21 / 110
第ニ章
動き出す、二度目の人生②
しおりを挟む
お父様は次の日から計画通り、一週間邸に帰って来なかった。
お身体が大丈夫かと心配になったが、お母様は
「平気だよ。あいつは、ヴィーの前ではただのアホになってしまったが…失礼。仕事の時は、私がいなくなった後に前回のヴィーが感じていたような、どちらかと言えば冷徹な男でね」
国王陛下をも黙らせる氷の宰相と呼ばれているくらいだし、一週間くらいなんてことないよと言ってあまり気にしてないようなので、私もマーサに手伝ってもらいながら自分の出国のための準備に取りかかった。
「お嬢様、ドレスはあちらでも作れるでしょうが、お気に入りのものはすべて持っていきましょうね」
マーサが手早くドレスをカバンに詰め込んでいく。
「ねぇ、マーサ」
「なんですか?」
「私は、今見た目は5歳だけれど…中身は18歳でしょ?」
「ええ、そうですね」
「おばあ様と話していて、…訝しがられないかしら」
マーサは手を止めて私を見ると、優しく微笑んだ。
「お嬢様…これは、マーサ個人の意見ですが…。
お嬢様自身が味方になって欲しいと思う方には、前回の人生のことをお話してはどうかと思うんです。
確かに、奇想天外な話ですし…信じてもらえるかどうかはわかりません。
でも、ごまかすよりは、正直にお話ししたほうがいいのではないでしょうか。
私も大奥様にお会いしたことはないのでどんな方かわかりませんが…きっと、きちんと向き合ってお話しすればわかってくださると思いますよ」
なにしろ、奥様のお母様ですからね。
そう言うマーサに、私はコクンと頷いた。
「それにたぶん、奥様が秘密にしておいたりはしないと思います。
お嬢様を守りたい、それなら味方は多いにこしたことはありませんからね。
奥様と、それについてはお話してみるといいかもしれませんよ」
「わかった、聞いてみるね」
まだお会いする前から、変な風に警戒しても仕方のないことだ。
石橋を叩いたところで、何が起こるのかは誰にもわからない。その時その時で、誠実に対応していくしかない。
お母様は、はじめからカーディナルのおばあ様には打ち明けるつもりだったと言った。
「手紙で書く内容ではないから、とりあえずまだ何も伝えてはいないけど。
カーディナルについたら、早目にお話するつもりだよ」
くそじじいには言うかどうかわからないけどね、と黒い笑顔で呟いた。
一週間後、ヨレヨレになったお父様が帰ってきた。あまりの窶れぶりに、思わず涙がにじむ。
「お父様…!!」
抱きついた私を優しく抱き止め、お父様は優しく笑った。
「ただいま、ヴィー。
会いたかったよ…!!」
「お父様、お帰りなさい!!
お仕事、お疲れ様でした…!
夜、眠る時間はとれましたか?
お食事は大丈夫でしたか?」
二人で感極まって抱き合っていると、お母様がからかうように「たった一週間でこんなふうになってしまって、この先大丈夫なのか?ロレックス?」と言った。
「大丈夫じゃない…!」
私をぎゅうぎゅう抱き締めてお父様が言う。
「でも!でも、ヴィーを助けるためだから…我慢する!!」
「…ロレックス」
お母様が、お父様の背中をさすりながら言う。
「私はまだ出産まで日がある。
だから、おまえのことをこちらに迎えに来ることも可能だし、カーディナルで定期的にヴィーと会うようにしたらどうだ?」
「いや、大丈夫だ。
我慢する…。
たとえばだけど、王妃陛下に…魔法を使って感づかれたりしたら何にもならないから」
寂しそうに笑うお父様。
「お父様、私…私も、我慢しますね!
お父様に会えない間、頑張って…変わったね、って。
お父様に感心していただけるように…!」
だから…次に会えるのを楽しみにしていてください、と言いながら…涙がにじむ。
「ロレックス、いい加減にしろ!今生の別れじゃないんだぞ!
