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第一章 復讐とカリギュラの恋
(31)今まで待ったのだ
しおりを挟むルネはゲイリアムズ夫妻を素早く縛り上げて絨毯の上に倒す。
夫人の目の前でヴェトワネットが子爵を口で立たせ、ルネが夫人を担ぎ上げて子爵に股がらせ、交わらせながらその後ろから夫人を蹂躙した。
最初は猿ぐつわの中で怒声や悲鳴をあげていた夫婦だったが、赤い媚薬が回ると次第に喘ぎ、快感の波にうち奮え何度も頂点に達した。
ゲイリアムズ夫人が気を失うと代わりにヴェトワネットが下になって子爵と交わり、子爵の後ろをルネが蹂躙した。それはパーティーが始まるまで続いた。
「私の母国フランスでは貴族間でこのように夫婦交換を楽しむことがままありまして、サンディ、あなたは素敵だ。あなたとは相性が良い。私はあなたに新たな快感を与え、新たな世界を教えてあなたを開発したい。これからも末永くお付き合いくだされ」
大嘘をついてフランス文化人を貶め、猿ぐつわを外して子爵に激しくキスした。
子爵は涙も渇き、既に抗う気力はない。身体中の不随筋がビクビク動き、目玉もさ迷う。
ルネはその全てを見越しての行いだ。
「可愛いサンディ。あなたに祝福を……」
子爵には、ルネの舌を噛む気力もなかった。
「さあ、パーティー会場に参りましょう」
王宮殿には負けるとしても、フランス文化のプライドにかけて華やかな会場づくりを意識していただけのことはある。燃え立つ紅を基調にピンクと檸檬色の幅広リボンを飾り立てた豊かなドレープの垂れ布を幾重にも重ね、ザカリーの白薔薇を基調にして色とりどりの薔薇の花を館中に二万本も飾り付けた。
広間に十五人用に準備した長いテーブル席があり、十三人で占める。ジグヴァンゼラが主格の席に就く。
生まれて初めて催す宴に、何をどうすればよいか分からず全てをリトワール任せにしていたが、挨拶だけは奮い立って挑む。
「このような辺境の館においでくださった皆さまのご厚情に、篤くお礼を申し上げます。私ジグヴァンゼラ・エバノス・ロクファーレン・ザカリーは、エバノス(伯爵)とは言え若輩者で王都のしきたりにも疎く、社交界の流行りも存じませぬ。ですが、これからは亡き父に代わり皆様の末席で共に王様にお仕えする者として、このジグヴァンゼラをご承認頂けますように。何卒、宜しくお願い致します」
ジグヴァンゼラの若い真っ直ぐに伸びる声は、飾ることなく率直に参加者の心に届く。これには本人が驚いた。簡単な語彙だったとはいえ思っていたことを淀みなく伝えることができた。気持ちが軽い。何でも話題にできそうに心が浮き立っている。
末席のルネの眉根が寄る。
それを見逃すリトワールではない。ジグヴァンゼラの朗々とした挨拶に希望を感じつつも、その希望の輝きに比例して、ルネに抱く鬱積した思いが恐怖に似てくる。
ジグヴァンゼラは敢えて視線をルネに絡ませないように心掛けていた。
会場入りの際に、ジグヴァンゼラはいきなり現れたルネに妙な息を吹き掛けられ驚いたが、それでもあからさまに無視し続けている。
直ぐに殺すのではない
チャンスが巡るのを待つ
今まで何年も待ったのだ
私が殺らなければ誰が殺るのだ
必ず、必ず成し遂げる
その思いはリトワールに宿っていた。
リトワールは、白い粉の吹き掛け行為を目撃していた。内心では『例の媚薬か』と驚き、苦々しく拳を握ったが、ただの栄養剤のようなものだと聞いていたがために、敢えて騒がずにいた。
いくら獣のような殺人者ルネでも公の場で毒薬を用いるなど愚かな真似はすまい。と、わかっていたからだ。
リトワールはしかしこっそりとルネを睨む。
直ぐに殺すのではなく捕縛する
チャンスが巡るのを待って
地下牢に閉じ込める
今まで何年も待ったのだから
少しの間待ってみせよう
確実に成し遂げるために
恐ろしく思っていたかっての捕食者に対して、今夜か、この数日間のいずれかの日が最後だとの思いがリトワールの目に現れた。
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