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第一章 復讐とカリギュラの恋
(12)近親相姦生き地獄
しおりを挟むメナリーは止めてと叫んだが、声にならない。猿ぐつわは喉を詰まらせそうなほどの布で息をするのがやっとだ。
身を捩ったが、両足を捕まれて思い切り開かせられていてはただ腰を振っているようなものだ。
目の前で股を開いているのが自分の母親だと知らずに、ジグヴァンゼラは立たされたものを挿入しようと近づく。
メナリーは眼を見開いて身を捩り、ジグヴァンゼラは「そんなに動くと出来ないよ」と明るく笑った。
ジグヴァンゼラの背後から、メナリーの両足を掴んでいたルネも笑う。
「楽しいゲームだろう、ジギー。さあ、お前自身を解放するのだ。何度も何度も射精してお前の古い塊を生まれ変わらせるのだ。お前は新しい時代の新しい領主になる。権力を知れ。お前の父親は弱く大人しい。この伯爵家は滅びようとしている。お前はこの国の王政を支える力を持った領主になるんだ」
ジグヴァンゼラ、止めて
私はお前の母親よ
止めなさい、ジグヴァンゼラ
石造りの階段を一人の女がゆっくり上って来る。女はほっそりと痩せてベージュに近い白の寝間着姿で、二階の廊下に出た。
ヴェトワネットはメナリーの半身を押さえるのに疲れて手を離したが、馬車の中で幾度となく絶頂を迎えたメナリーの身体は、涙を流して拒絶してはいるものの本人の意志を裏切って、脳のシナプスが膣の神経と直結しているかの如くに反応する。
メナリーはジグヴァンゼラが自分の中で果てた時に、地獄が終わったと勘違いした。地獄は始まったばかりだった。
果てて母親の身体の上に倒れ込むジグヴァンゼラの後ろから、ルネがジグヴァンゼラに挿入した。ルネがジグヴァンゼラを突き上げる動きがメナリーの身体にも伝わる。
止めて止めて止めて
私の息子に何をするのっ
叫んでも、ルネは笑うだけで、メナリーの中で萎えていたはずのジグヴァンゼラの一物も復活する。
ルネが動きを小さくすると、ジグヴァンゼラが激しく腰を前後に動かし始めた。ジグヴァンゼラはメナリーとルネの間で何度も果てた。
メナリーは息も絶え絶えになって、死んだ方がましだとかルネを祟り殺してやるとか、快感に痺れる身体とは裏腹などす黒い呪いを吐いた。
外は暗くなっていた。ジグヴァンゼラはぐったりして何度もね落ちしたが、ルネが寝かさなかった。そのうちにルネも飽きたのか、母親の上で眠りかけたジグヴァンゼラの目隠しをほどいた。
「ジギー、見てみろ。お前が悦楽を与えた女を。お前は相手を知ることによって解放されるのだ」
ジグヴァンゼラはメナリーの胸の上で眼を開けた。少し腕を立てて身体を離す。
「「……」」
泣き濡れて化粧のぼろぼろになった母親が、猿ぐつわを噛んで叫んだ。眼を瞠開き、ジグヴァンゼラの背後を睨んでいる。
ジグヴァンゼラは身体を離そうと腰を引いた。そうはさせじとルネが突く。
ジグヴァンゼラは母親とルネの間から離れようともがいたが、ルネはジグヴァンゼラを押さえつけて激しく突き上げた。
メナリーの隣で横になって見ていたヴェトワネットが、メナリーの首を絞めた。
瞠目するメナリーに、ルネの背後から自分を覗く先妻セネラの顔が見えた。セネラは薄く笑っている。
きゃあああああああ……
私が……私が殺した……セネラ……
我儘なあんたが嫌いだった
異母姉妹と言っても
私は奴隷と変わらなかった
殺した殺した殺した
それでこんな復讐をしたのセネラ……
ああ、ああああああ……
ジグヴァンゼラに
何の恨みがあると言うの
ルネが笑った。
「自分の子は可愛いか」
ジグヴァンゼラは泣き叫びながら突き上げられ首を絞められた。息が出来ない。
目の前で母親の苦悶の表情に涙を溢しながら、ジグヴァンゼラはルネの笑い声に人間の悪意というものを初めて知った。
悪魔の所業だ……誰か、助けて……
思いが声にならない。
ルネの肩辺りから見ていたセネラが、恐ろしい顔に変貌してメナリーに牙を剥く。
あああ……
メナリーは気を失った。
ジグヴァンゼラが眼を開けた時、体位が変わっていた。メナリーを挟んでジグヴァンゼラが下になり、騎乗位のメナリーをルネが攻めている。さっきの自分と同じように母親がサンドイッチになっている。
メナリーはもはや正気を失って焦点の合わない眼をさ迷わせて涎を垂らしている。
ジグヴァンゼラは驚いて暴れたが、ルネとヴェトワネットの力にはかなわない。
ルネは鶏の骨付き股肉を噛りながら腰を動かしている。そのうちにメナリーがぐったり倒れ込み、ジグヴァンゼラも意識が飛んだ。
夕暮れの館にザカリー伯爵が帰って来た。伯爵はルネの訪問を喜んで客間で共に酒を酌み交わして食事を済ませ、遅い時間に夫婦の寝室に戻った。
ほろ酔いの伯爵の目に映ったものは、妻と息子の裸で絡み合っている疲れきった寝姿だった。
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