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皇太子サイド
カーディナル魔法国へ①
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父様の執務室にやってきた母様は、父様の話を聞くとボロボロと涙をこぼした。
「ごめんね、ジーク。
頼りない母でごめんねぇ」
謝って済むことじゃないけど、と母様は俺をギュッと抱き締める。
…久しぶりに会う母様に、俺はなんの感情も起きなかった。むしろなんで泣くのか。謝って済むことじゃない、と言いながらごめん、と泣く。
ズルいと思った。
俺が会いたいときには避けて、自分の都合で抱きしめたりする。
「私が、魔力のコントロールを教えてあげられればいいんだけど、ジークの魔力を私が制御しきれるかわからない」
母様はそう言うと、「ジーク」と真っ赤になった目で俺を見た。
「はい」
「私の妹…カーディナル魔法国の女王である妹が、貴方と同じ黒い髪、赤い瞳で、王族の中でも更に魔力が高いの。
妹はね。幼い時に悪漢に襲われて。自分はなんともなかったけど、一緒にいた乳母が妹を庇って斬られてしまったの」
「斬られた…」
「…残念なことに、乳母は亡くなった。
その時から、あの子は変わったの。5歳なのに、宮廷魔術団に毎日毎日押し掛けて。
『私の命の保証はいらない』って誓約書まで書いて、訓練に参加したの」
母様は、その時のことを思い出すように目をつぶった。
「訓練から帰ってくると、傷だらけでねぇ。
両親も、私たちきょうだいも、何度もやめてって言ったわ。普通に魔力を使いこなす訓練で充分だって。
でもあの子は聞かなかった。血を流そうがなんだろうが、絶対に行くのをやめなかった。
『私のせいで彼女は死んだ。私が甘かったせいで死んだ。私は、もう、私に関わる人を死なせたくない』って言って。
そして、魔法を完璧に使いこなすようになった。
16歳で、魔術団の第二部隊副隊長になった。
父様は、反対したわ。でも、魔術団の団長に、是非ともお願いしたいと言われて。本人は、反対されてもどこ吹く風だったし」
「16歳で…」
「だから、妹ならば…あの子なら、ジーク、貴方が魔力をコントロールできるように導いてくれるはずよ」
母様は、俺を見つめると「あの子は厳しいわ。できるなら行かせたくない。でも、今の状態が良くないこともわかってる」と言いながらまた抱き締める。
「母様」
俺は、母様の抱擁からスルリと抜け出した。今まで、安心を与えてくれたその腕の中は、今は居心地の悪い場所でしかない。
母様はちょっと驚いたような顔をして、言った。
「なあに、ジーク」
「俺は、こんな…存在しないかのように扱われながら生活していくのはイヤです。
ここが、キライです。父様と母様が、…みんなが俺を嫌いなように」
「ジーク!?」
「私たちは…!」
「どうでもいいです」
そう。あの人が言っていた。心底、どうでもいい。
「だから、カーディナルに行きます」
母様は、ごめんね、ごめんね、と繰り返した。
父様は、何も言わずただ俯いていた。
「ごめんね、ジーク。
頼りない母でごめんねぇ」
謝って済むことじゃないけど、と母様は俺をギュッと抱き締める。
…久しぶりに会う母様に、俺はなんの感情も起きなかった。むしろなんで泣くのか。謝って済むことじゃない、と言いながらごめん、と泣く。
ズルいと思った。
俺が会いたいときには避けて、自分の都合で抱きしめたりする。
「私が、魔力のコントロールを教えてあげられればいいんだけど、ジークの魔力を私が制御しきれるかわからない」
母様はそう言うと、「ジーク」と真っ赤になった目で俺を見た。
「はい」
「私の妹…カーディナル魔法国の女王である妹が、貴方と同じ黒い髪、赤い瞳で、王族の中でも更に魔力が高いの。
妹はね。幼い時に悪漢に襲われて。自分はなんともなかったけど、一緒にいた乳母が妹を庇って斬られてしまったの」
「斬られた…」
「…残念なことに、乳母は亡くなった。
その時から、あの子は変わったの。5歳なのに、宮廷魔術団に毎日毎日押し掛けて。
『私の命の保証はいらない』って誓約書まで書いて、訓練に参加したの」
母様は、その時のことを思い出すように目をつぶった。
「訓練から帰ってくると、傷だらけでねぇ。
両親も、私たちきょうだいも、何度もやめてって言ったわ。普通に魔力を使いこなす訓練で充分だって。
でもあの子は聞かなかった。血を流そうがなんだろうが、絶対に行くのをやめなかった。
『私のせいで彼女は死んだ。私が甘かったせいで死んだ。私は、もう、私に関わる人を死なせたくない』って言って。
そして、魔法を完璧に使いこなすようになった。
16歳で、魔術団の第二部隊副隊長になった。
父様は、反対したわ。でも、魔術団の団長に、是非ともお願いしたいと言われて。本人は、反対されてもどこ吹く風だったし」
「16歳で…」
「だから、妹ならば…あの子なら、ジーク、貴方が魔力をコントロールできるように導いてくれるはずよ」
母様は、俺を見つめると「あの子は厳しいわ。できるなら行かせたくない。でも、今の状態が良くないこともわかってる」と言いながらまた抱き締める。
「母様」
俺は、母様の抱擁からスルリと抜け出した。今まで、安心を与えてくれたその腕の中は、今は居心地の悪い場所でしかない。
母様はちょっと驚いたような顔をして、言った。
「なあに、ジーク」
「俺は、こんな…存在しないかのように扱われながら生活していくのはイヤです。
ここが、キライです。父様と母様が、…みんなが俺を嫌いなように」
「ジーク!?」
「私たちは…!」
「どうでもいいです」
そう。あの人が言っていた。心底、どうでもいい。
「だから、カーディナルに行きます」
母様は、ごめんね、ごめんね、と繰り返した。
父様は、何も言わずただ俯いていた。
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