走れ守銭奴!!(完結)

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

文字の大きさ
26 / 27
第4章 君にハンガリー狂詩曲

誰にも見せたくない

しおりを挟む

社長が帰宅して直ぐに、町田所長がケンタッキーフライドチキンを手土産にやって来た。

宿便まで出したのにも関わらずぽっちゃりしている社長に比べて、げっそり痩せた町田所長は、墓場から抜け出してきたゾンビみたいな骨と皮になって、ラルフローレンの数万円もするジーンズのジャケットをブカブカと着た歩くハンガーになっている。

大体、今時の沖縄で長袖ジージャンかよ暑いだろうと思うけど、クーラーどっぷり高額所得者には似合っている。


「一足遅かったか」


(何故、メスライオンに会えなかったくらいで肩を落とすのかわからない。会えなくて良かったですよ、町田ショチョー。

うちのシャチョーも、此処だけの話ですが顔だけはゾンビも恐れる生き霊になっていましたから。心筋弱かったら見ただけで棺桶が必要レベルですよ。

先ずは救急車を呼んでから会った方が……

あのメスライオンをものにしようという男がこの世にいるとは疑いたくないけれど、町田ショチョー、少し考えた方が……)


町田所長を同情しつつ薄く笑う。


(シャチョオォォ……あんなみっともない姿は誰にも晒すなぁぁぁ。見ても良いのは息子の僕だけだぁぁぁ)


と、叫ぶ。
すっかり息子のつもりでいるらしい。



処で、全ての人の上を平等に時は流れる。

男と金にルーズなケーメージェーンは両親の厳しい監督下に措かれて休学中だった某キリスト教女子短大へ復学して(げっ、あいつってば女子大生だったの。しかも、未成年者がピンサロバイトしてもお叱り程度なわけか)と大影に泡を吹かせた。

女タラシのジョージは折角チャラになったというのに、今度は車欲しさに二百万のローンを組んで毎月返済貧乏を余儀なくされたいらしい。大影から頭金の五十万を借りた。

大影はケーメージェーン連れ戻し謝礼五十万とお駄賃の五十万合わせて百万円を返金させられ、諸々の出費と入院費で青ざめて鼻血さえも出ない。

ジョージからの法廷金利内の利子を楽しみにするだけだ。

(来年こそはユメミル商事の奴隷の身分から解放されるべく地元経済学部に受かりたい……実家は家賃も水道光熱費もただだから)

そんなことを考えつつ、社長の応募小説をパソコンに打ち込みながら(売れっ子小説家の秘書も悪くないかも)なんて、夢見ている。


(これからは他人様のトラブルとか、余計なことに首を突っ込むような金儲けを企むのはよそう。バカな真似には必ず罰が下るみたいだ。二十歳になったら税金払わなくちゃあならないし、遠回りでも地道に稼ぐ方が一番利口だ。少年刑務所行きを免れただけでも感謝。神様って本当にいるんだなぁ。感謝)


大影も少しずつ大人になっていく。



町田所長の手土産を持って、週明けに手術予定の玲二の部屋を訪ねた。

しつこく絡んでピアノのレッスンを受ける。


「ピアノはな、鮹になったつもりで弾くんだ」


毒蜘蛛が鮹になれと言う。


「よし、わかった。タコだな。任せておけ。秋月、いつかふたりで連弾デビューしようぜ」

「そんな同情はいらない」


秋月玲二は冷たい目で睨む。


「あほな。天才に同情するほど甘くないよ。折角金の成る木を目の前にしているのに、単なるドージョーで金儲けできる訳ないじゃないか、なぁ」


真剣な顔で迫る。


「噂には聞いていたけど本当に恐るべき金の亡者だよね。片腕の身障者にピアノ弾かせて金儲け企むなんて、そんな悪どい奴だったんだ。金儲けの為には同情もしていられないと……」

「何でみんなして僕を苛めるんだろう。悪どい奴だって……ケンタッキーフライドチキン持って来たじゃないか」


町田所長の手土産のケンタッキーフライドチキンだ。大影は一円も出していない。


「ケンタッキーフライドチキンくらいでオトスつもりか」

「良いだろう。友達じゃないか、トモダチ……」


ただで使える言葉なのに、秋月に対して使う『トモダチ』というフレーズが財布の奥に納めた特別な記念コインの如く甘く響く。両腕がうずうずする。


「トモダチ……」


耳に口をつけんばかりに接近して囁いた。


「友達……お前、今は生徒と教師の間柄だ。甘えるなよ。ちゃんとピアノを弾け。手は鍵盤の上に置く。何をしに来たんだ。ほら、鍵盤の上……待って、本当に何をしに来たんだ、ヒーロー」

「待たない」


入院中、大影は秋月に何度か迫って猫パンチを喰らっていたから、そこは経験値がものを言う。両腕から封じた。


「あれ……お、お前……おっぱいがある……」

「触るなっ。見るなっ」

「双子って、嘘だったのか……」

「見せろ」

「嫌だっ。ドスケベっ」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

処理中です...