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第一章

もう一度…?①(2月23日修正)

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ハッと目を開くと、見慣れた白い天井が目に入る。

視線を動かすと月や星の形を模したモチーフが目に入る。これは…昨日までいた私の部屋ではない…?こんな飾りは…10歳のあの時にすべて取り払ったのだから。

「死んだように生きていけ」

殿下の言葉は呪いのように私を縛り、蝕んだ。

なぜあんな風に言われたのか、考えても考えてもわからなかった。考え続けているうちに、「私は家族にとっても邪魔な存在なのではないか?」と思うようになった。

私が6歳のとき、双子の弟が産まれた。お父様もお母様も「ヴィーに兄弟ができたよ!」と嬉しそうで、私も自分の兄弟ができたことをとても喜んだのだが、そんなとき、侍女たちの話が聞こえてきた。

「これで侯爵家も安泰ね、やっと跡継ぎのお坊っちゃまたちが産まれてくれて」

安泰、という意味はよくわからなかったが、私ではダメなのだと暗に否定されているのだということは感じた。

なぜダメなのか、どうしてなのか?そのときに、お父様やお母様に尋ねてみれば良かったのだろう。しかし私はできなかった。二重に否定されたらどうしよう、という恐怖心が勝ってしまったのだ。

だから、殿下の言葉を考えるうちに、「私はいらない、存在している意味がない、無価値な人間。家族にも邪魔な人間」という結論を導きだし、重ねて傷つくのを恐れてお父様にもお母様にも殿下に言われた言葉や暴力について相談しなかった。

だんだん鬱ぎこむようになった私を、お母様はとても心配した。双子の弟に手がかかり大変なのに、私との時間をもってくれようとした。

しかし弟たちの侍女の、「お嬢様はもう大きいのに、まだ奥様に甘えて独り占めしようとするのかしら。まったく情けないわね。後継ぎのお坊ちゃまたちに奥様も手をかけたいでしょうに」という陰口に、ますます自分を邪魔者だと思うようになった。

殿下が言うように、私はただの穀潰し、侯爵家にいるべき人間ではないんだ。でも、この家を出て、どうやって暮らしていけばいいのかわからない。だから毎日、なるべく人目につかないように部屋に閉じ籠り、侍女たちにも手をかけさせると思われているのではないかと恐れ、必要最低限のことだけをしてもらうことにした。

お母様は、私がおかしくなったのは殿下との顔合わせからだとお父様に訴えた。そもそも、婚約者ではなく妃候補とはなんなの?そんな中途半端な立場で、ヴィーはどうなるの?貴方からお断りして、ヴィーを守って!

でもお父様は動かなかった。お母様はしびれを切らし、私を連れて家を出ようとしたが、王家から待ったがかかった。皇太子の妃候補である娘を侯爵家から連れ出すことは認められない、と。私だけが連れ戻され、お母様は追い出された。

お母様がいなくなり、弟たちには、「お姉様のせいだ!」と散々責められた。お父様も、私を見なくなった。必要事項はすべて執事や侍女を通して伝えられ、私との接触を殊更避けた。思いがけず屋敷の中で会うと、無表情のまま通りすぎる。私は最早、お父様の中には存在していないようだった。
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