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第一章
もう一度…?②
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「あら?お嬢様、今朝はもうお目覚めでしたか?」
私の顔を覗き込むようにして声をかけてきたのは…
「…マーサ…」
「おはようございます、お嬢様」
そう言うとニッコリ笑って、私の身体を起こしてくれる。少し前かがみにさせると、背中の後ろにクッションを入れてもたれさせてくれた。
「今朝は早くお目覚めになったのですねぇ。いま、カーテンを開けますね」
シャッという音とともに部屋の中に光が溢れる。
…やっぱり、私の…幼い頃の部屋だ。
自分の手を見てみると、やはり小さい。戻った…ということ?それともあれは、今までのことが、夢だったの?でも、崖下に叩きつけられたときの衝撃や、その後襲われた痛みは確かに本物だった。
「マーサ」
カーテンを開けた後、水を入れたグラスを持って近づいてきたマーサは、グラスを私の手にそっと持たせる。
「どうしました?お嬢様」
ああ、マーサだ。お母様が追い出された後も、態度を変えることなく私の面倒をみてくれたマーサ。
マーサの顔がぼやける。
「…お嬢様!?」
マーサは、私の手からグラスを取るとサイドテーブルに置き、私の額に手を当てる。
「熱はないようですが…どうされました?どこか痛いところがあるのですか?」
エプロンのポケットからハンカチを取り出し、優しく私の目元に当てる。フワッと、ラベンダーの香りがする。ああ、そうだ。マーサのハンカチは、いつもラベンダーの香りがしていた。とても、とても安心する香り…。
私は、マーサに抱きついた。
「…お嬢様?」
抱きついたまま、声をあげて泣く私の背中を優しくさすってくれる。私が落ち着くまで、ただただそばについていてくれた。
「マーサ、ごめんね。ありがとう」
「いいえ、お嬢様。お気になさらず」
ニッコリ微笑み、私の頭を撫でる。
「早く目が覚めたのは、怖い夢を見てしまったからですか?どんな夢だったんでしょう?お嬢様をこんなに泣かせるなんて…いけない夢ですねぇ。夢では、このマーサも叱りつけることができなくて残念です」
フンッと鼻息荒く言うマーサに、思わずフフッと笑ってしまう。
「…ありがとう。マーサ、ありがとう」
いいえ、お嬢様、というと、マーサは、先ほど置いたグラスを再度私の手に持たせる。
「少しずつでいいので、お飲みになってください。涙で、たくさん水分が出てしまいましたからねぇ」
「…うん」
喉を通る冷たさが心地よい。ホッと息を吐くと、マーサがまた頭を撫でてくれる。
「今日はお天気もいいですし、朝食の後に奥様とお庭をお散歩されるのもいいかもしれませんねぇ。お嬢様の好きなピンクの薔薇もまもなく見頃ですし。
今年はお花が咲いたら、薔薇の花びらでお茶を作ってみましょうか?お嬢様も大きくなりましたし、ご自分の手を使って何かを作ってみるのも楽しいのではないでしょうか?」
マーサの優しさにまた涙が出そうになり、ギュッと目をつぶる。これ以上心配させたくない。
「…マーサ、ありがとう。だいすき」
マーサに抱きつくと、マーサもフワッと抱きしめかえしてくれる。しばらくの間、そうしてマーサの温もりを確かめた。
私の顔を覗き込むようにして声をかけてきたのは…
「…マーサ…」
「おはようございます、お嬢様」
そう言うとニッコリ笑って、私の身体を起こしてくれる。少し前かがみにさせると、背中の後ろにクッションを入れてもたれさせてくれた。
「今朝は早くお目覚めになったのですねぇ。いま、カーテンを開けますね」
シャッという音とともに部屋の中に光が溢れる。
…やっぱり、私の…幼い頃の部屋だ。
自分の手を見てみると、やはり小さい。戻った…ということ?それともあれは、今までのことが、夢だったの?でも、崖下に叩きつけられたときの衝撃や、その後襲われた痛みは確かに本物だった。
「マーサ」
カーテンを開けた後、水を入れたグラスを持って近づいてきたマーサは、グラスを私の手にそっと持たせる。
「どうしました?お嬢様」
ああ、マーサだ。お母様が追い出された後も、態度を変えることなく私の面倒をみてくれたマーサ。
マーサの顔がぼやける。
「…お嬢様!?」
マーサは、私の手からグラスを取るとサイドテーブルに置き、私の額に手を当てる。
「熱はないようですが…どうされました?どこか痛いところがあるのですか?」
エプロンのポケットからハンカチを取り出し、優しく私の目元に当てる。フワッと、ラベンダーの香りがする。ああ、そうだ。マーサのハンカチは、いつもラベンダーの香りがしていた。とても、とても安心する香り…。
私は、マーサに抱きついた。
「…お嬢様?」
抱きついたまま、声をあげて泣く私の背中を優しくさすってくれる。私が落ち着くまで、ただただそばについていてくれた。
「マーサ、ごめんね。ありがとう」
「いいえ、お嬢様。お気になさらず」
ニッコリ微笑み、私の頭を撫でる。
「早く目が覚めたのは、怖い夢を見てしまったからですか?どんな夢だったんでしょう?お嬢様をこんなに泣かせるなんて…いけない夢ですねぇ。夢では、このマーサも叱りつけることができなくて残念です」
フンッと鼻息荒く言うマーサに、思わずフフッと笑ってしまう。
「…ありがとう。マーサ、ありがとう」
いいえ、お嬢様、というと、マーサは、先ほど置いたグラスを再度私の手に持たせる。
「少しずつでいいので、お飲みになってください。涙で、たくさん水分が出てしまいましたからねぇ」
「…うん」
喉を通る冷たさが心地よい。ホッと息を吐くと、マーサがまた頭を撫でてくれる。
「今日はお天気もいいですし、朝食の後に奥様とお庭をお散歩されるのもいいかもしれませんねぇ。お嬢様の好きなピンクの薔薇もまもなく見頃ですし。
今年はお花が咲いたら、薔薇の花びらでお茶を作ってみましょうか?お嬢様も大きくなりましたし、ご自分の手を使って何かを作ってみるのも楽しいのではないでしょうか?」
マーサの優しさにまた涙が出そうになり、ギュッと目をつぶる。これ以上心配させたくない。
「…マーサ、ありがとう。だいすき」
マーサに抱きつくと、マーサもフワッと抱きしめかえしてくれる。しばらくの間、そうしてマーサの温もりを確かめた。
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