ヴィーも!ロレックスにつられすぎだ!」
「だって…だってぇ」
お父様は私を抱き締めてボロボロと涙を流した。
「ヴィー、絶対に、前回と同じ目に遭わせたりしないからね。
お父様が、お父様が、必ずヴィーを守るから…!!」
だから、自分を諦めないで、とお父様は言った。
お身体が大丈夫かと心配になったが、お母様は
「平気だよ。あいつは、ヴィーの前ではただのアホになってしまったが…失礼。仕事の時は、私がいなくなった後に前回のヴィーが感じていたような、どちらかと言えば冷徹な男でね」
国王陛下をも黙らせる氷の宰相と呼ばれているくらいだし、一週間くらいなんてことないよと言ってあまり気にしてないようなので、私もマーサに手伝ってもらいながら自分の出国のための準備に取りかかった。
「お嬢様、ドレスはあちらでも作れるでしょうが、お気に入りのものはすべて持っていきましょうね」
マーサが手早くドレスをカバンに詰め込んでいく。
「ねぇ、マーサ」
「なんですか?」
「私は、今見た目は5歳だけれど…中身は18歳でしょ?」
「ええ、そうですね」
「おばあ様と話していて、…訝しがられないかしら」
マーサは手を止めて私を見ると、優しく微笑んだ。
「お嬢様…これは、マーサ個人の意見ですが…。
お嬢様自身が味方になって欲しいと思う方には、前回の人生のことをお話してはどうかと思うんです。
確かに、奇想天外な話ですし…信じてもらえるかどうかはわかりません。
でも、ごまかすよりは、正直にお話ししたほうがいいのではないでしょうか。
私も大奥様にお会いしたことはないのでどんな方かわかりませんが…きっと、きちんと向き合ってお話しすればわかってくださると思いますよ」
なにしろ、奥様のお母様ですからね。
そう言うマーサに、私はコクンと頷いた。
「それにたぶん、奥様が秘密にしておいたりはしないと思います。
お嬢様を守りたい、それなら味方は多いにこしたことはありませんからね。
奥様と、それについてはお話してみるといいかもしれませんよ」
「わかった、聞いてみるね」
まだお会いする前から、変な風に警戒しても仕方のないことだ。
石橋を叩いたところで、何が起こるのかは誰にもわからない。その時その時で、誠実に対応していくしかない。
お母様は、はじめからカーディナルのおばあ様には打ち明けるつもりだったと言った。
「手紙で書く内容ではないから、とりあえずまだ何も伝えてはいないけど。
カーディナルについたら、早目にお話するつもりだよ」
くそじじいには言うかどうかわからないけどね、と黒い笑顔で呟いた。
一週間後、ヨレヨレになったお父様が帰ってきた。あまりの窶れぶりに、思わず涙がにじむ。
「お父様…!!」
抱きついた私を優しく抱き止め、お父様は優しく笑った。
「ただいま、ヴィー。
会いたかったよ…!!」
「お父様、お帰りなさい!!
お仕事、お疲れ様でした…!
夜、眠る時間はとれましたか?
お食事は大丈夫でしたか?」
二人で感極まって抱き合っていると、お母様がからかうように「たった一週間でこんなふうになってしまって、この先大丈夫なのか?ロレックス?」と言った。
「大丈夫じゃない…!」
私をぎゅうぎゅう抱き締めてお父様が言う。
「でも!でも、ヴィーを助けるためだから…我慢する!!」
「…ロレックス」
お母様が、お父様の背中をさすりながら言う。
「私はまだ出産まで日がある。
だから、おまえのことをこちらに迎えに来ることも可能だし、カーディナルで定期的にヴィーと会うようにしたらどうだ?」
「いや、大丈夫だ。
我慢する…。
たとえばだけど、王妃陛下に…魔法を使って感づかれたりしたら何にもならないから」
寂しそうに笑うお父様。
「お父様、私…私も、我慢しますね!
お父様に会えない間、頑張って…変わったね、って。
お父様に感心していただけるように…!」
だから…次に会えるのを楽しみにしていてください、と言いながら…涙がにじむ。
「ロレックス、いい加減にしろ!今生の別れじゃないんだぞ!
ヴィーも!ロレックスにつられすぎだ!」
「だって…だってぇ」
お父様は私を抱き締めてボロボロと涙を流した。
「ヴィー、絶対に、前回と同じ目に遭わせたりしないからね。
お父様が、お父様が、必ずヴィーを守るから…!!」
だから、自分を諦めないで、とお父様は言った。
169
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる