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第一章 復讐とカリギュラの恋
(50) 第二皇子がやって来た
しおりを挟む夕食前のアペリティフタイムも豪華な宴席として始まった。鹿肉の薄切りソテーにガルニチュールをのせたブルスケーレと香味野菜と鶏肉のパイ包み、フルーツ酵素のソースで食べる魚、マッシュポテトに兎肉の入った人形焼きとひき肉にアボカドを乗せたカナッペ、各種テリーヌが蓋の付いた鍋ごと出され、ソーセージと卵料理が並ぶ。
ゲイリアムズ夫妻が早々に帰って、残った五組の客は娼婦を入れて十人、アントローサ公爵の存在が明らかになってサレが朝から兵士までも使って準備した料理の数々だ。これにカブス鳥や赤羊のサラダとマルチョパルポーレのカットステーキやスープとデコレーションケーキを初めとするスイーツが並び、宮廷かと思うきらびやかさ。
アントローサ公爵が「お出でになりました。皆さん、オリバルート・ヨハネセン第二王子とヘシャス・ジャンヌ・ザカリー伯爵令嬢のご登場です」と声高に言う。
歓声が起きて場が華やぐ。居ずまいを正しながらも喜びが広がる。ジグヴァンゼラは久しく聞かなかったヘシャス・ジャンヌの名前に感電してグラスを落としかけた。
ヘシャス・ジャンヌ……姉様
生きておられたか……
とっくにルネに
殺されたものだとばかり……
いや、記憶の端からも消していた
プラチナの睫毛の
ヘシャス・ジャンヌ姉様……
ジグヴァンゼラの瞳を打つように微笑みと共に現れたヘシャス・ジャンヌは、オリバール・ルート子爵に手を導かれて現れた。金糸の織り込まれたベールを纏っているが、陶器とみまごう滑らかな白い肌、忍耐の五年間に更に伸びて床につくばかりのプラチナの豊かな髪は、どんな豪華なマントよりも美しく光輝く。ヘシャス・ジャンヌの登場は、聖女の神聖さを纏わせた輝かしい喜びの祭典となった。
一同が正式なカーテシーとボウ・アンド・スクレイプを行う。ジグヴァンゼラは深々と膝を曲げた。空気は栄光と尊厳に支配された。
オリバール・ルート子爵が
オリバルート・ヨハネセン第二王子……
昔、ヘシャス・ジャンヌを
婚約直前で断った相手は
確か第二王子の
オリバルート・ヨハネセン……
リトワールも衝撃を受けた。確かにオリバール・ルート子爵は存在する。
私は、招待状を出す前に
アントローサ公爵の
爵位を持つ属臣を調べ……
そうか
オリバール・ルート子爵は
アントローサ公爵の勧めで
参加することになって
遠路はるばる……
リトワールは奮えた。オリバール・ルート子爵はマークス・ボランズ伯爵、つまりアントローサ公爵と共に来たのだった。
パーティーの前から
アントローサ公爵は
この全てのことを画策して来たのか
なんと……
『表向きは我が主の嫁取りの御披露目パーティーとして、その実ヘシャス・ジャンヌ様の嫁ぎ先をご紹介願いたく、訳あって王都に出向くことが憚れますので、不躾なお願いの義を何卒……』
『此方からは私の代わりにオリバール・ルート子爵を寄越す。彼がヘシャス・ジャンヌ嬢を見聞するであろう。その意見を私が判断してからご紹介致すことにしよう』
私の拙き文を理解してくださって……
いや、それ以上の計画をもって……
手紙のやり取りを思い出して、相手の裏が読めなかった迂闊さを恥じると共にアントローサ公爵の気遣いに再び胸が熱くなり、活動力が漲る。
見捨てられていた訳ではなかった
調査してくれていたのだ
そして、救いの手立てをこのように
最後の詰めまで立てて……
リトワールの目の泥濘が拭われ始める。
「さて、お集まりの皆様」
アントローサ公爵が弁をふるう。
「この度はオリバルート・ヨハネセン第二王子の二度目の御成婚に向けて、ヘシャス・ジャンヌ・ロクファーレン・ザカリー侯爵令嬢を此処に新たな婚約者として選出致しましたことをお知らせします。正式な決定は王室会議を経なければなりませんが、再婚となるオリバルート・ヨハネセン第二王子の決定権によって間違いなきものと存じます。私も、ザカリー侯爵令嬢を第二王子妃に相応しいお人柄であると判断させて頂きました。今日のこの良き日を祝って、ご婚約の前祝いとしようではありませんか」
拍手が沸き起こる。
「なんと素晴らしい。幾千万の虹が天にかかるかと思えるほどだ」
「おめでとうございます殿下」
祝辞が飛び交う。
ジグヴァンゼラは涙を浮かべた。ヘシャス・ジャンヌと視線が絡み合う。
「さあ、今宵は楽しもう」
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