幸せになっても良いですか? 完

鈴木なお

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旅に出よう

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中村さんはそのまま頬を桃色にしながら私の手を握った。

「え。どうしたんですか?」

私は突然のことに驚き、心臓が飛び跳ねそうだった。

だが、中村さんはいつも以上に真剣な眼差しを私に向けている。

その眼差しは夕暮れの鋭い光にも負けないくらい真っ直ぐだった。

とにもかくにも、中村さんが真面目になにかを言おうとしているのは明確だ。

私は中村さんが何を言うのかをジッと待っていた。

すると中村さんは私の目をより真っ直ぐに見つめる。

そしてこう言ったのだ。

「言っても良いですか?」

中村さんの頬がより一層、桃色に染まる。

その桃色は夕暮れにも負けないくらいの鮮やかさだった。

それはまるで中村さんの心をしっかりと映し出しているようにも見える。

中村さんがこんなにも私に承諾を得ようとしているのだ。

きっと重大なことを言おうとしているに違いない。

「はい。どうぞ。」

私はゴクリと唾を飲み込んだ。

そして中村さんはギュッと私の手を握り、口を動かした。

「前からあなたのことが好きでした。ずっと前から。」

突然のことに私は一瞬、フリーズした。

だけど中村さんの真剣な眼差しを見る限り、冗談で言っているわけではなさそうだ。

ユラユラと夕暮れの光は輝き、その光は私と中村さんをしっかりと照らしていた。

まるでスポットライトみたいで、このシーンから逃れることはきっとできないだろう。

私は中村さんの手のひらからじんわりと伝わる温度を感じながら答えた。

「ずっと前っていつからですか?」

私がそう尋ねると中村さんは恥ずかしそうに口を動かす。

「田原さんが入院していた時からです。」

「そうですか。そんな前から…。」

意外だった。

まさか中村さんがそんなにも前から私のことを思ってくれていたことが。

「(じゃあ、もうずっと中村さんは私のことを…?)」

過去の記憶がよみがえる。

カズヤと病室でリンゴを食べていた時、カズヤと中村さんで雑談をしていた時。

その記憶のどんな時も中村さんは私のことを女性として見ていたのだろう。

記憶と感情が複雑に絡まり合い、私は照れくさくなった。

中村さんも照れくさそうだ。

なんだか私たちお揃いなんだなって思えた。

「中村さん、私、幸せになっても良いんですかね?」

私がそう質問すると中村さんはとっさに答えた。

「もちろんです。幸せになって良いんじゃないですか?」

私は照れながらこう返した。

「じゃあ中村さん、私と幸せになってもらっていいですか?」

私がそう聞くと中村さんは目を輝かせた。

「喜んで!」

それから数週間後、私は退院した。

隣には中村さんがいて、これから旅行に出かける予定だ。

カズヤがくれた保険金を片手に私は次の幸せへと向かっていた。
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