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第2章 新パーティー結成編

44.新技再び

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「俺は…守りたいんです!
命だけじゃない!
できるだけ大切なものを!
俺は冒険者だから!」


村や建物はまた作ればいい。
それも選択肢。
しかし、一生懸命作ったものを壊されるのは
とても悲しいことだ。


「できるだけ…足掻いていたい!
後悔したくないから!」


俺はエリスお嬢様とテンちゃんに想いを告げた。


「ウェル…」


その想いに言葉を失うテンちゃん。


「…自分の命を犠牲にするお人好しが
一番の根底じゃろう?
全く、しょうがないやつなのじゃ」


まぁ、そうなんですよねぇ。


「ウェルは顔の割に頑固アルな。
しょうがないから付き合ってやるアル!」


顔の割にって…。


「シャアアアアアアアア!!!!!!!!」


ヒュドラがこっちに向かってきているようだ。
このままヒュドラが前進すると村に行ってしまう。


「なんとか食い止めなければ!」


しかし、どうする?


「アタシが時間を稼ぐネ!」


「テンちゃん!  無理をしては…」


テンちゃんだってアバラが折れてるほど重症だ。


「ウェルの想いは受け取ったアル…
時間稼ぎくらいわけないネ!」


俺の気持ちを受け取ってくれたのか。
だからこそ無理をしようと。
でも、俺は…。

あぁ、そうか…。
お互いさまか…。

俺も無理をしているからな。
二人ともこういう気持ちなのか。


「光魔法『ヒール』」


エリスお嬢様がテンちゃんに光魔法『ヒール』をかけた。


「揃いも揃って無鉄砲なやつらじゃ。
無詠唱じゃがこれで少しは動けるようになるじゃろう」


無詠唱だと威力が落ちるからな。
即席の応急処置だ。


「エリス!  感謝するアル!」


そして、テンちゃんはヒュドラが来る方向に立ちはだかる。


「シャアアアアアアアア!!!!」


ヒュドラが目の前までやってきた。


「来いアル!!!!」


ズガーン!!!!

ズガーン!!!!



「シャアアアアアアアア!!!!」



テンちゃんはヒュドラの攻撃を上手くかわしながら
ヒュドラを攻撃を与えて注意を向けさせる。

足止めは成功しているようだ。

しかし、相変わらずダメージはあまり与えられない。


「本当に硬いウロコアル…」


ヒュドラに何度も攻撃してきたが
ろくにダメージを与えることができないテンちゃん。


「でもあきらめないアル!
仲間があきらめないなら
アタシもあきらめないアル!!」


テンちゃんは何度も八極気功拳を打ち込む。

そして、何度もヒュドラの攻撃をかわした。


「今のうちにウェルを回復させるのじゃ!」


エリスお嬢様が光魔法を詠唱する。
経絡系がある程度回復すれば
自分自身の回復魔法で全回復し
アイテムボックスからマナポーションを取り出して魔力も回復できる。


エリスお嬢様は俺に光魔法『ヒール』をかける。



「あきらめないアル!
ウェルが来るまで持ちこたえるアル!」


ズガン!!!!

ズガン!!!!


「シャアアアアアアアア!!!!」


テンちゃんとヒュドラの激しい攻防。


「はぁ…はぁ…」


しかし、いくら少し回復したとはいえ
『気』の消耗とダメージの蓄積までは補えない。


「はぁ…はぁ…まだ…まだアル!!」


次第に限界が近づいてきた。

そのとき。


「うおおおおぉぉぉおおおお!!!!」


何やら大勢の雄叫びが聞こえてきた。


「なにアル!?」


テンちゃんが後ろを振り向くと
そこには村の人たちがいた。


「オラたつも戦うど!」


「この村はオラたつの村だ!」


「好き勝手にさせねぇべ!」


村の人たちは剣や盾を持ち、
鎧や兜で全員武装していた。


「無理するなアル!」


テンちゃんの声を無視してヒュドラに向かう村人たち。


しかし、ヒュドラのシッポやキバ、毒ガスが来ると一斉に散らばって避ける。

意外と連携が取れてるぞ!


「田舎モンだげど団結力は負けねぇだ!」


「隙あらば攻撃するだ!!」


しかし所詮は素人。
長くは続かない。


「シャアアアアアアアア!!!!!!!!」


次々とヒュドラの攻撃を受けて動けなくなる村人たち。


「アタシに任せるアル!
取っておきをお見舞いしてなるネ!!」


テンちゃんは残り少ない『気』を使ってヒュドラの頭の一つに仕掛ける。


「八極気功拳!!!」


手に集中した『気』を更に練り上げて力を留める。


「『超発勁』!!!!!!!!」


超発勁。
発勁自体気を練り上げて打ち込む技。
それに対して更に気を練り上げて凝縮して打ち込む。


ズドーン!!!!!!!!


「シャアアアアアアアア!!!!!!!!」


ヒュドラは直撃し、辺り一面に衝撃が轟く。

そして、かなり頭が凹んだ。


「…あとは…任せるアル…」


地面に着地したテンちゃんは力を使い果たして倒れ込む。


「シャアアアアアアアア!!!!!!!!」


しかし、ヒュドラは容赦なくテンちゃんを襲おうとする。


「待て!!!!  ヒュドラ!!!!」


すると1人の少年の声が聞こえた。

犬耳にシッポ、華奢な身体の美少年ワンコ。

ウェル・ベルクだ。


その頃、エリスは。


「ぜぇ、ぜぇ、何とかしてやったのじゃ…」


ウェルを回復させたエリスは魔力を使い果たして倒れている。


「妾がここまでしてやったのじゃ。
勝ってくれなければ地獄に行ってお仕置してやるのじゃ!」


負けたら後が怖い……。


でも、エリスお嬢様の想い、テンちゃんの想い
村人たちの想い。

無駄にする訳にはいかない!!!!!


「ラーニング発動!!!!」


俺はラーニングベースで『気』を左手に集めた。

そして、右手に『魔力』を集めた。


「『気』と『魔』の融合!!!!」


再び融合を試みる。

今度は武器を通さずに一度手のひらで集めてみることにした。

時間をかけず、一瞬で凝縮した。


「凄い力を感じる!」


俺は確かな手応えを感じていた。
この力があればヒュドラを倒せる。
しかし、


「もって10秒といったところか…」


ヒュドラとの決着をたった10秒でつけなければならない。
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