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第二章 カリギュラ暗殺
(76)性奴
しおりを挟む執事長シアノは、着替えの衣服を積んだままだったことを思い出して再び馭者台から降りた。歯の根が音を立て、指先が冷えて寒気が首まで這い登る、
月明かりの入り口を目指して階段に差し掛かったとき、ジグヴァンゼラが姿を表した。アントワーヌを抱き抱えている。
「だ、旦那様……」
アントワーヌの顔は腫れ上がって赤い。最早リトワールのイメージはない。ジグヴァンゼラは階段を軽やかに降りる。
執事長は目を瞠った。杖をついて歩いていた老人とは思えない。
「館に連れ帰る。馬車を出せ」
「う、馬はどうしますか」
ジグヴァンゼラの馬が木陰から現れた。
「成る程、では、我らは馬で帰ろう。お前はダレンを解放してくれ」
ジグヴァンゼラは馬の鞍を外して、シーツでくるんだままの裸のアントワーヌを馬に乗せ飛び乗った。年寄りには思えない敏捷さだ。
馬上のジグヴァンゼラは執事長に見送られて月影の下を遠ざかる。
執事長は恐る恐る寝室に入った。先ず、ベッドを確認する。ダレンの姿はない。
悪霊ルネが現れた。後ろから執事長を抱く。
「な、何を……」
すと、身をかわせばするりと抜ける幻の相手。執事長は悪霊に向き直った。それでも悪霊は微笑みながら執事長に一歩迫る。
「ルネ……様……私はダレンを探しています」
ルネは階段に目線を向けた。執事長はその目線を追って階段を見る。手摺に異様なものが映る。
小走りに近づいてダレンを確認した。斜めに入る月明かりに見える姿は、手首と肘を手摺に繋がれ、胴体も縄で手摺に繋がれているダレンだ。足首も縛られて、手と同じように手摺に繋がれていた。血玉の乾いた筋もある無数の鞭痕が痛々しい。
ダレンの身体からは精液が匂う。執事長は「ダレン」と呼んでみた。
「ああ、ううう」
縄の結び目を噛まされて猿轡されたダレンは、言葉にならない呻きを漏らす。長い髪が掛かった顔は頬が赤い。
ルネが後ろから執事長の肩に腕を回した。その腕で執事長の片手を動かし、ダレンの太ももに指先を付けた。
「ううう……」
ダレンの身体が捩れて男のそれが奮えた。目の前で射精する。執事長は飛び退いた。
ダレンはだらだらと流して手足を突っ張らせて奮え、気を失った。
執事長は慌ててダレンの猿轡を外して足縄を解く。意識のないダレンはだらりと足を垂らす。手首を解き、衣服が汚れるのも構わずに肩に担ぐようにして胴体を解いた。
そのままベッドに運んで膝で乗り、ダレンを寝かせた途端、ダレンの腕が執事長に絡まる。後ろから悪霊が執事長の頭を押した。ダレンの唇が執事長の口を塞ぎ、舌が侵入する。霊力で頭を押さえられて身体も沈む。霊力には抗えない。
ダレンは「旦那様……」と囁きながら執事長の身体を横たえて上に乗った。衣服を剥ぐ。悪霊の金縛りに掛かった執事長は目を見開いたままダレンの愛撫に叫んだ。
「ダレン、私だ。旦那様ではない。しっかりしろ、ダレン」
旦那様は一体この者に何をなさったのだ……
手摺に縛り付けて何を……
ダレンは執事長の萎びた息子を口に含む。執事長の腹の上に縄が蛇のように上り横たわる。ダレンは執事長の両手を後ろ手に縛った。
悪霊はジグヴァンゼラを追った。ジグヴァンゼラは白薔薇と時計草の群生する丘に来た。、ふと思い付いて馬上でアントワーヌの尻に一物を突っ込んだまま馬を歩かせる。アントワーヌの両手を後ろ手に回して押さえ込み、馬が一歩進む毎にアントワーヌの身体を深く突き上げる。
ジグヴァンゼラ
お前の性欲は
堕ちる処まできたか
面白い
お前は悪魔崇拝を行うのだ
ジグヴァンゼラは馬を小走りに動かした。
「あっ、あっ、ジギー」
悪霊ルネはルネの姿から黒い影になった。
「ふはははは……人間とは面白い生き物だ」
善良ぶった領主ジグヴァンゼラが
何をしているのか
領地の民が知ったら
わはははは……
「止めろ、ダレン。私は旦那様ではない。目を覚ませ」
「わかっています、シアノ様。あなたも私と同じようにして差し上げます」
「や、止めろ、止めてくれ」
ダレンは執事長の身体をひっくり返して精液で濡れたものを無理に突っ込んだ。
「ダ、ダレン。ううっ、うわあああ。ああ」
ダレンは執事長を突き上げて激しく攻めた。
な、何故、私がこのような目に……
良かれと思って
お夕食をお持ちしただけなのに……
何故……
枕に突っ伏した執事長の横に、アントワーヌの金貸しが横たわった。悪霊だ。
「何故だと……何故かな……」
金貸し悪霊は高笑いした。
この世には
理由のない人間は
いないんだよ
ただ、真理に気づいて
それ以上の理由を作らないように
生きる人間はいる
お前は忠実な執事だが
注意が足りなかったのだ
お前は最早性奴と成り果てて
悪魔崇拝に溺れる
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