6 / 31
偽の「貸し切り」
しおりを挟むある晩、常連さんから電話が入って「今日も貸し切りなのか」と訊かれました。
驚いて、暫く顔を出せなかったから照れ隠しのジョークを言ってるのだと思い「え、貸し切り。あれぇ、ええ、そうなんです。貸し切りだけどいらしてください」などと支離滅裂なことを言ったのが恥ずかしいです。
「どういう意味か。いいから、ママに変わって」
私では埒が明かないと思われてしまいました。電話をママに代わってもらい、直ぐにカウンターに戻ってニコニコ顔のヤマショウの相手をしていたら、ママが表を見てきてと言うのです。
カウンターを離れかけた時、出勤してきたチーママが「表に貸し切りって張り紙があるけど」と入ってきました。
私は小走りで外に出てドアの表を確認しました。
黒々としたマジックで『貸し切り』と書かれて貼られている白い紙。その紙を剥がすように言われました。
「誰がこんな悪戯を」
ママが訝しげに呟いて、私も首を傾げました。思い当たることがなかったからです。
私たちはヤマショウを疑うことはありませんでした。今思うと、何故疑わなかったのか不思議でならないのですが……
ヤマショウひとりが毎晩貸し切り状態でちやほやされて自分の店のようにのびのび楽しんでいたのに、です。
数日間の客足のなかった理由は解明され、取り敢えず悪戯対策にはマメに表を確認することだということになって、お客さんも戻ってきました。
時代は平成初期。スマホもタブレットもなく、ビデオテープ全盛期で、ストーカーと言う言葉すらなく、集団ストーカーなるものの存在など全く知らなかった時代です。
ヤマショウに比べたら私たちはみんな、人を疑うこともなく簡単に陥れられる能天気な善良おバカでした。
ですから、それとこれとは、いいえ、殺人事件ですよね。はい。関係性ですか。話が長い……わかりました。では……
★★★
思考盗聴を検索しよう !!
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる