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告白

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 エリックと近衛騎士に連れて行かれた先は応接間だった。部屋の中央のガラステーブルを挟んで左右に別れて置かれているソファーにの右側に腰掛けていたのはクリスだ。他には5人の近衛騎士を伴っている。

 ああ、最悪だ。

 なぜトライヴス国の顔となる者がたった1人の平民のために動くのか。
 焼印が消えたことでトライヴス国側はアンジェリカを受け入れやすくなっただろうが、もし上手くサンプトゥンから逃げ出せたとしても今度はトライヴスに縛られてしまう。

 アンジェリカとブラックドラゴンを脅威と捉えたのだとしたら、わざわざ迎えに来ずに消し去るべきなのだ。
 サンプトゥンにいようがトライヴスにいようが同じこと。結局争いになる。

 
「突然の来訪、お許しください」


 エリック達の入室と同時に立ち上がったクリスが腰を折る。
 

「いえいえ。それよりも、そんなに急いできた理由を伺っても?」


 エリックの問いにクリスの視線がアンジェリカに向けられる。


「彼女を――アンジェリカ嬢を迎えに参りました」


 真剣で熱の篭った目にエリックはせせら笑った。

 ああ、そういえばこいつはアンジェリカに恋をしていたんだったな。


「迎えにきたとはどういうことでしょう? 彼女は望んでここにいるというのに」

「そうでしたか、ではこちらで健やかに過ごされていたのですね。そのわりには顔色は良くなさそうですが」


 エリックとクリスの間に重苦しい空気が流れる。
 けれどもアンジェリカは口を挟める立場ではない。火蓋は切られてしまったのだ。できるかぎり穏便に済むように祈るしかない。


「私は彼女にあることを伝えたくて来たのです。それが済めば帰ります」

「ほお。伝えたいこととは?」


 煽る様なエリックの視線を無視し、クリスはまっすぐにアンジェリカを見つめた。


「アンジェリカ嬢、どうかこちらへ」


 呼ばれて、エリックに許可を求めるために視線を向ける。その視線に気がついたエリックは軽薄な笑みを浮かべたまま顔を傾けて促した。

 クリスの前に進みでると、クリスはおもむろにその場に膝まづいてアンジェリカを見上げた。
 

「アンジェリカ嬢。私は、貴女に会ったその日に恋に落ちました。この国の王子の婚約者候補だと知っていたから諦めていたけれど、また貴女に会うことができて、蓋をしていた感情を抑えられなくなった。どうか、わたしの妻になってほしい」

「!」


 突然の求婚にアンジェリカは目を見開いた。

 なるほど、そうきたか。

 それを聞いたエリックは笑みを消した。

 平民のアンジェリカに拒否権はない。求婚をした時点でアンジェリカはクリスの手に渡ったようなものだ。

 けれどもクリスはまだアンジェリカの焼印が消えたことは知らないはず。
 罪人の証など関係なくアンジェリカを我が物にするつもりだったということか。

 それほどの想いだということか。

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