89 / 165
第5章 婚前交渉ヤバ過ぎる
(13)アントローサの娘
しおりを挟む目覚めたら天蓋が見えた。天蓋付きベッドのふかふかの枕で目をキョラキョラ動かす。飛び起きる。衣服が変わっている。着替えた覚えはない。
ラルポア……今、何時。此処は何処……
何故、知らないベッドで……
ばかでかいベッドからふかふかの絨毯に下りてスリッパを履く。広い部屋を見渡す。向こうのソファーに横たわっているのはラルポアだ。ブランケットがずれて青いガウンが見えた。
そっと近づいて横に座る。身体を斜めにする。とうとう横になって添い寝した。ラルポアの腕を枕にブランケットを被る。部屋は暑くもなく寒くもなく、ラルポアは自然に枕になった腕でラナンタータの肩を引き寄せる。寝息が聞こえる。ラナンタータも睡魔に襲われた。
お父さんはどうしているかな。
電話したらお父さんは
迎えに来てくれるはずだけどな。
ラルポアにワインを勧めたのは私だから
叱られちゃうかも……
ラルポアの手が動く。その手は自然にラナンタータの頬を滑り、首筋から肩に流れ落ち胸の形を準る。
ラナンタータはラルポアの腕を弾いて、ガバッと音を立てて跳ね起きた。ベッドに駆け込む。
信じられない。
私は妹なのに……
信じられない。
私のおっぱい小さいのに……
信じられない。
ラルポアはお兄ちゃんなのに……
信じられない。
何もかも信じられない……
触られた胸に手の感触が残って熱い。ラナンタータは自分だけが信じられる存在だと確信した後で思い直した。そう言えば自分自身も信じられないことをしたのだった。ずっと家で育って、社会や人間や常識を知らなかった頃、学園に通いはじめて暫くして、ジョスリンが大好きになってキスしたいと思ったことがあった。
ラルポアに抱きついて
ドキドキしながらキスを迫ったんだよね
ラルポアなら
ちゃんと教えてくれると思ったけれど
大人のキスは
好きな人とするのだと断られたっけ
ラルポアには他に好きな人がいて
私は妹だから出来ないことなのだ
わからなかった
血の繋がりのない妹って
厄介なのかもしれない
まあ、私もラルポアを
お兄ちゃん扱いしてないんだっけ
ラナンタータは知らないことだが、ジョスリンはラルポアをベッドに誘い、香水を一瓶振りかけたシーツを被って騎乗位から始めた。濃厚な花園の香りの中で上になったり下になったり転がって、ラルポアはジョスリンとの関係を暫く続けた。
『なんだかやっぱりアルビノちゃんに悪いわね』
其れが関係を終わらせる言葉だったが、ジョスリンの笑顔はいつでも艶やかだった。
遊びにされた……
僕は遊び相手にされたんだ。
しかし
ラナンタータとジョスリンのキスは
阻止することができた
相手はマフィアの女ボスだ
アントローサ総監の娘に相応しくない
立場を守るのは重要だ
ラルポアは目が覚めた。つと辺りを見渡して起き上がる。ラナンタータはまだベッドにいる。着替えが先か起こすのが先か取り敢えず歩き出す。
車が二台も乗れるようなバカでかいベッドの真ん中にラナンタータはシーツを頭から被ってタヌキ寝入りを決めている。そのベッドに片膝を乗せてラナンタータのシーツを捲った。
「ラナンタータ、朝だよ」
ふん、ラルポアったら
優しく起こしても許さないから
私の方が先に起きたんだからね
「ラナンタータ、僕は着替えるよ」
ふん、私は着替えに時間はかからない
「ラナンタータ、シャンタンとカナンデラが気にならない」
「起きるっ。起きてたもん」
ラナンタータはベッドから飛び出してラルポアを振り返った。
「私の服は何処」
言ってからラナンタータは「あ」と胸を隠す。
「大丈夫。僕は何も見ていないよ、ラナンタータ。目を瞑って着替えさせたんだ。妹とは言っても、ラナンタータも一人前の女性だからね」
「おっぱい触った」
「触ってないよ」
「触った」
「ラナンタータ。僕は着替えるから」
「私も。直ぐにカナンデラを襲撃しよう」
「襲撃……」
ラルポアはラナンタータと喋るのを諦めた。
夕べ、アントローサはガラシュリッヒ・シュロスに来た。ラナンタータは酔っ払って、此の部屋、前会長の部屋で寝かされていた。事件の呼び出しがシャンタンを通してアントローサに伝えられ、アントローサは娘を連れ帰るのを諦めざるを得なかった。
此れでシャンタン・ガラシュリッヒとの繋がりが噂されることになると、アントローサは予感した。パパキノシタの時と似ている。裏の繋がりなどはない。バカ娘ラナンタータが裏社会と勝手に繋がってしまう。アントローサは真っ当に任務遂行しているだけなのに。
カナンデラは酒臭い息をシャンタンの耳元に吹き掛けて結婚を迫っていた。
「男同士でも結婚できる国にしようぜ。誰かが先にしてくれるのを待つのではなく、俺たちがやって見せようぜ、シャンタン」
ガウンを脱がせてパジャマの上から腰を合わせる。カナンデラはもう何度もシャンタンを昇天させて、シャンタンに抵抗する気力はない。
「あ……あ……世界を変えるって……」
そもそも夕べラナンタータが言ったことが心を開いたのか、シャンタンはなすがままにされて、もう無理だと思っても、シャンタンの其れはカナンデラに忠実に反応する。
「シャンタン。お前がこの地域のゴッドファーザーだからって俺と結婚できないのなら、マフィアなんて止めちまえ」
「アントローサの娘の考えなんだね。あ、あ、いく……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる