うことなく村に入れた。
あれ? やっぱり支払いはなかったね。町の大きさによるのかな?
ダンジョンでそのまま泊まっても良かったんだけど、ここまで殆ど町への滞在をしなかったから 今日はお宿にお泊りです。
前回泊まったお宿に行けば 女将さんも覚えていてくれたらしくて 熱烈な抱擁で迎えてくれました。
「本当にまた来てくれるなんて嬉しいね。一年ぶりかい? 随分大きくなって益々美人さんになってきたねぇ。
ダンジョンにはいつから入るんだい?」
一年前に来た客の事をよく覚えてくれているものだなと感心するけど、季節外れの客や 特徴のある人は忘れないんだって。
確かに お兄ちゃんたちも馴染の武器屋を 町に作ると言ってたけど、早々その街に行くこともないだろうことを思えば お互いによく記憶しているものだよね。
女将さんに明日からダンジョン泊をすると言えば びっくりされたけど「あれから一年しっかり修業した冒険者なら そういうものかもしれないね」と頭を撫でられた。
「明日から入るんだったら 一週間分くらいの行動食は作っておいてあげるから 持っていきな」
「ええっ!? そんなにいいの?」
「いいんだよ、ここのダンジョンに冒険者が来るようになるのは もう少し遅い時期だからね。今時分はまだまだ初心者用のダンジョンで鍛え始めた冒険者が多いだろう?
うちのダンジョンは ダンジョン初心者には向かないからね」
そういえば初級ダンジョンのわりに 後半は森だもんね。トニー君は銅ランクになれたのだろうか。あれから一年経っているからなっててもおかしくないよね。
ルン君とナチ君と一緒にダンジョンに行ったりしているのかもしれないね。
サマニア村の皆の事を思い出すと 少しホームシックになる。
ルエメイを終えたら そのまま帰るから あともう少しで皆に会えるんだけどね。
久しぶりのベッドとゆったり入るお風呂に安心して 夕食を食べたらすぐに寝てしまった。
明日からのダンジョン、久しぶりだし気合を入れて頑張るぞ。
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