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第1章 追放冒険者編

24.危険度Sランク! オークロード

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突然、現れたオークロード。


「ぐおおおお!!!」


「うわああああああああぁぁぁ!!!!」


咆哮だけで冒険者たちを次々と吹き飛ばした。




「まさかこんな大物と会っちまうとはな!」


強気な物言いではあるが、冷や汗をたらすゲルド。

それもそのはず、ゲルドとクラーラは元A級冒険者。
オークロードは危険度Sランク。

クラーラと2人でも勝てる見込みはないのは分かっていた。

しかし、ここで引くわけにはいかない。
1秒でも住民たちの時間を稼がなければならない。


「いいだろう。
これがギルドマスターの最後の務めだ!!!」


覚悟を決めたゲルド。

そして、


「闇魔法『ブライン』」


クラーラは先手を打つ。

暗闇の状態異常にして隙を作るつもりだ。


「荒ぶる炎…」


クラーラが詠唱始めた。

しかし、


「ぐおおおお!!!!!!」


オークロードは巨大な斧を周囲に振り回した。
その力はあまりにも強く、当たらなくても人を吹き飛ばすほどの衝撃を生み出した。


「くっ!!  あああああああ!!」


クラーラはオークロードの背後に回ろうとしたが吹き飛ばされてしまった。

ドガッ!

そして、木に激突する。


オークロードの力任せに振り回す斧の衝撃に耐えて懐に潜り込むゲルド。


「剛剣なる…滅陣!!」


ジェネラルオークを一撃で一刀両断する大技をオークロードに放つ。

しかし、

ズガーン!!!!


「ぐあ?」


ほとんどかすり傷程度しか斬れなかった。


「く!? なんて硬ぇ皮膚してるんだ!?」


ゲルドの大技に全くダメージがないオークロード。

するとオークロードはゲルドに強烈な蹴りを食らわした。


「ぐはぁ!!」


ゲルドは勢いよく飛ばされて木に激突し、その木を倒す。

しかし、まだ勢いは止まらずに木に2回、3回と激突し、倒していった。


ゲルドもクラーラも頭から血を流しながらうつむいている。


「ま、マジかよ…現役引退しているとはいえA級冒険者を一撃で!」


「ば、化け物だ…」


それを観ていた他のB級、C級冒険者たちの戦意が喪失していく。


「ぐおおおお!!!」


するとその戦意を喪失していく冒険者たちを見て
オークロードは雄叫びをあげる。

その雄叫びは、他のオークたちをコブするかのようにオークたちに轟かせた。

そして、オークたちもそれに呼応するように雄叫びをあげた。


「ぐおおおお!!!」


オークたちの勢いは更にまして次々と冒険者たちに襲いかかる。


「ぎゃああああああああああ!!」


「ち、ちくしょぉぉおおおおお!!」


「い、一旦引くぞ!!  抑えきれねぇ!!」


殺される冒険者、負傷する冒険者、逃げる冒険者。

バラバラとなって陣を組む状態ではない。



「……ペッ!  いい蹴りじゃねぇかデカブツ!」


意識を取り戻したゲルド。
口から血を飛ばして強気なセリフを言う。

しかし、実際は肋骨が何本もやられて内蔵もいくつか損傷している。


「最後ぐらい冒険者として死んでやろうじゃねぇか…!」


ゲルドの奥の手が発動する。


「身体強化!!二段階!!!」


魔力を体内に集めて身体能力を上げる手法。

これを更に二段階をすることによって更なる力が手に入る。

しかし、通常でも負担が大きい身体強化魔法を更に上げると寿命を縮めて最悪命の危険もある。


「ぬおおおおお!!!」


ゲルドの周りに緑のオーラをまとう。

しかし、


「ぐおおおお!!!」


オークロードがそれをみすみす放置することはない。

すぐにゲルドに向かって走り出し襲いかかろうとする。


「炎魔法『フォトブリーバ』!!!」


ズドーン!!!!

巨大な炎がオークロードを見込み大爆発を起こす。

炎魔法『フォトブリーバ』。
上級の炎魔法でフラムルジアよりも威力が高い。


「クラーラか!?」


この魔法を放ったのはクラーラ。
クラーラ自身が扱える魔法の中で最も威力が高い。


「…これだけ休む時間があれば詠唱を完了できますよ…」


クラーラは木に激突した衝撃で意識が飛びそうになる中、ずっと詠唱を続けていたのだ。


「ぐおおおお!!!」


オークロードにそれなりのダメージが残る。


「これで終いだ!!!」


だが本命はゲルドの剣。

この一撃で終わらせる!!


「超!!  剛剣なる!!  滅陣!!」


ズバーン!!!!

ゲルドの渾身の一撃がオークロード斬る!!


「ぐおおおお!!!」


真っ二つというほどはいかないが致命傷を負うほどの傷を正面から受けた。


「はぁ…はぁ…」


ゲルドももう限界だ。

身体強化魔法のドーピングとオークロードの攻撃によるダメージで剣が上手く握れない。

だが、それでも倒れるわけにはいかない。
ギルドマスターとして。


「俺の背中には可愛い後輩たちと街の命がかかってるんだ!!」


命を削りながら、まだ倒しきれていないオークロードにトドメを刺そうとするゲルド。


「ゲルドさん!  もういいっす!
あとは俺たちがやりますから!!」


「それ以上動いたら死んじまいやす!!」


ゲルドの言葉、姿勢を観て心を打たれたのか
他の冒険者たちがゲルドを気遣う。


「お前ら…」


ちょっとウルっとしたゲルド。



しゅううううう。


「ん?  なんだ?」


ゲルドの前方から煙のようなものが漂っていることに気づいて前を向く。


そこには絶望しかなかった。


ゲルドの一撃を食らって倒れることのないオークロード。

それどころか、ゲルドから受けた傷が再生していた。

煙は肉がくっついて再生している時に発生したものだった。


「ば、バカな…」


ゲルドはひざを降り座り込んでしまった。

身体強化魔法の負荷とオークロードのダメージで、もう動くことすらできない上に、オークロードは再生しているという絶望的な状況。


「ゲルドさん!!!!  くっ!?」


クラーラは戦おうとするがダメージが大きく立ち上がろうとしたらまた倒れ込んだ。


「ち…力が…入らない…」


更に魔力の使いすぎで脱力状態になる。


ギルドマスター  ゲルドは戦闘不能。
クラーラも戦闘不能。
他の冒険者はオークロードには勝てない。

まさに絶体絶命のピンチだ。


「ふっ…殺すなら殺せ…。
元より死ぬ覚悟だ…」


自分の死に場所を決めたゲルド。


「ゲルドさあああああん!!!!」


他のオークと戦いながら助けることができない冒険者たちはゲルドの名を叫ぶ。


オークロードはその叫びに全く耳を貸さずに
大きな斧を振り上げてゲルドの頭上から振り下ろす。


「あばよ。お前ら。
1人でも多く生き残ってくれ」



ギュン!!!!


ガキーン!!!!!!!



何かがオークロードの斧に向かって空から突撃してきた。

すると斧の振り下ろす軌道がズレてゲルドを避けた。


「すみません!  お待たせしましたー!」


そこにいたのは期待の新人冒険者。
ウェル・ベルクだった。
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