99 / 128
第三章 純愛と天使と悪霊
(97)モーナス、愛している
しおりを挟むモーナスが目を覚ました。扉が開いて小さな影が家に入ってくる。
「ガレ、不浄だったのか」
「うん。ちゃんと手を洗って来たよ」
月明かりの差し込む部屋を、ガレが近づく。身体半分が影になる立ち位置で、ガレの左右色の違う瞳が光る。
「ガレ、腹は減ってないか。お父さんと一緒にパンを食うか」
「うん。嬉しい」
ガレの笑顔が弾けた。モーナスの方から優しい声を掛けられた記憶がない。驚きと共に、洞穴に作った祭壇にお祈りを捧げた祈りの効力だ、と喜ぶ。
モーナスは台所に進んでガレの頭をくしゃくしゃに撫でた。いつからか、口をきくのも少なくなっていたと気づく。
アデルが二人目を宿してからだ。自分に似ていない子供が生まれることを恐れて、悩んでいた。ガレはもしかしてメンデの子供ではないかと、アデルの貞操を疑い、兄貴を疑った。
しかし、エレネイラは間違いなく俺の子だ。ガレの片方の青い目も、俺と同じだ。もじゃもじゃの赤毛は親父と同じ。ガレも俺の子だ。憎いわけではない。寧ろ、その逆だ。可愛い息子だ。失いたくない可愛い息子。
モーナスは天井から吊るした篭から、食べ残しのパンを取り出した。それを二つに割いてガレに手渡す。
「祈るか。……天の神様。日々の糧を与えてくださることに感謝します。私と家族が、健康で、働けることにも感謝します。ガレを与えてくださったことに感謝します。とても良い息子です」
ガレの胸がドキンと奮えた。
「娘を与えてくださったことにも感謝します。元気に成長しています。心優しい妻を与えてくださったことにも感謝します」
白い寝間着姿のアデルが、両手を口に当てて突っ立っている。
「私の伴侶として申し分のない妻です。神様の愛と憐れみが、引き続き私たち家族に示されますように。感謝と祈願を捧げ、心から讃えます。アーメン」
「「アーメン」」
ガレの声にアデルも和した。
「アデル、起きたのか。お前もパンを食べるか」
立ち上がろうとするモーナスに駆け寄って、アデルが背中に抱きつく。
「有り難う、あなた」
「なんだ」
ガレも椅子から降りて父親に腕を回した。
「お父さん、大好きだよ」
途端に、モーナスの背に衝撃が走り目から涙が落ちた。片手をアデルの腕に添えて、片手でガレの頭を掻き抱く。暫く咽び、それから離した。
ガレもアデルも泣いていた。エレネイラだけが静かに寝ている。優しい時間はゆっくりと歩を進めた。
悪霊ベルエーロが静かに入って来た。
モーナス……なんと恵まれた男だ。
兄のメンデはお前の背の高さを羨み、父親のサレはお前の料理の腕前を認め、母親マロリーはお前の性質を喜び、甥っ子ネイトには優しいおじさんと慕われ、妻のアデルには深く愛されて、実子のガレには尊敬されている。
お前は何がほしいのだ。既にこの世の全てを手にしているのと同じではないのか。
やりがいのある仕事があり、愛する家族に囲まれて、健康で、幸せに暮らすこと、それがアイドの望みの全てではないのか。
私はお前が嫌いだ。
いや、愛しているよ、モーナス。
お前が悩んでいた間、どんなに可愛いと思ったことか。お前の耳に口をつけて疑いを吹き込んだのは
このベルエーロ様だ。
お前はどうする。私に従うか、モーナス。それとも、神に祈り続けるつもりか。
お前は私の持っていないものを
全て持っている。
モーナス、一介の悩み多き不完全なアイドであるお前が、私の持っていないものを持っている。
許せると思うか、モーナス。
ああ、可愛いモーナス。愛しているよ。わははは……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる