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本編 弐
玖苑と宗次郎 壱話
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朗らかな昼下がり、南蛮雑貨を営む玖苑は店の中で少しうたた寝をしていた。
今日はお客が少ない____それも町の北側で小さな祭りがあったからだ。
「…ぉ……ん!…く…玖苑ちゃん…!」
名前を呼ばれたような気がしてうっすらと目を開けると顔の近くに宗次郎がいた。
宗次郎は近所の幼なじみで六年前から京都に行っていた。何故かわからないがこの前帰ってきたのだ。
「…っ!!宗次郎さん!何をしているんだい!?」
慌てて姿勢を正すと宗次郎は優しくはにかんだ。
「玖苑ちゃん。お店を閉めて祭りに行かないかな、と思って。誘いに来たんだよ。」
玖苑は祭りが好きだ。賑やかなところが好きなのだ。夜になると紅く灯る提灯も少し歩きづらい神社の石畳もすべてが愛しく感じるほど祭りが好きだ。
「……行かないよ。」
「…親父さんのこと?」
「…あぁ。」
玖苑の父親は4年前、亡くなった。
玖苑の大好きな祭りの日だった。玖苑は店番を父親と変わり、祭りにでかけた。この日はとても楽しかった。だから長く家を空けた。父親はその頃あまり体調が良くなかったらしい。
家に帰ってきた時に店先で倒れていた。急いで医者を呼んだが医者が来た時にはもう……。
その時から玖苑は大好きな祭りに行かなくなった。
「…玖苑ちゃんのせいじゃない。」
「わかってる。」
「わかってない。わかってないだろう?…祭りに行こう?…行こうよ。」
「…行けない。私が祭りにいかなけりゃぁ、父さんを助けられたんだ。…」
玖苑は後ろを向いて 「…もう帰りなよ。」と店の中に入っていった。
「…玖苑ちゃん!!俺が、俺が帰ってきたのは、これを渡すためだ!親父さんの気持ちも全部わかる。親父さんの気持ちが伝わったら、俺待ってるから。紅い提灯が良く見える神社で、待ってるから!!!」
宗次郎は玖苑の背中を見ながら必死にいう。玖苑に届いているのか、わからないまま静かに手紙を置いた。
***
宗次郎が店を出てから玖苑は置いてある手紙を拾った。
如何しても開けなかった。その便箋は昔、父が持っていたものと同じでそこには父の字で「玖苑へ」と書いてあったからだ。
恨み言が書いてあるなんて思わないがあの優しい父だ。きっと玖苑の心配しかしていないのだろう。
まだ、恨み言が書いてあれば良かった。
玖苑は独り泣いた。まるで赤子のように。
***
宗次郎は独り。
やがて紅い提灯の灯りは消えた。
そう、つまり玖苑は来なかったのだ。
***
それぞれの思いが耽る夜が巡る
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