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本編 弐
小春と弥一
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「こはー。ただいま!」
弥一は家にいるであろう娘の小春に声をかけた。間もなく、足音がとたとたと聞こえる。
「おかえりぃぃ!!お父さん!こは、ちゃんと待ってたよ!!お利口?すごい?」
6歳の小春は弥一が帰ってきたことが嬉しいのか質問攻めする。そんな姿を見て弥一は幸せそうに笑う。
「…おぉ!小春はお利口だ!凄いぞ小春!!」
弥一は小春を抱き抱えながら家の中に入った。小春はきゃっきゃとはしゃいでいる。
「あのね、こは、お母さんにお花あげたの!見てみて!」
弥一が小春を下ろすと小春は駆け出した。慌てて弥一が追いかけると弥一の妻のちよの仏壇の前にまだ土のついた小さな花が無造作に置いてあった。
「あーー!!こは!また近所のお花を摘んできたのか!?ダメだろー!ちよの花はちゃんと買おうって言ってただろ?」
弥一は小春をみて少し怒っていう。この前もそうだ。何処からか同じ花を小春が摘んでくる。以前も怒ったがいまいちよくわかってなかったのかもしれない。
「…だってね、こはね、「一体どこで摘んできたんだ…」
弥一は小春の話を聞いてはいない。弥一も大変なのだ。ちよが早くに亡くなって小春を育ててきたが、育て方なんてよくわからない。一生懸命しているのはわかるが小春は少し不満だった。
「……ごめんなさい。こは、もうしない。」
小春は謝るくらいしかやれることが無かった。弥一はそれを聞いて「…もうしたらだめだからな。」と小春を撫でて台所へ行った。
「…こは、ちゃんとお父さんと話したい…」
小春はただ弥一と話したかった。今日あった楽しかったこと、困ったこと、悲しかった事___。たわいもない話がしたかったのだ。
「…お父さん、こは、ちょっと遊んでくるね!!!」
小春は台所に向かって声を上げた。
「早めに帰って来いよ!」
弥一は夕飯を作っているからか、優しかった。
小春が家を出て町を歩いて数分たった時、周りを男が囲んだ。
「お嬢ちゃん。こんな時間に何をしているんだ?」
「こは?こはは、お散歩だよ。」
小春は聞かれたことをちゃんと答えた。弥一に言われていたのだ。「こは、お父さんが聞いたことはちゃんと答えなさい?じゃないとお父さん心配だ。」と。
心配されたら困る、と正直に言うことにしたことを思い出した。
「一緒に遊ばないかい?」
男は周りを気にしつつ言う。
「うーん。早く帰るって言ったからちょっとだけだからね!」
仕方ないなぁ、と小春は返事をする。すると男は小春を急に引っ張って路地裏に入った。
「…こは、あっちがいい。」
何だか怖くなってきた小春は男に提案する。
「ねぇ、こは、そっちは嫌だ!!」
男が何も言わないのでもっと怖くなってきた。小春が叫ぶと男は口を塞いできた。
「んー!!」
小春は恐怖におののいていた。でも小春の小さな体では何も出来ない。
「…よした方がいいのではないか?輩。」
後ろから背の高い男の人が声を掛ける。そして小春を後ろに隠した。
「…はぁ!?返せよ。俺が先に手を出したんだ。」
小春を捕まえていた男が助けてくれた男の人に殴り掛かろうとした。
「みっともない男だねぇ。勝ち目もないのに殴りかかって…」
いつの間にか小春の後ろに女の人がいて少し笑う。
「…大丈夫だったかい?えぇと、小春ちゃん?」
女の人をよく見ると弥一の呉服屋の向かいにある南蛮雑貨を扱う店の店主、玖苑さんだった。
「玖苑さん…?こは、大丈夫だよ!ありがとう!!」
小春は明るくお礼をいう。玖苑はホッとしたような笑顔で小春をなでた。
「与太郎、助かったよ。急に言って悪かったねぇ。」
玖苑は男の方を向いて頭を下げる。
「…いや、良かったよ。助かって。…そんな事より。小春?君は手紙を書きたいとか思わないか?」
与太郎、とよばれた男は小春に向かって言う。玖苑は少し呆れたような声で「…小春にまで宣伝かい?」と言った。
「…こは、お父さんに書く。」
