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4話

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「まず、ザイアス殿下。本当に、俺はトランスウェル様に酷いことをされた事実はありません」

そうだな、した覚えはない。
する理由もないしな。

真摯に事実を伝えてくれるルイに対し、まだ疑念を抱いているのか訝しげな表情を崩さないまま殿下は言葉を続ける。


「だが、彼が随分酷い言葉をなげかけたと聞いている。それこそお前のクラスメイトや、先生方にも確認はとっている」


おーおー、いっちょ前に裏を取りやがって。どんだけこの馬鹿殿下は俺を悪者扱いにしたいのやら。情報収集をきちんとしたこと自体は褒めるべきか……いや基本中の基本なのでする必要も無いな。
というかもうちょい精査しろや。


「確かに、強い口調で厳しいご指摘を頂くことは何度も、数え切れないほどございます。しかし、それは平民故に俺が礼儀を逸してしまったり、慣習に慣れないがためにお言葉を頂いていただけです。それ以上のことはありません」

曇りない眼で言い切る庶民に、徐々に焦りを見せ始める殿下は、好きな相手だろうにだんだん声を荒らげてくる。

「っ、だが、時折ケニーに連れ出され、食堂に顔を出さず、日付が変わるほど深夜遅くになるまで寮に帰れないことがほぼ毎日あると聞いているぞ。しかも朝は決まって眠そうに目を擦り付けながら食堂に出てくると……お前、隠しているだけで本当は何かしらアイツから折檻を受けているのではないのか!?」

バカ王子の言葉に、さすがに周囲もざわりとどよめいた声が上がった。
……失礼な奴らだ、全く。
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