カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

文字の大きさ
114 / 169
王総御前試合編

40

しおりを挟む

 これでかなりこちらの防御力は増した。とはいえこの防護壁はカウンターが起動するというだけでダメージを軽減できるわけではない。あくまで攻撃をためらわせて牽制する技だ。
 またカードを使用した自分にすらだれに本物の狼がついているのかわからないが、それはキゼーノも同じ。防御力のあるテネレモ、そしてハイロとキゼーノという一流のヴァルフの二人がいるこの状況ではやつも全員に攻撃をあてるというのは簡単ではないはずだ。
 相手のナミノリドッグはハイロとの戦いですでにかなり消耗していた。決定的なダメージが入ったことで、キゼーノもたまらずナミノリドッグを手札に戻した。

「死んでいた気迫がよみがえったようだな。貴様のいうとおりカードゲームには見えない力が働いている。すなわち勝利を引き寄せる運と、相手のミスを誘う気迫、そしてどんな状況にも揺らがない頑強な精神力。限界まで高められた技術を持つもの同士の戦いでは、わずかな気力の差が勝敗を決する。その点で貴様と我方では勝負は見えているように思えたが……この土壇場で牙を取り戻したか。……いや土壇場だからこそ、か」

 キゼーノの放ってくる気迫。試合を楽しんでいる表情。自分のカードと戦術、デッキへの信頼と自信。やはり彼女は本物のカードゲーマーだとつくづく思わされる。タイプはまた違うが、これほどの強さはデイモン氏との一戦を思い出させる。
 彼女を一目見たとき、優れた使い手だとすぐにわかった。目の奥に昔の自分やデイモン氏と同じものを感じたからだ。
 全力で挑まなければ勝てない。その焦りから手に無理が出てしまっていた。だが今はようやくおちつきを取り戻せた。自分の役目はキゼーノとカードゲーマーとしての優劣を競うことじゃない。チームの勝利のために局面を魔法でコントロールすることだ。
 
 キゼーノはまだ余裕のある態度で、

「それでよい。精を尽くして戦ってもらわねば、カードに対し無礼というもの」 

 この底知れない敵に対しては一瞬の油断も許されない。彼女が喋っている間も、こちらは手をゆるめずに次のカードを切る。

「長々と喋って思考の時間を稼いでいるのかもしれませんが……もうその手は通用しませんよ。テネレモアドバンススキル【ドレインフラワー】」

 敵のウォリアーから攻撃力を一定量奪い、自分のものに加算するという技だ。エンシェントでも効果はほとんど同じである。

「こざかしい。いまさらそんなものが通用するとでも」

 キゼーノはそう言いつつも的確に対応してくる。くらげ傘のスキル【小落下傘機雷(しょうらっかさきらい)<ミニブロリー>】で、敵に飛んでいった無数のタンポポの綿のような種たちは撃ち落されてしまった。相手のスキルはトラップ系統の技で、小さな傘の爆弾が壁のように平面一列に出現する。盾や罠としては優秀な技だ。だがタネの狙いは別にある。

「誰もあなたのカードから吸い取るとは言っていません。吸収するのは地面にある水です!」

 キゼーノに飛んでいった種はほとんど撃ち落されたが、広間の中に広がった種からは芽が育ち、花を開く。ドレインフラワーはみるみるうちに床の水を吸い取って消していった。
 この御前試合ルール、同じトリックカードは2回までしか使えない。それに対しスキルはオドコストが許す限り何度でも使用できる。これで【魔物のひそむ湖(みずうみ)】は封じたも同然。

「精を尽くす? 精を尽くすことになるのは……あなたのほうかもしれませんよ」

 俺の言葉に、ぴくっと反応するキゼーノ。わずかに顔をひきつらせたように見えた。底知れない力を持つ不気味な美少女が、ようやく人間らしいところを見せてくれた。
 相手のカードは逃げも隠れもできない。ハイロとローグが一斉に相手にかかって戦闘力の高さで押し込んでいく。
 これでいい。これが今の自分の役割だ。
 キゼーノに向かって、カードを構える。

「剣ではなくカードで身を守る戦法はあなたのスタイルを参考にしました。自分もカードゲームのなかの一部だと考えるとしっくりくる。特にこのコマンドという役はプレイヤーに近い……。あの二人は違いますが、そもそも僕はエンシェントには向いていない。だけどカードゲームなら……カードゲームで決着をつけるというのなら……望むところです」


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...