【R18】今度は逃げません?あの決意はどこへ~あまくとろかされてしまうまで~

蜜柑マル

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皇太子サイド

俺という存在意義①

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俺の名前は、ジークフリート・モンタリアーノ。

モンタリアーノ国の第一皇子として生を受けた。

父はモンタリアーノ国王、エルネスト・モンタリアーノ。
母は、アンジェリーナ・モンタリアーノ。この国の王妃だ。

俺の一番古い記憶は、3歳、弟のカイルセンが生まれた日のものだ。

「無事にお生まれになりました、皇子様です!」

聞こえてきた声に、父様が「アンジーは!?」と叫ぶ。

「王妃様もお元気です、ご立派ですね、お二人続けて皇子様をお産みになって」

今、処置を受けておりますから、もう少しお待ちください、と声の主はまた部屋に戻っていく。

「ジーク、聞いたか?おまえに弟ができたぞ!」

父様は、俺の頭をグリグリ撫でるとヒョイっと抱きあげた。

「早く顔を見たいな」

「はい」

弟、という未知なるものに、なんだかワクワクする気持ちで返事をする。

しばらくすると、「陛下、お待たせいたしました、どうぞ」と部屋に通される。

「アンジー、よく頑張ったな!」

父様は、俺を抱いたまま母様のベッドの脇に用意された椅子に腰をおろす。

「エル…ジークも…ありがとう」

母様はニコッとすると、「ジーク、この子が貴方の弟よ」と言った。

母様の横に寝せられている、小さな赤ん坊。青い瞳でこちらをじっと見ている。

「母様、赤ちゃんとは、こんなに小さいのですね」

「そうよ、可愛らしいでしょう」

そろそろと指を伸ばし、頬っぺをツン、とする。ほにゃりとした柔らかさと温かさに心がほわっとする。

「こちらを見ていますね」

「まだ、産まれたばかりで目の力は弱いから、はっきり見えているわけではないらしいけれど…声は聞こえているから、たくさん話しかけて、お兄様だぞって教えてあげてね」

「はい!」

「エル、名前は決めたの?」

「うん、最終的に…『カイルセン』はどうだろう?」

「いい名前ね!…貴方は、カイルセンよ」

お母様はそっと横を向いて優しく微笑んだ。

「陛下、そろそろ…王妃様もお疲れですので」

「ああ、そうだな。アンジー、また後で来るよ。
まずは、ゆっくり休んでくれ。
ありがとう」

「エル…私のほうこそ、ありがとう」

母様は、「ジーク、またね」と言ってゆっくり目を閉じる。

「ジーク、母様はいま、カイルセンを産んだばかりで疲れているから…少し、休んでもらおう」

はい、と答えてもう一度弟に…カイルセンの頬に手のひらを当てると、「ふわっ」と流れこんでくる魔力。それと同時に、シャラン…と上から光がこぼれてきた。

「あら…?」

母様がパチッと目を開けてカイルセンを見る。

「あら…カイルセンは、光の魔法が使えるのね」

そう言って、上半身を起こそうとする。

「王妃様、無理をなさっては…」

「うん、なんだか…大丈夫なの」

母様は、カイルセンを腕に抱く。父様が、「平気なのか?」と心配そうに母様の背中に手を添わせる。「ジークを産んだときは、3日ほど起き上がれなかったろう?」

「ええ…初めての出産でもあったから、身体だけじゃなく気疲れみたいなものもあったんでしょうね、緊張したり、痛みへの不安だったり…。
ただね」

と言って、カイルセンをじっと見つめる。また、シャラン、と先ほどの光が降ってきた。

「今はもう、だるさも痛みもないわ。
エル、この子…カイルセンは、光の魔法を使える子よ」

「光の魔法?」

「ええ。魔力の量は私と同じくらい…目も青いし、そんなに強くはならないと思うけど…。
ケガを治したり、身体を回復させてあげることができる魔法を持ってるようだわ」

魔法の中でかなり珍しい特性よ、と母様は行った。

「そうか、カイルセンはすごいな。
こんなに小さいのに、もう母様を気遣えるんだな」

父様と母様が笑い合う中、俺は顔が強ばっていくのを感じた。

「母様…」

「ジーク?どうしたの?」

母様は、俺の顔を見ると、父様にカイルセンを「抱っこしてあげて」と渡し、ベッドをポンポンと叩いて「ここにおいで」と言った。

「俺は…」

「うん?」

「俺は、なんの役にも立たない?」

「ジーク?」

「カイルセンは、役に立つ魔法…。俺の魔法、なんの役にもたたない」

母様は驚いた顔をすると、俺の頭を優しく撫でた。

「ジーク、役に立つとか立たないとかじゃないわよ。
魔法の特性の話よ」

「でも…」

「でも?」

「俺の魔力、ここで何にも使えないよね?」

「…ジーク」

俺の魔法の特性は、炎だと母様に教えられていた。自然に関係する、炎、水、風、雷、すべて使えるがその中でも炎が強いと。

「光の魔法なんて、母様、教えてくれなかった」

「あのね、ジーク。さっき言ったように、光の魔法は、母様の故郷のカーディナル魔法国でもかなり珍しいのよ。
母様も、あちらを出るまで光の魔法を使える人間には会ったことがない。
貴方のおば様にあたる、私の妹…カーディナルの女王も、光の魔法は使えないわ」

だから、存在すら疑問視されていたんだけどねぇ…と言う。

「珍しい特性だけど、役に立つかどうか、というのはまた違う、」

「でも、母様の身体を治してあげたんだよね!?」

こんな小さい赤ん坊なのに…。
俺の時は、3日も寝込んだって…。
俺は母様をツラい目に合わせただけで、カイルセンは母様を助けてあげた。

生まれたときから全然違うなんて。

俺は悔しくて、部屋を飛び出した。

「ジーク!」

父様が後ろから追いかけてくる。

俺の前に回り込むと、しゃがんで目線を合わせる。

俺が目を逸らすと、「ジーク。父様を見なさい」と厳しい声で言った。

しぶしぶ視線を戻すと、そこには真剣な顔の父様がいた。

「ジーク。カイルセンの光の魔法、それは確かに母様の身体の疲れをとってあげたんだろう。
珍しい特性だと母様も言った。だが、」

父様は俺の手をギュッと握る。

「この国では、魔法自体が珍しいんだよ。現に父様だって、国王陛下なんて呼ばれてるけど魔法は使えないよ?」

じゃあ、父様は役立たずだね、と言う。

「違います!父様は、役立たずとかそんなんじゃない!」

「そうだろう?魔法の特性がなんであれ、ジークも、カイルセンも、モンタリアーノの皇子であることに変わりはない。
皇子として…王族として、国のため、民のため、どうしたらいいのかを考えられるようになってほしい」

はい、と返事をしたものの、俺は納得がいかなかった。
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