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第二章 カリギュラ暗殺
(57)子猫
しおりを挟む眼が覚めた。小鳥の囀りと朝の光が爽やかな一日を始めている。
リトワールの夢を見ていた。
甘美な泥沼に溺れて痺れ、夢精した。
リトワール……現に見るリトワールは悪霊だ。死んだ魂ではない。
現実にそれを言えば、悪霊はリトワールの姿を借りることはなくなるだろう。
リトワール……夢の中のリトワールも
悪霊なのだろうか……
悪霊は夢を見せることもできると
サレは言うが……
私がこの人生を終えるまでの問題だ。誰にも残さず、私だけが抱き締めて、リトワールの面影は私と共に消える。
みにゅう……
子猫が鳴いて、ジグヴァンゼラの首からお腹に向かって歩く。子猫には幻の親猫の姿が見えていた。
親猫は子猫をリトワールの部屋に誘おうとする。子猫がベッドの端に向かう姿を見て、ジグヴァンゼラが止める。
「墜ちるぞ」
懐に入れた。
ガウンの紐をきつく締める。
ベッドから出たジグヴァンゼラの懐で、子猫が鳴く。
「腹が減ったか」
みにゅう……みにゅう……
子猫が懐でガウンを掻いてよじ登り、頭を見せた。何処かに行きたいらしく、小さな手を伸ばす。
みにゅう……みにゅう……
子猫は必死に母親を呼ぶ。
母親を求めて鳴く。
ジグヴァンゼラは子猫に引かれ、目の前に見えない糸でもあるのか、廊下に出た。
自殺の心配がなくなってから、ジグヴァンゼラの見張りはなくなった。
リトワールの部屋に向かう。
何があるのか……この子が行きたがるのリトワールの部屋じゃないか。
子猫はドアに向かって身体を伸ばし、引っ掻くように両手を動かす。
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