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第2章 イスパノスイザ アルフォンソ13世に乗って
(14)殆ど付き合いのない親戚
しおりを挟む「この女がいきなり発砲して……何がなんだか……私はそこらの物で殴り倒したのよ。ううっ」
「わかりました。もう、口を開かないで」
勇気を出して尋ねてみよう。
「あの、あなたはラルポア・ミジェール……」
「は……何故、僕の名前を」
「あなたはフランスにいる美術留学生の日本人にとって、ヨーロッパの大きな壁のような存在でした。ラルポア・ミジェール」
そうだ
ラルポア・ミジェール
十六才でフランス・アーバン協会の
アーバン・ラ・メールの公募展に入選
油彩の世界は裾野が広く奥が深い
特にフランスは世界中から
芸術家の集まるメッカだ
その中で天才が出現した
ラルポア・ミジェール
何故、絵筆を取らないのか
「あなたは……」
「日本人のイクタ・シンタです。私は故郷に錦を飾りたかった。こんな場面でまさかあなたに会えるとは……」
「日本人……素晴らしい。お会いできて嬉しい」
握手を求められたよ
人種差別しないんだ
ラルポア・ミジェールは
「何を握手してるんだ。おお、チャイニーズか。俺はカナンデラ・ザカリーだ」
握手……
俺の右手は今ラルポア・ミジェールと……
黒髪の探偵は
にこやかな顔で俺の左手を取る
強引な性格らしい
腕をクロスした状態になった
大きな笑顔のカナンデラ・ザカリー
ラルポアは苦笑しながら
軽く握手した手を離す
カナンデラ・ザカリーは
握手の手をぶんぶん振る
二人の個性は正反対だな
「よろしくな、チャイニーズ。君の国は青い絵皿がナイスだ」
「はは、俺は日本人だ。イクタ・シンタという。昔は絵をやっていたが、今はマァイアッテン未亡人の納屋暮らしだ」
「おお、フランスは今、ウキヨエ狂いだ。イクタ・シンタ・ウタマロ・ホクサイ。ウキヨエを描けば売れるさ。アルフォンソ・ミュシャと並ぶのはウキヨエだ。おっ、馬が来た」
「医者だ」
ハウンゼント・ザカリーの館周辺を、後から加わった村人と手分けして見回った。
何の異常もないとわかったからには手を広げてマイアッテン未亡人の通りも調べるべきだと話し合っているうちに、メリーネ・デナリーの家で殺人事件が起きたと知らせる者がいた。
銃声が2度も続き、くじ引きダンスは中途半端に終わった。広場から一番近い家が犯行現場だとは知らずに、村人たちはくじ引きダンスの興奮の中、暫くは何が起きたのか分からないでいた。
殺人事件があったと知って、村人たちは驚いた。くじ引きダンスを踊っているわけにはいかない。それで、黎明祭は明日に繰越そうとの打診を持って来たのだ。
「アンナベラ、死体は見ない方が良い。君の従姉が殺されるなんて、どうしてだかまだわからないけれど、ラナンタータは必ず探し出す。母と待っていてくれるね」
「私も行くわ。ドレスを着替えるから待って」
「アンナベラ、花嫁のドレスは新郎が脱がせる風習だよ。母も気分が優れないと言っているから、一緒に待っていてくれ」
ハグしてフレンチキスを交わして離れた。
「お義母様、ラナンタータをご存知ではありませんよね」
「ラナンと同じアルビノのラナンタータのことね。カナンデラが少しだけ話してくれたけど、どうしたの」
「行方不明なんです。もうずっと探しているんですけど……」
「まあ、それなら納屋を。先ずはフォレステ家の納屋を。ピグ川に添って行くのよ。あそこはもう使っていない古い納屋で、ラナンがあそこで……もしかしたら、フォレステ家の人々が亡くなった理由は……」
「何か思い当たることが」
「いいえ、何か繋がりがあるのかもしれないと思っただけ。それよりもあなたの従姉さんは何故……」
「私もわかりません。ほとんど付き合いがなかった親戚なのですが、こんなことになってどうしたら良いのか……実は、どこに連絡すれば良いのかも全く分からなくて父に電話したのですが……」
「お父様は何と」
「勝手に結婚してまだ娘のつもりかと……」
「いいわ。あなたはもう、うちの娘よ。アンナベーラ・ザカリー。いつかお父様も分かってくださるわ」
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