55 / 128
第二章 カリギュラ暗殺
(53)悪霊
しおりを挟む「旦那様っ、ジグヴァンゼラ様っ」
マロリーの悲鳴が聞こえた。
「お止めください、そこは危険です。旦那様」
サレが這いつくばって上がった時、屋上の柵の前で数人の使用人たちがジグヴァンゼラにしがみついて取り押さえていた。ジグヴァンゼラは身体を激しく揺すり、離れようともがく。
マロリーはジグヴァンゼラに「気をしっかり持ってください。旦那様は悪霊に唆されているんです」と懇願した。
ジグヴァンゼラが呟く。
「リトだ……離せ。リトワールだ。悪霊ではない。私はリトワールに話しがあるんだ。離せ」
「あれはリトワール様ではありません。あれはルネの化け物です。時にはルネに化け、時にはパブッチヨやセネラ様、時にはメナリー様に化けて、今はリトワール様に化けて、旦那様は騙されて唆されているのです」
「ええい、わからぬか。私はリトワールに聞きたいことがあるのだ」
ジグヴァンゼラの視線の先で優しげな面持ちのリトワールが振り向く。
『私に聞きたいことですか』
「そうだ。リト。お前はヘシャス・ジャンヌと床を共にできたか。お前はヘシャス・ジャンヌに跡継ぎを生ませることができたか。お前は領主になれたか……」
『ジグヴァンゼラ様……私の元に来てください。そうすればお答えします。私はずっとお待ちしています』
「行けば教えてくれるのだな、リト」
「悪霊退散っ」
サレが叫んだ。
「悪霊退散っ。お前はリトワール様ではないっ。お前の正体はリトワール様に化けた悪霊だ。旦那様をたぶらかすなっ」
サレの目にもリトワールの若き日の麗しい姿が見えた。空を背景に、光り輝くような姿が屋上の屋根を越えた宙に浮かんでいる。
「リトワール様……」
横から平手打ちがピシャリと飛ぶ。サレの頬をマロリーが打った。
「しっかりしてっ。あなたが祓わなければ誰にできると言うのっ」
「そうだが、いや、違うよマロリー。誰にでも祓える。誰にだって真理を愛する心があるはずだから」
「わかった」
マロリーはジグヴァンゼラの手の延びる方向を向いて叫んだ。
「悪霊ルネ。お前が死ねっ。お前のことは許さないっ」
その怒声に周りの使用人が一瞬怯んだ。途端にジグヴァンゼラの身体が自由になる。ジグヴァンゼラは長い足を柵に掛けた。
『ジギー、来て……此方に来て』
リトワールの声が甘くジグヴァンゼラの脳に響く。
残った足を使用人が掴まえて、マントごと動きを封じ、ジグヴァンゼラを引き戻す。
「行くよ、リト。必ず行く」
「行っちゃあいけない、旦那様。悪霊っ、お前の出る幕ではない」
サレは体制を整えた。リトワールの姿をした美しく耀く者に正面から対峙する。
「全てのものは天の神が裁く。悪、霊、退、散っ。全能の神のお名前にて、お前を神が裁く」
リトワールの顔が歪む。ジグヴァンゼラはあっと息を飲んだ。狡い悪霊は消えるまでリトワールの姿を保ち、切な気な顔をジグヴァンゼラに向けて手を伸ばし儚くきえた。
「リト。リトワール。リトッ」
ジグヴァンゼラは崩れ落ちた。
「あれが悪霊だと言うのか……よしや悪霊だとしても私は……」
ジグヴァンゼラの脳裏にリトワールの切なく甘い面影が語りかける。
『ジギー、来て……此方に来て』
リトワールが悪霊だとしても……
ふはははは……
悪霊だとしても何だ
ジグヴァンゼラ……
わはははは
天の父よ
ジグヴァンゼラをご覧になったか
かってあなたの愛した少年が
今やこのように老いさらばえて歪み果て
人間は全て枯れてゆく草なのだと
心底笑わせてくれるものだわ
野に二人の男がいた
一人は連れ去られ
一人は捨てられる
私は二人を連れてゆきたかったのだが
天の父よ
あなたは何故ジグヴァンゼラに
手を差し伸べようとするのか
あなたは人間の自由意思を尊重するお方だ
私の邪魔をしないでもらいたい
我々の明けの明星ルシファーを
造反者サタンと呼ぶのは勝手だが
我々もジグヴァンゼラの自由意思を
尊重して導くのだから勝手にさせてもらう
光の柱が立った。
恥ずかしくないのかベルエーロ
造反者サタンの支配欲は
地上に悪をもたらすだけだ
人間は我々より少し低いものとして造られた
その肉なる生き物を貶めて
問題ばかりを産み出させるのは
サタンが企てたことだ
お前はジグヴァンゼラを唆し
悪を行わせておいて
自分が彼よりも優位に立っていると
自惚れたいのか
お前がジグヴァンゼラなら
お前が肉なるものとして生まれていたら
かのイエスキリストのように
最後まで天の父を敬えたか
できぬからこその造反だったな
恥を知れ、ベルエーロ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる