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裏に引っ越したその日に、ソウリュウくんは僕を番だと忘れてしまいました。
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「はい、そこまでにしてください」
恐怖で固まる僕の耳に、シンさんの声が聞こえてくる。バタリ、と覆面が倒れ、同時にふわりと持ち上げられた。かすかに香る、ミントの薫り。
「シン、もういいな。これ以上待たされたら変態してすべて壊す。今すぐ北に乗り込んで、おまえの計画をすべてぶち壊してやる」
「ソウリュウ様、お疲れ様でした。ハルチカ様を連れてお帰りください」
縛られたまま見上げると、そこには瞳が黒いままのソウリュウくんの顔が…僕はソウリュウくんに抱き上げられているようだ。
ソウリュウくんは僕の猿轡を外すと、同じようにシンさんに猿轡を外されているライリュウさんに向かって、
「ライリュウ兄上、俺のハルチカに触れた借りはいつか返してもらいますからね」
とものすごい低い声で告げ、ライリュウさんの返事を待たずに踵を返し歩き出す。
「ソ、」
「…ハルチカも。知らなかったとは言え、無防備すぎる。俺は言ったはずだぞ。お仕置きだ」
無表情でスタスタ歩くソウリュウくんはからはものすごい冷気が漂ってくる。怖い。
「待ちなさい!なんなの、…離せ!皆殺しにしてやる!私を誰だと、」
とリンさんの叫び声がしたとたん、ソウリュウくんは向きを変えた。膝を床につけさせられ、捕縛されているリンさんの顔を思い切り蹴り上げる。
「キャアッ!?」
吹っ飛ばされ倒れたリンさんの鼻から血が流れ始める。そのリンさんのカラダを、さらに足で踏みつけたソウリュウくんは、
「貴様、よくも俺のハルチカに手をあげたな。シンに言われて仕方なく我慢したが、すべてケリがついたら貴様は俺が直々に拷問にかけて殺してやる。貴様がハルチカにしようとしたように、最後は焼き付くしてやる。欠片も残らないくらいにな」
その冷たく光る目が恐ろしくて、僕のカラダは震え始めた。こんなに怒っているソウリュウくんを、僕は見たことがない。震える僕に気が付いたソウリュウくんは盛大に舌打ちすると、「貴様のせいでハルチカが怖がってるだろう、この腐れが!」と、またリンさんを蹴り飛ばした。
「ソウリュウくん!」
びっくりして止めようとした僕に、ソウリュウくんはニコリとするが目が笑っていない。ものすごく怖い。
「ハルチカ、大丈夫だ。もう怖くないからな。…シン、こいつは殺すなよ」
…いや、怖いのはソウリュウくんだよ。
ソウリュウくんに射殺すような鋭い視線を向けられたシンさんは、まったく動じることなく、
「ええ、殺しませんよ。トモヒロを初めとして、北に繋がれていたオスたちに好きにさせてやりたいのです。簡単に殺したら面白くありませんからね」
と、こちらもいつもの目が笑ってない顔でニコリとした。
「…トモヒロ!?なんであんたが…っ、キャアッ!」
今度はシンさんの蹴りがリンさんの鳩尾に決まる。真っ赤な顔でエズくリンさんに、シンさんは冷たい目をむけた。いつものシンさんとは違う、ゾッとするような目付きだ。
「トモヒロは俺の番だ。貴様のような腐れが軽々しく名前を呼ぶな」
シンさんの言葉にリンさんの顔が驚愕に彩られる。僕はそのまま、ソウリュウくんに抱えられ部屋を後にした。パタン、とドアが閉まると同時にリンさんの絶叫が響いた。
恐怖で固まる僕の耳に、シンさんの声が聞こえてくる。バタリ、と覆面が倒れ、同時にふわりと持ち上げられた。かすかに香る、ミントの薫り。
「シン、もういいな。これ以上待たされたら変態してすべて壊す。今すぐ北に乗り込んで、おまえの計画をすべてぶち壊してやる」
「ソウリュウ様、お疲れ様でした。ハルチカ様を連れてお帰りください」
縛られたまま見上げると、そこには瞳が黒いままのソウリュウくんの顔が…僕はソウリュウくんに抱き上げられているようだ。
ソウリュウくんは僕の猿轡を外すと、同じようにシンさんに猿轡を外されているライリュウさんに向かって、
「ライリュウ兄上、俺のハルチカに触れた借りはいつか返してもらいますからね」
とものすごい低い声で告げ、ライリュウさんの返事を待たずに踵を返し歩き出す。
「ソ、」
「…ハルチカも。知らなかったとは言え、無防備すぎる。俺は言ったはずだぞ。お仕置きだ」
無表情でスタスタ歩くソウリュウくんはからはものすごい冷気が漂ってくる。怖い。
「待ちなさい!なんなの、…離せ!皆殺しにしてやる!私を誰だと、」
とリンさんの叫び声がしたとたん、ソウリュウくんは向きを変えた。膝を床につけさせられ、捕縛されているリンさんの顔を思い切り蹴り上げる。
「キャアッ!?」
吹っ飛ばされ倒れたリンさんの鼻から血が流れ始める。そのリンさんのカラダを、さらに足で踏みつけたソウリュウくんは、
「貴様、よくも俺のハルチカに手をあげたな。シンに言われて仕方なく我慢したが、すべてケリがついたら貴様は俺が直々に拷問にかけて殺してやる。貴様がハルチカにしようとしたように、最後は焼き付くしてやる。欠片も残らないくらいにな」
その冷たく光る目が恐ろしくて、僕のカラダは震え始めた。こんなに怒っているソウリュウくんを、僕は見たことがない。震える僕に気が付いたソウリュウくんは盛大に舌打ちすると、「貴様のせいでハルチカが怖がってるだろう、この腐れが!」と、またリンさんを蹴り飛ばした。
「ソウリュウくん!」
びっくりして止めようとした僕に、ソウリュウくんはニコリとするが目が笑っていない。ものすごく怖い。
「ハルチカ、大丈夫だ。もう怖くないからな。…シン、こいつは殺すなよ」
…いや、怖いのはソウリュウくんだよ。
ソウリュウくんに射殺すような鋭い視線を向けられたシンさんは、まったく動じることなく、
「ええ、殺しませんよ。トモヒロを初めとして、北に繋がれていたオスたちに好きにさせてやりたいのです。簡単に殺したら面白くありませんからね」
と、こちらもいつもの目が笑ってない顔でニコリとした。
「…トモヒロ!?なんであんたが…っ、キャアッ!」
今度はシンさんの蹴りがリンさんの鳩尾に決まる。真っ赤な顔でエズくリンさんに、シンさんは冷たい目をむけた。いつものシンさんとは違う、ゾッとするような目付きだ。
「トモヒロは俺の番だ。貴様のような腐れが軽々しく名前を呼ぶな」
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