小春は与太郎の目をまっすぐ見て言う。もし弥一と話せるならそれしかないとおもったからだ。与太郎は納得したように頷いて小春に紙と筆を渡した。
「お前が考えることをすべて書け。きっと伝わる。」
与太郎は任せろと言わんばかりにドヤ顔をして小春を見た。
・
・
・
「かけたよー!」
小春が書き終わった頃にはあたりが少し暗くなっていて、不気味に見えた。
「そうか。では渡しに行こう。家は何処だ。送っていこう。なぁ、玖苑。」
与太郎は玖苑の方を振り返って言う。
「…そんな事だろうと思っていたよ。…まぁ、あたしが頼んだしねぇ。あいよ。」
玖苑は仕方ないという感じでついてきた。
小春が家に着いた時、弥一が慌てて出てきたところだった。
「っ!こは!!こんなに暗いのにどこに行ってた!?」
弥一なりに小春を心配していたみたいだ。
「ごめんなさい。…」
小春は少し落ち込んだように俯いた。
「…送り届けた。では行こう玖苑。小春、ちゃんと渡すんだぞ。」
与太郎は弥一を見ると安心したように帰っていった。弥一は少し目礼してたようだが。
「…小春?渡すってなんだ?」
弥一は素朴な疑問を投げかけた。
「こはが書いたの。ちゃんと読んでね。」
小春はそう言うと寝床へ走っていった。
弥一は受け取った手紙を1人、読んでいく。読み終わった時、目には涙が溜まっていた。
「小春。おはよう、」
弥一はつぎの日仕事を休み、小春とたくさん話した。これまであったこともこれからのことも。
幸せだな、と小春は思った。あの時助けてくれた与太郎が何者かわからなかったし、玖苑に聞いてもあまり詳しく教えてはくれなかった。
それでも、与太郎に会えたら感謝を伝えたいと思っている。
そんなふうに思いながら町中を歩く12歳の小春は背の高い男の人とすれ違った。
すぐ振り向いて声を掛ける。
「与太郎さん!!」
与太郎はゆっくり振り向いた。
「以前、助けてもらった小春です。あのときはありがとうございました!!」
小春は笑って言う。与太郎はふっと微笑むと片手を上げて歩いていった。
あぁ、やっぱり与太郎は良い人だわ。
小春は幸せな気持ちになりながら弥一のいる家に帰っていった。
弥一は家にいるであろう娘の小春に声をかけた。間もなく、足音がとたとたと聞こえる。
「おかえりぃぃ!!お父さん!こは、ちゃんと待ってたよ!!お利口?すごい?」
6歳の小春は弥一が帰ってきたことが嬉しいのか質問攻めする。そんな姿を見て弥一は幸せそうに笑う。
「…おぉ!小春はお利口だ!凄いぞ小春!!」
弥一は小春を抱き抱えながら家の中に入った。小春はきゃっきゃとはしゃいでいる。
「あのね、こは、お母さんにお花あげたの!見てみて!」
弥一が小春を下ろすと小春は駆け出した。慌てて弥一が追いかけると弥一の妻のちよの仏壇の前にまだ土のついた小さな花が無造作に置いてあった。
「あーー!!こは!また近所のお花を摘んできたのか!?ダメだろー!ちよの花はちゃんと買おうって言ってただろ?」
弥一は小春をみて少し怒っていう。この前もそうだ。何処からか同じ花を小春が摘んでくる。以前も怒ったがいまいちよくわかってなかったのかもしれない。
「…だってね、こはね、「一体どこで摘んできたんだ…」
弥一は小春の話を聞いてはいない。弥一も大変なのだ。ちよが早くに亡くなって小春を育ててきたが、育て方なんてよくわからない。一生懸命しているのはわかるが小春は少し不満だった。
「……ごめんなさい。こは、もうしない。」
小春は謝るくらいしかやれることが無かった。弥一はそれを聞いて「…もうしたらだめだからな。」と小春を撫でて台所へ行った。
「…こは、ちゃんとお父さんと話したい…」
小春はただ弥一と話したかった。今日あった楽しかったこと、困ったこと、悲しかった事___。たわいもない話がしたかったのだ。
「…お父さん、こは、ちょっと遊んでくるね!!!」
小春は台所に向かって声を上げた。
「早めに帰って来いよ!」
弥一は夕飯を作っているからか、優しかった。
小春が家を出て町を歩いて数分たった時、周りを男が囲んだ。
「お嬢ちゃん。こんな時間に何をしているんだ?」
