花束を君に

鈴木なお

文字の大きさ
2 / 3

交通事故

しおりを挟む
次の日も野村さんは病室に来てくれた。

担当の看護師なのだから当たり前かもしれない。

だけど記憶喪失をしてしまい、不安で仕方がない私にとって野村さんの存在は温かく感じられた。

朝ご飯、昼ご飯、夜ご飯を野村さんが運んでくれる度に私は嬉しくなる。

人からケアされることがこんなにも嬉しいと思ったのは初めてに近いかもしれない。

「体調どうですか?」

野村さんはそう言ってニッコリと笑ってくれた。

「(…野村さんってやっぱりイケメンだよね。)」

ふと、野村さんを見てそう思った。

こういうカッコいい人はどういう人を好きになるんだろうか。

だけどきっと、こんなにカッコいいのだから綺麗な人を好きになるんだろうなと思った。

野村さんが食べ物がのっているオボンを机の上に置いてくれる度に私は彼の横顔を見つめる。

とても美しいと思った。

こんなに顔の整った人にお世話をしてもらえるなんてとても嬉しく感じる。

「あの…。」

野村さんが急にそう言った。

ビクリと心臓が跳ね上がり、ドキドキする。

「なんですか?」

野村さんは少し照れ臭そうに自分の顔を触っている。

「いや、ジッと顔を見てきてるのでなにかついているのかと思って。」

「いいえ!なにもついてないですよ!」

「そうですか。なら良かった。」

野村さんはそう言うとホッとしたような表情を浮かべる。

私はそんな野村さんを見て「やっぱりイケメンはどんな表情をしてもイケメンなんだな。」なんてバカみたいなことを思った。

私がそう思っていると野村さんは照れ臭そうな表情を浮かべる。

「実は僕、結構、仕事が忙しいのでたまに顔とか髪になにかついてたりするんですよ。」

「あー、看護師さんってすることたくさんありそうですもんね。」

「そうなんですよ。」

だからさっき野村さんは照れ臭そうだったのかと私は納得がいった。

野村さんは私より多分、年上で大人っぽい感じの人だ。

だけどそういうタイプの人が急に照れたりすると少しキュンとくるものがある。

これがいわゆるギャップ萌えというやつなのかもしれない。

「それと、体調良くなって良かったです。」

野村さんはそう言って満面の笑みを浮かべる。

私はその笑顔を見てまたもやキュンとしてしまい、なんて自分はチョロいやつなんだろうと再確認した。

「野村さん、交通事故でしかも意識不明で運ばれてきたから一時はどうなるかと思ったんですよ。」

「(…交通事故?)」

実を言うと私は自分が交通事故にあったことすら覚えていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...