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1巻~Beginning of the unreal〜第1章 ようこそ現実へ
9話
しおりを挟む「さて」
東条はハンモックの上に座り、それっぽいポーズをとる。
魔法が発現したと聞かされて、黙っている事など出来るものか。
彼は書き込みに書かれている先人達のアドバイスに従い、存在も分からない漠然とした何かを感じ取ろうとする。
「………………お?ぅおお?」
今まで何度も同じことをやってきた。そしてその度に、何をやっているんだ俺は……、という虚しさが残るだけだった。
しかし今回は違う。
身体の中にハッキリと、微量ながらも不思議な流体を知覚できる。
興奮に自然と口角が上がってしまう。
「ふぅ…………っ」
呼吸を整え、流れを意識し、掌に収束させ、【火】へと変換する。
主の意思を受けた透明な力は、色を付けこの世に現界しようとし、
……霧散した。
「……ん?」
東条は疑問に思い一抹の不安を感じるが、そこで魔法にはそれぞれ適性があることを思い出す。
気を取り直し、力に意識を向ける。【水】、【土】、【風】、【光】、【電気】、
全てが霧散した。
「ぁっれぇー……」
いよいよ焦りが雫となって肌を伝い、嫌な現実が鎌首をもたげる。
それから三回ずつ各属性で試すも、全て結果は同じ。
魔法を使える人間は、時間の差はあれどもれなく一発で成功している。
どれだけやっても使えなかったのは、スレに集まった一割の人間だけだった。と書かれていたのを読んだ。
「うそやん……」
絶望に目頭が熱くなる。
「別にいいし……俺皆が使えない力使えるし……別にいいし……(ボソッ)」
東条は再び寝っ転がり不貞寝の体勢に入る。
嫌なことなど寝れば大体忘れてしまうものだ。
久方ぶりのまともな寝床は、夢破れた男の涙をそっと受け止めてくれた。
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