「こは?こはは、お散歩だよ。」
小春は聞かれたことをちゃんと答えた。弥一に言われていたのだ。「こは、お父さんが聞いたことはちゃんと答えなさい?じゃないとお父さん心配だ。」と。
心配されたら困る、と正直に言うことにしたことを思い出した。
「一緒に遊ばないかい?」
男は周りを気にしつつ言う。
「うーん。早く帰るって言ったからちょっとだけだからね!」
仕方ないなぁ、と小春は返事をする。すると男は小春を急に引っ張って路地裏に入った。
「…こは、あっちがいい。」
何だか怖くなってきた小春は男に提案する。
「ねぇ、こは、そっちは嫌だ!!」
男が何も言わないのでもっと怖くなってきた。小春が叫ぶと男は口を塞いできた。
「んー!!」
小春は恐怖におののいていた。でも小春の小さな体では何も出来ない。
「…よした方がいいのではないか?輩。」
後ろから背の高い男の人が声を掛ける。そして小春を後ろに隠した。
「…はぁ!?返せよ。俺が先に手を出したんだ。」
小春を捕まえていた男が助けてくれた男の人に殴り掛かろうとした。
「みっともない男だねぇ。勝ち目もないのに殴りかかって…」
いつの間にか小春の後ろに女の人がいて少し笑う。
「…大丈夫だったかい?えぇと、小春ちゃん?」
女の人をよく見ると弥一の呉服屋の向かいにある南蛮雑貨を扱う店の店主、玖苑さんだった。
「玖苑さん…?こは、大丈夫だよ!ありがとう!!」
小春は明るくお礼をいう。玖苑はホッとしたような笑顔で小春をなでた。
「与太郎、助かったよ。急に言って悪かったねぇ。」
玖苑は男の方を向いて頭を下げる。
「…いや、良かったよ。助かって。…そんな事より。小春?君は手紙を書きたいとか思わないか?」
与太郎、とよばれた男は小春に向かって言う。玖苑は少し呆れたような声で「…小春にまで宣伝かい?」と言った。
「…こは、お父さんに書く。」
小春は与太郎の目をまっすぐ見て言う。もし弥一と話せるならそれしかないとおもったからだ。与太郎は納得したように頷いて小春に紙と筆を渡した。
「お前が考えることをすべて書け。きっと伝わる。」
与太郎は任せろと言わんばかりにドヤ顔をして小春を見た。
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「かけたよー!」
小春が書き終わった頃にはあたりが少し暗くなっていて、不気味に見えた。
「そうか。では渡しに行こう。家は何処だ。送っていこう。なぁ、玖苑。」
与太郎は玖苑の方を振り返って言う。
「…そんな事だろうと思っていたよ。…まぁ、あたしが頼んだしねぇ。あいよ。」
玖苑は仕方ないという感じでついてきた。
小春が家に着いた時、弥一が慌てて出てきたところだった。
「っ!こは!!こんなに暗いのにどこに行ってた!?」
弥一なりに小春を心配していたみたいだ。
「ごめんなさい。…」
小春は少し落ち込んだように俯いた。
「…送り届けた。では行こう玖苑。小春、ちゃんと渡すんだぞ。」
与太郎は弥一を見ると安心したように帰っていった。弥一は少し目礼してたようだが。
「…小春?渡すってなんだ?」
弥一は素朴な疑問を投げかけた。
「こはが書いたの。ちゃんと読んでね。」
小春はそう言うと寝床へ走っていった。
弥一は受け取った手紙を1人、読んでいく。読み終わった時、目には涙が溜まっていた。
「小春。おはよう、」
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幸せだな、と小春は思った。あの時助けてくれた与太郎が何者かわからなかったし、玖苑に聞いてもあまり詳しく教えてはくれなかった。
それでも、与太郎に会えたら感謝を伝えたいと思っている。
そんなふうに思いながら町中を歩く12歳の小春は背の高い男の人とすれ違った。
すぐ振り向いて声を掛ける。
「与太郎さん!!」
与太郎はゆっくり振り向いた。
「以前、助けてもらった小春です。あのときはありがとうございました!!」
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